DJI JAPANは6月14日、同社が展開する産業用ドローンの体験会をメディア向けに開催した。埼玉県春日部市にある「春日部みどりのPARK(旧富多小学校跡地)」にて、2種類の産業用ドローンの飛行実験を行い、それぞれが持つ機能を紹介した。
最初に飛ばしたのは、保護等級IP55性能を持ちー20℃~50℃の環境で動作できる次世代の産業用ドローン「MATRICE 30(M30) シリーズ」。同ドローンの展開時のサイズ(プロペラは含まない)は、470×585×215ミリメートル(長さ×幅×高さ)。その小型な機体からは想像できない機能がある。
具体的には、広角カメラ、ズームカメラ、サーマルカメラ、レーザー距離計を搭載しており、これらを駆使してさまざまななデータを取得する。
体験会のデモでは、M30シリーズのドローンを使って、体育館の天井に設置されてあるバスケットゴールの点検を行った。
まず、ズームカメラの機能を披露。このズームカメラは、5~16倍の光学ズームができ、最大200倍のハイブリッドズームが可能。さらに静止画の解析度は8K、動画でも4Kなのでかなり高解像度だ。人手では難しいバスケットゴール細部の確認がドローンで実現できた。
さらに、対角視野84度を誇る広角カメラで周りを見渡したり、サーマルカメラを活用して設備や周りの状況に異常がないかを調べた。
同ドローンは最大41分間連続で飛行することができ、15メートル毎秒の風圧に耐えられる。運用限界高度は7000メートルで最大23メートル毎秒の飛行速度を出すことができる。
同社は次に、さらなる性能を持つという「MATRICE 300 RTK(M300 RTK)」を公開した。同ドローンは点検だけでなく、計測や測量にも活用される。体験会では、旧富多小学校跡地の周辺を空撮し3Dモデルを作成するといったデモが行われた。
M300 RTKは、最大55分間の連続飛行が可能で、最先端のAI(人工知能)や状態管理システムが搭載されている。例えば、AIスポット確認機能では、定期点検を自動化し正確なデータを収集する。そして搭載AIが対象を認識し、次回の自動化された点検中にその対象を識別するので、ずれのないフレームを確保するという。
M30シリーズとの最大の違いは、マルチペイロード設計に対応している点だ。M300 RTKはミッションの要件に応じて構成を調整することが可能。さまざまな種類のカメラを装着することができ、最大3つのペイロードを同時に装着できる。今回のデモは、リアルタイムに3Dデータを取得できるという航空測量用のペイロード「ZENMUSE L1(L1)」を装着して実施された。
まずL1を装着したM300 RTKを、飛行ルートの始点まで操縦。その後、AIにより飛行ルートを自律飛行し、周辺の3Dデータを集めた。出発点まで操縦士が操作することなく自動で戻っていた。
L1は一度の飛行で2平方キロメートルをカバーするという。さらに、1秒間に24万もの点を打ってリアルタイムに確認できる「点群ライブビュー機能」により、操縦しながら3Dデータが確認できる。
DJIの主な事業拠点は、米国、ヨーロッパ、アジアなどの海外含め17カ所あり、日本法人のDJI JAPANは200名の従業員を抱えている。国内におけるDJIの産業用ドローンのユーザーは全体の65%を占めている。
中でも映像メディア広告の利用が38%と大多数を占めるが、次いで、土木・建設(19%)、インフラ点検・保守(12%)、測量(9%)、事故・災害対策(6%)、農業・水産(5%)と、産業や農業の分野でも活用されている。
同社は近年、慢性的な人手不足や新型コロナウイルス感染症の影響による非接触需要に対応するため、産業用ドローンの新製品を次々と発表している。今回デモで紹介された2機種はどちらも2020年以降に発売された製品だ。
DJI JAPAN 代表取締役の呉韜(ゴ・トウ)氏は「現場の人手不足という日本の社会課題のみならず、各地域で直面している課題に合わせ一つ一つの現場のニーズを深堀りしていく。それぞれに適応したドローンを使ったツールを活用しながら、最終的に、建設現場に対して安全な運用支援を提供していきたい」と展望を示した。
性能の進化を止めないDJIの産業用ドローン。今後どのような新製品が出てくるのか楽しみだ。