クラウド型ドローン測量サービス「くみき」などを提供するスカイマティクスは1月18日、都内で記者説明会を開き、建設DX(デジタルトランスフォーメーション)に関するアンケートの調査結果を発表した。

アンケート調査は昨年11月に全国の建設業の企業に勤務する1039人を対象に実施。調査の結果、建設ICTツールの導入状況、成果、普及に向けた課題などが明らかになったという。

スカイマティクス 代表取締役社長の渡邉善太郎氏は「あらゆるトピックで日本は遅れており、参入障壁が高い。建設DXは想像しづらく、課題を把握できてないという声もあるが、最も取り組みやすい現場の領域からスタートすべきであり、中小企業ほどICTツールを導入して変革することが望ましい」と述べた。

  • スカイマティクス 代表取締役社長の渡邉善太郎氏

    スカイマティクス 代表取締役社長の渡邉善太郎氏

まず「あなたの勤務先で導入している建設ICTツールをすべて選んでください」の質問に対して、導入率が高い建設ICTツールは、全体で1位が「3D CAD、3次元データ作成・点群処理ソフト」で40.0%、次いで「ドローン」が38.4%、3位が「CAD データのクラウド共有」で25.0%となった。

この結果から、ドローンで取得した地形データを3D CADなどを用いてクラウド共有するケースが多いと想定されるという。

企業規模で比較すると、小規模企業は全ツールの導入率が低く、例えば「3D CAD、3次元データ作成・点群処理ソフト」の導入率は、従業員300人以上の大規模企業は54.9%、従業員1人~19人の小規模企業は16.4%で、導入率は大規模企業の3分の1未満。小規模企業で建設ICTツールの導入率が低いことが、生産性を向上させる上でネックになっていると推測している。

  • 導入している建設ICTツールのグラフ

    導入している建設ICTツールのグラフ

また「あなたの勤務先で、生産性向上に寄与したと考える建設ICTツールを寄与度の大きいものから順番に5つまで選んでください」と尋ねたところ、これまでに導入した建設ICTツールのうち、生産性向上の寄与度が最も大きいツールは「ドローン」が23.2 %、続いて「3D CAD、3次元データ作成・点群処理ソフト」が20.9 %となった。

そのため、ドローンで取得した地形データを3D CADなどで活用することで、生産性を向上させたケースが多いと想定されている。

  • 最も生産性向上に寄与した建設ICTツールのグラフ

    最も生産性向上に寄与した建設ICTツールのグラフ

さらに「あなたの勤務先で建設ICTツールを活用してどのような成果が生まれましたか。あてはまるものをすべて選んでください。(複数回答)」を聞いたところ、最も多く挙げられたのは「工数が減った」が41.2%。2番目は「情報が共有されるようになった」で33.2%、3番目は「コスト削減になった」が26.1%、4番目は「安全性が向上した」で25.8%となった。

このような結果から、工数やコストといった費用に関する成果だけでなく、情報共有や安全性向上など費用で表しにくい成果も認識されていることが示されたという。

  • 建設ICTツール導入の成果

    建設ICTツール導入の成果

加えて「あなたは建設業界がもっと建設ICTツールを導入して生産性を高めるためには、業界をあげてどのような取り組みが必要だと思いますか。(複数回答)」との質問対して、最も多い回答は「建設ICTツールを現場で使いこなせるようになるまでサポートする」が37.2%、次いで「建設ICTツールの導入によって生産性を高めた事例を業界で共有する」が34.7%、「建設 ICTツール導入に対して補助金を提供する」が29.8%、「実際に評価の高い建設ICTツールの情報を共有する」29.4 %と続いた。

特に小規模企業では、すべての社員のICTスキルが高いとは限らないほか、ICTツール導入を支援する情報システム部署や担当者がいないこともあるため、建設ICTツールを現場で使いこなせるまでサポートすることが求められていると指摘している。

  • 建設ICTツール普及のために必要な業界の取り組み

    建設ICTツール普及のために必要な業界の取り組み

そして「国土交通省は2023年度から小規模を除くすべての公共事業にBIM/CIM(Building/Construction Information Modeling, Management)を原則適用しますが、あなたの勤務先では2023年度からBIM/CIMに対応できると思いますか。(単一回答)」との質問には、「2023年度から対応できると思う」が全体で16.2%、1人~19人の企業は3.9 %、20人~299人の企業は10.9%、300人以上の企業は30.1%となり、特に小規模企業で BIM/CIM 対応が遅れていることが判明している。

  • BIM/CIMへの対応

    BIM/CIMへの対応

調査結果を受け、渡邉氏は「建設ICTツールを導入支援する社内体制が整備されておらず、限られた人材しか使えないことに加え、コスト、使いこなせるかも不安であり、ICTに詳しい人材の不足もある。そのため、当社としては、当社のツールが使いづらいと思わせないようにしていく。また、満足するまでサポートすることが重要だが、当社の特異な領域でもあるため、これまでの事例をナレッジ化して共有できればと考えている」と力を込めていた。