ASMLは、中国に14のオフィス、11のロジスティクスセンター、2つの研究開発拠点、トレーニングセンター、およびメンテナンスハブを有し、合計1400人ほどを雇用しているが、上海をはじめとした各地の都市封鎖の解除を受け、中国での販売およびサービスの強化に向け、さらに200人以上の新規従業員を採用する予定だと、中国国営メディアShanghai Media Groupの英語金融ニュースサイトであるYicai Globalが報じている

ASMLの中国での2021年の売上高は27億ユーロ(1ユーロ130円換算で約3500億円)であったが、2022年は多数の半導体工場の建設・立ち上げが期待されることから、30億ユーロを超す売り上げになると見られている。

米中貿易紛争のはざまでしたたかに事業を強化する海外勢

米国のトランプ前政権から続く米中貿易摩擦の最中において、ASMLは先般、米国商務省の要請で米コネチカット州の露光装置部材製造工場に2億ドル投資を行うと発表したばかりだが、一方で今回のような中国にも投資するしたたかさを見せている。

TSMCも同様で、米国政府の要請で米国アリゾナ州に先端半導体ファブを建設中だが、中国南京のFab 16でも、車載半導体向け製造ラインを増設中であるほか、Samsungも、米国政府の要請で米国テキサス州に最先端半導体ファブ建設を決めたが、中国西安のNAND第2工場の拡張も進めている。米国政府に忖度するだけで中国を避けるビジネス展開は、世界市場の分断を助長し、シェア低下やそれに伴う業績の悪化、果てはコストアップにつながりかねず、多くの欧米企業が米中貿易摩擦のはざまで、したたかなビジネス展開を進めている。米国商務省は中国への輸出規制をさらに強化する方向で検討している模様だが、こうした背景含めたさまざまな事情から実行できずにいるようである。