ミルボンと大阪公立大学(大阪公大)は10月23日、ミルボンが育毛成分の探索のため、ヒトiPS細胞を活用して毛髪関連遺伝子の発現上昇を指標とした育毛研究を行って効果的な有効成分を見出したこと、また両者の共同研究部門である薬物生理動態共同研究部門が、その有効成分が実際にヒト毛包組織にて毛髪の伸長を促進させることを確認したと発表した。
同成果は、ミルボン、ミルボンと大阪公大の共同研究部門である薬物生理動態共同研究部門の小澤俊幸特任教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、9月4~7日にスペイン・バルセロナで開催された「第33回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)バルセロナ大会2023」にて発表された。
加齢やストレスによる抜け毛などの影響を抑えることを目的とした育毛研究が各地で行われている。毛髪は、毛根部において髪のもととなる「毛母細胞」が分裂・増殖することで徐々に伸長することから、これまで毛母細胞を活性化させる、もしくは毛母細胞へ栄養を届けるための血流を改善する、などの着眼で育毛研究は行われてきたという。
一方で加齢による変化として、毛母細胞自体が生まれにくくなり、抜け毛や細毛化が進行することも報告されている。毛母細胞は「毛包幹細胞」(毛包部の中ほどに存在している幹細胞の一種)が分化することで生まれることが知られており、毛包幹細胞から毛母細胞への分化を促進する成分を発見できれば、これまでとは異なる新たなメカニズムでの育毛効果が期待できると考えられてきた。
しかし、毛包幹細胞は取り扱いが難しく、そのものを用いた育毛研究は困難なことが課題となっていた。そこで研究チームは今回、毛包幹細胞と同じく幹細胞の一種であるヒトiPS細胞を活用し、毛髪形成に関する遺伝子の発現量を指標とした育毛成分の探索に挑戦することにしたとする。
具体的には毛包幹細胞から毛母細胞への分化促進効果が期待できる成分を選定することを目的に、特定の刺激により遺伝子が発現し、分化してさまざまな細胞になりうるヒトiPS細胞に複数の植物エキスがそれぞれ添加され、その後の遺伝子の発現量が調べられた。この結果、毛髪形成に関する遺伝子「KRT31」の発現量を上昇させる2種の植物エキス(「トウキ根エキス」と「モウソウチクたけのこ皮エキス」)を選定することに成功したという。
また、それらのエキスの実際の育毛効果を確認することを目的に、手術後の余剰頭皮から単離・器官培養された毛根部の組織を用いた検証を行ったところ、両エキスともに毛髪を伸長させることが判明し、研究チームではヒトiPS細胞を活用した育毛成分選定手法の信頼性が確認されたとしている。
さらに、両エキスを配合した頭皮用美容液を毎日使用しての頭皮ケアが行われたところ、細毛の改善や、抜け毛の減少効果が確認できたとするほか、分け目が目立たなくなった実効例や生え際の産毛の増加が見られた実効例も確認されたとしている。
なお、研究チームは今後も育毛作用メカニズムのさらなる解明、および高機能頭皮ケア製品の開発を目指し、研究を進めていくとしている。