SOMPOホールディングスの中枢を担う損害保険ジャパン(以下、損保ジャパン)。働き方改革に伴い、築45年となる東京・新宿の本社ビルリニューアル計画を2018年頃より進めてきたが、途中でコロナ禍へ突入し、オフィスの在り方を大きく見直すこととなった。ハイブリッドワークが普及しつつある昨今の働き方に適したオフィスのかたちとは。

5月26日に開催されたTECH+セミナー「オフィスのあり方を再考するDay 2022 May. オフィスが向かう未来を再定義する」で、損保ジャパン 人事部 不動産担当部長 兼 SOMPOコーポレートサービス 取締役常務執行役員 三浦史野氏が、現在も試行錯誤中であるというオフィス改革の取り組みについて紹介した。

オフィス改革は食堂の一角からスモールスタート

損保ジャパンのオフィス改革は、働き方改革の一環としてスタートしたのが特徴的だ。2018年頃よりさまざまな働き方改革の施策を実施してきたが、三浦氏は「それらに適したオフィスになっていたかというと、そうではない」と当初のオフィスの状況について振り返る。そこで、まずは本社ビルの食堂の一角を改装し、新しい働き方にあったオフィスの在り方について検討することにした。

「元々食堂に設置されていた一部の什器を撤去し、仕事も食事も可能なスペースを設けました。Wi-Fiも設置して、まずはオープンスペースで働くということを体感してもらうところから始めたのです。夕方にはお酒を提供し、サッカーワールドカップを観戦したり、セミナーを実施したりもしました」(三浦氏)

こうした取り組みが社内で好評だったため、続いて本社内の空きスペースに最新什器を持ち込んでショールームを構築。テーブル上のディスプレイにメモを書き込めたり、着圧センサー付きのクッションによって混雑状況をWebで把握できたりする仕組みを導入することで、総務担当部署以外の従業員にも、「こんな什器があるんだ」「こんな働き方ができそう」と知ってもらえる場を作ったという。

結果として、社内で新しい働き方を実践しようという機運が高まり、全社的に本社ビルをリニューアルする計画へと拡大していった。

各部門から集結したメンバーによる本社ビルリニューアルプロジェクト

本社ビルリニューアルプロジェクトでは、チラシを配布してプロジェクトメンバーを全社的に募集。部門を超えて15名の応募があったという。プロジェクトメンバーは議論を重ねながら、本社ビルの問題点を洗い出し、理想の働き方を踏まえたゴールを定め、コンセプトをまとめていった。

そして決まったリニューアルプロジェクト名は「WISH」。Workspace、 Innovation、 Selective、 Healthyの頭文字を取ったものだ。

「S(Selective)」を担うチームは、IT企画部門のフロア半分のリノベーションに取り組んだ。具体的には、チーム内でワークショップを行って理想の働き方について議論し、「こういう機能が欲しい」という要素をなるべく詰め込み、実際に試して検証できる空間を設置した。三浦氏は「360度カメラやアンケートで社内の反応を見たのですが、『オフィスが変わってから笑顔が増えました』という声をもらったのが一番印象的でした」と評価する。

「I(Innovation)」チームは、本社ビル内の古い喫茶店を「SOMPO Park Lounge」と名付け、イノベーションが起こる場所への改革を進めた。社員同士だけでなく、社内と社外が交わる場所を目指し、Wi-Fiやイベント用スクリーンなどを設置した。

「H(Healthy)」チームは、一部だけリニューアルしていた食堂の全面的な改修を担当。健康を意識した食事空間を構築した。食事の時間以外は、打ち合わせスペースとしても利用できるようになっている。

しかしながら、残念なことにこれらのスペースが完成したのは2020年3月。新型コロナウイルス感染症の影響を最も大きく受けた時期だった。