パナソニック ホールディングス(HD)は5月18日、事業戦略発表会にて、電気自動車(EV)向けの車載電池事業に投資を集中する方針を示した。代表取締役社長 CEOの楠見雄規氏は、「今後10年間、グループ全体のCO2削減貢献量の6割を占める車載電池へ重点的に投資を行う。競争力強化に徹するステージから成長ステージへギアを上げていく」と、説明した。
モビリティ電動化に対する需要の高まりにより、EV市場はグローバルで拡大している。特に北米のEV市場は、2021年から2030年にかけて年平均で35%の高成長を続けると同社は見込んでいる。また、米国政府は国内でのEVサプライチェーンの構築を国策として進めている。
そこで同社は、2030年度までに電池の生産能力を22年度比で約4倍となる200GWh(ギガワット時)に高める目標を打ち出した。その目標の達成に向けて、同社は2024年度までの3年間で戦略投資6000億円の大半を車載電池事業に投じる。
重点的に生産を増やすのは“円筒形"のリチウムイオン電池だ。急速充電時の冷却に適した形状で、高いエネルギー密度と安全性が特徴。なにより低コストで生産できるのが魅力的な点だという。「世界で初めてコバルトの含有量5%以下を実現しており、技術的にはゼロも見えている」と、楠見氏は同社の電池がレアメタルレスであることを強調した。
今後は、主力の「2170」と呼ばれるタイプの円筒形リチウムイオン電池を現在建設中のカンザス州の新工場で量産し、2030年までに新型の「4680」を北米新拠点(場所は未定)で大規模展開していく。
また開発体制を強化するため、2024年には大阪・住之江に生産技術開発拠点を、2025年には大阪府・に研究開発拠点を新設し、次世代電池とその材料の源流開発を加速する。
パナソニックHDは、2050年までに現在の「世界のCO2総排出量の約1%」にあたる3億トン以上の削減を目標に掲げており、2030年度までに「全事業会社のCO2排出実質ゼロ」と「9300万トンのCO2削減」を実現するというマイルストーンを策定している。グループ全体のCO2削減貢献量の6割を占める車載電池へ重点投資することで、長期環境ビジョンの達成につなげていきたい考えだ。
また車載電池事業に加えて、冷媒制御技術やIoT遠隔監視技術などの強みを持つ空質空調事業や、2021年に買収を完了した米ブルーヨンダーが手掛けるサプライチェーンマネジメント(SCM)ソフトウェア事業への投資も加速する。
「私どもの使命達成を阻む最大の課題は、地球の環境問題だ。われわれの子孫が、幸せを感じるどころか、地球上で暮らすことができないような壊滅的な状況は絶対に避けなければいけない。目指す姿の解像度を上げて、使命達成に向け変革を加速させていく」(楠見氏)