米国Delphixの日本法人であるDelphix Softwareは4月20日、日本市場における事業戦略に関する説明会を開催した。同社は、データベース仮想化を行う「Delphix Continuous Data」とデータのマスキングを行う「Delphix Continuous Compliance」から構成されるデータプラットフォーム「Delphix DevOps Data Platform」を提供している。

2023年度は従業員を前年度の3倍に

Delphix Software カントリー・マネージャーのロバート・スチーブンソン氏は、2023年度の国内戦略の柱として、「日本を独立リージョンとして設定する」「毎年グローバルの成長率を超える」「年220%の成長を目指す」の3点を紹介した。

  • Delphix Software カントリー・マネージャー ロバート・スチーブンソン氏

具体的な施策としては、「従業員を前年度の3倍に増強」「マーケティング投資を2.5倍に増強」「パートナー支援の拡充と新規パートナーの獲得」「金融、通信、インフラのエンタープライズに集中」に取り組む。

同社の製品はグローバルの国内のいずれにおいても、証券・銀行・生命保険といった金融業で導入が進んでいるという。スチーブンソン氏は、昨年末に発表した国内のリファレンス・ユーザーとして、関西電力を紹介した。

DevOps、アジャイル、CI/CDによるDXの実現を支援

続いて、スチーブンソン氏は同社がフォーカスしているDevOps とテストデータ管理市場におけるソフトウェア開発のスピードと品質向上の重要性について説明した。同氏は「Amazon Web Services(AWS)は200を超えるサービスを提供しているが、2020年は2757回のリリースを実施した」と、AWSの開発の速さを例に挙げ、同社のスピードに追随するには、「ウォーターフォール開発・運用業務委託からの脱却」と「DevOps、アジャイル、CI/CDによるDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現」が必要だと訴えた。

スチーブンソン氏はDevOpsの現状として、同社の調査から、72%の企業がメインフレームやオープン系のシステムを採用しており、そのうちクラウド移行を考えている企業は30%にとどまっていることが明らかになっていることを紹介した。

こうした現状に対し、「Delphix Continuous Data」の導入により、本番データを仮想化してテスト・スピードを上げること、データを自動でマスキングしてコンプラインスを確保することが可能になると、スチーブンソン氏は説明した。

「共通のデータ仮想基盤を導入することで、一元管理が可能になり、開発全体のスピードアップ、品質改善、セキュリティコンプライアンスの担保も実現される。Delphix Continuous Dataは仮想化以外に、自動マスキングも行うので人手がいらなくなる。これにより、ゼロトラストの開発モデルを構築できる」(スチーブンソン氏)

  • 「Delphix Continuous Data」が実現するアプリケーション開発のゼロトラス化

調査からわかった日本企業の開発プロセスの大幅な遅れ

同日に発表された「アプリケーション開発基盤とテストデータの管理・運用」に関する調査結果については、Delphix Software マーケティング&市場開拓ディレクターの若色亨昌氏が説明した。スチーブンソン氏が例に挙げた調査結果も同調査によってわかったものだ。

  • Delphix Software マーケティング&市場開拓ディレクター 若色亨昌氏

同調査は、従業員1,000人以上のエンドユーザー企業の技術・システム担当者を対象に実施したもので、回答者の67%は年商規模1000億円以上、52%は従業員規模:5000人以上となっている。

若色氏は、同調査の結果から、注目すべき結果として、アジャイルやCI/CDの協働開発手法に「取り組んでいる」または「取り組む」と回答した企業は40%にすぎないことを紹介した。昨今、DXの推進においては、スピードが求められており、それは開発にも言えることだ。にもかかわらず、アジャイルやCI/CDによってアプリケーションの開発期間を短縮したいと考えている日本企業は過半数を超えていないのが実情だ。

続いて、若色氏はアプリケーションの開発期間短縮に寄与するテストに関する調査結果も紹介した。開発テストにおいて 、ダミーデータを作成すると答えた人は59人、本番データを利用していると 回答した人52人だったという。

テストデータのマスキングについては、自動化 していると回答した人は22人、手作業でマスキングをしていると回答した人が25 人、マスキングしていない本番データを利用と 回答 した人が11人だった。

まず、本番データを使ってテストを行っている場合、何らかのトラブルが発生して、外部に漏洩する恐れがある。加えて、手作業でマスキングを行っている場合も、漏れが生じる可能性もあり、セキュリティのリスクが高まるほか、効率が下がるという問題も生じる。

そして、テストデータの準備期間については、50%が1日~1週間以上の時間を要していると回答した。

こうした結果から、若色氏は、現代のビジネスを支えているコア・コンピテンシーがアプリケーション開発であるにもかかわらず、日本企業のプロセスは大幅に遅れており、改善の余地があると指摘している。

DXという観点からも、企業において、ソフトウェア開発のプロセスの見直しは必須となりつつある。