富士通と理化学研究所(理研)は、創薬プロセスにおける新領域の開拓と開発期間や費用の削減を目指し、創薬分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)加速に向け、富岳を活用した次世代IT創薬技術の共同研究を5月17日より開始した。

昨今、新型コロナウイルス感染症など未知の病気に対するワクチンや新薬開発では、薬効が高く副作用が少ない中分子薬や高分子薬の開発が強化されている中、その創薬プロセスではIT活用による効率化が求められている。

両者は今回の研究で、スーパーコンピュータ「富岳」をはじめ、両者の創薬分野における最先端のシミュレーションおよびコンピューティング・AI技術を融合させ、標的タンパク質と抗体などの複合体解析や分子の大域的な構造変化を高速かつ高精度に予測する次世代IT創薬技術を開発するとしている。

同共同研究で、富士通は、同社のAI技術 「DeepTwin(ディープツイン)」を活用し、タンパク質データの定量的な特徴を教師なしで獲得する技術や、富岳上で分子動力学シミュレーションとAIを統合的に効率よく動作させる高速化技術の開発を行うという。

一方の理研は、大規模な構造変化を高精度かつ少ない計算量で再現する新しい創薬シミュレーション技術や、多様な構造を推定するためのシミュレーションにAIと実験を組み合わせた融合技術の開発を行うとした。

両者は、同共同研究で開発した次世代IT創薬技術により、中分子薬や高分子薬を視野に入れた新たなIT創薬プロセスを2026年度末までに構築し、広く製薬企業などに普及させることで、創薬分野におけるDXの実現を目指すという。

富士通によると、同共同研究は2022年5月17日から2025年3月31日までの計画としており、2025年4月以降も継続を予定しているとのことだ。