世界中の企業がこぞって、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めているが、日本企業は海外の企業に比べて出遅れていると言われている。しかし、DXを成功に導けるかどうかは、企業の存続にも影響を及ぼすことになる。

今回、データ仮想化プラットフォームを提供しているDelphixの日本カントリー・マネージャーに就任したロバート・スチーブンソン氏に、どうすれば日本企業が迅速にソフトウェアを開発し、DXを進めていくことができるかについて聞いた。

  • Delphix 日本カントリー・マネージャー ロバート・スチーブンソン氏

    Delphix 日本カントリー・マネージャー ロバート・スチーブンソン氏

DevOpsを導入している企業は業績が伸びている

スチーブンソン氏は、「私は15年ほど日本で働いてきたが、当初に比べ、日本のリーディングインダストリーが後れを取っていると感じている。15年前、NTTドコモはiモードが絶好調であり、NECや富士通の携帯端末は世界で大きなシェアをとっていたが、今は違う」と語る。

そして、「Amazon、Apple、Googleといった世界のテクノロジーリーダーは恐ろしいほどのスピードでソフトウェアをリリースしている。また、グローバルのテクノロジーリーダーは資産をソフトウェアに切り替えて、ビジネスをソフトウェアベースにシフトしているが、日本企業はこれができていない」と、スチーブンソン氏は日本企業が抱える課題を指摘した。

一方日本でも、開発担当者と運用担当者が連携することでソフトウェアを迅速かつ高い頻度でリリースすることを可能にする開発手法である「DevOps」を導入している企業は増えてきているという。

IDCの調査よると、DevOpsの導入企業を業種別で見た場合、サービスプロバイダーが最も多く、第2位は金融であることがわかっている。スチーブンソン氏は、DevOpsを導入している日本企業の注目すべき点として、成長率が高いことを挙げた。ソフトウェアのリリースのスピードは企業の業績に影響を及ぼしていることがうかがえる。

情報漏洩のリスクを低減しつつ、開発サイクルを短縮

スチーブンソン氏は、日本企業が遅れている例として、テストデータの管理を挙げた。同社が独自に実施した調査によると、国内では、40%以上の企業がテストデータを受け取るまでにかかっている時間を把握しておらず、14%が1週間以上かかっていることがわかっている。これに対し、米国では平均して3、4日程度でテストデータの受け取りが行われているという。

日本でテストデータの受け取りに時間がかかっている背景には、内製化を行うよりも、ITベンダーにアウトソーシングしている企業が多いことがある。スチーブンソン氏はこうした課題に対し、「元データを適切に管理して、データを効率よく活用する仕組みが必要」と提言する。

同社はデータ仮想化プラットフォーム「Delphix Data Platform」の提供により、「開発サイクルとTime to Marketの短縮」「情報漏洩のリスクの低減」「「クラウドの活用」を支援する。

「Delphix Data Platform」は、企業内のデータを重複排除と圧縮して保存した上で、システム間で一貫性を保った形でマスキングを行う。マスキング済のデータは、数分でプロビジョニングして、セルフサービスで利用することができる。バックアップと違って、仮想化はリストアの手間が不要なため、短時間でデータをユーザーに提供することができる。

  • 企業内のデータを重複排除と圧縮して保存した上で、システム間で一貫性を保った形でマスキングを行う「Delphix Data Platform」の仕組み

    企業内のデータを重複排除と圧縮して保存した上で、システム間で一貫性を保った形でマスキングを行う「Delphix Data Platform」の仕組み

テストデータ管理で開発時間を削減し、サービスの市場投入を加速

今年2月に現職に就いたスチーブンソン氏は、テストデータ管理によって開発時間を削減してサービスの市場投入を加速することで、企業のDXと顧客満足度を向上することをミッションとして掲げている。

22年度は前年度に比べて175%の成長を達成したが、23年度は、従業員を前年度の3倍に、マーケティング投資を10倍に増強することで、さらなる成長を狙う。現在の顧客は大型案件を中心に30社未満とのことだが、23年度は「金融」「電力」「リテール」に集中する。「電力業界では、自由化によって新しいサービスの開発が進んでおり、顧客との関係強化が重視されている。一方で、インフラを提供しているため、データの保護も重要」(スチーブンソン氏)

例えば、同社の顧客である米国JPMorgan Chaseでは、Delphix Data Platformの活用により、モバイルアプリの開発を加速しオンラインバンキングの品質を向上しているという。

スチーブンソン氏は、「金融では、顧客とよりよい関係を構築するため、ユーザーフレンドリーなインタフェースを持つアプリを通じてコミュニケーションをとっている。ただし、アプリは作って終わりではなく、改善を続けていく必要がある。Delphix Data Platformはそうしたソフトウェア開発の日々の改善に貢献できる」と話す。

また、営業面では、100%パートナー・ビジネスの方針は変えないが、ハイタッチ営業とパートナー営業を採用することで、強化していく。パートナーに関しては、既存のパートナーの支援を拡充するとともに、クラウドネイティブなベンダーともパートナーとして関係を構築することを進めていく。

スチーブンソン氏は、「日本はモノづくりの国だが、モノづくりの世界でもソフトウェアの役割が増えている。企業は、ソフトウェアを中心として、データセントリックなビジネスモデルを作ることが求められている。その中で、Delphixのよさをわかってもらえるのではないだろうか」と述べ、話を締めくくった。