カスタマーエンゲージメントプラットフォームを提供するBrazeは2月9日、事業戦略発表会を開催した。発表会では、同社が2022年に取り組む施策や同社製品の特徴とともに、世界14カ国1500名のB2C企業のマーケティング部門の意思決定者に行った調査「2022年 グローバルカスタマーエンゲージメントレビュー」のサマリーが紹介された。

2021年から国内でサービス提供を開始したBrazeは、顧客と継続的に良好な関係を築くために企業が実施する「カスタマーエンゲージメント」をサポートするSaaS「Braze」を提供している。同製品を活用して、顧客データの分析やカスタマージャーニーの策定・管理だけでなく、会員ユーザーの行動をリアルタイムに把握し、メールマガジンやアプリのプッシュ通知、公式サイトのポップアップ通知など、パーソナライズ化した(顧客それぞれの関心やタイミング、知用するチャネルなどに合わせた)コンテンツやメッセージの配信が行える。

Braze 代表取締役社長の菊地真之氏は、2022年の事業戦略として、「プロダクト&パートナーエコシステムの拡大」「業界シナリオの展開」「カスタマーサクセス ユーザーコミュニティの拡大」を掲げた。

  • Brazeの2022年の事業戦略、出所:Braze

同社はこれまでSnowflakeやTreasureDataなどとの連携を進めてきたが、今後もパートナー連携の拡大を進めるという。加えて菊地氏は、「米Brazeのユーザーにはナイアンテック、ディズニー、HBO Max、GAPなどグローバルに事業を展開する企業が多くいる。そうした企業のナレッジを、日本の企業にも利用しやすいマーケティングシナリオに落とし込み、ベストプラクティスとして提供していきたい」と説明した。

  • Braze 代表取締役社長 菊地真之氏

また、2022年はカスタマーサクセスの人員強化を図り、自社のサービスのユーザーコミュニティの強化のためのイベントも積極的に実施する。これまでも同社は、カスタマーイベントを開催してきたが、分科会の開催や新たにタスクフォースの組織、業界・企業で活躍しているマーケティング領域のプレーヤーの取り組みを紹介するプログラムを行っていくという。

「既存のCRM(Customer Relationship Management)ツールは、システム的な制約が多く、継ぎはぎだらけのアーキテクチャで、ベンダーロックインのシステム環境に陥りがちだ。マーケティング施策も訪問客に対する接客しかできず、最適なタイミングでのエンゲージメントが実行できていないと考える。当社は、マーケッターが実現したいマーケティングをエンジニアが簡易に実現できるプラットフォームを引き続き提供していく」と菊地氏は語った。

「2022年 グローバルカスタマーエンゲージメントレビュー」については、マーケティング本部長の田中裕一氏が紹介した。同調査によれば、調査対象者のうちカスタマーエンゲージメントの取り組みが浸透した企業の90%以上が収益目標を達成しているという。また、企業が顧客から直接収集したゼロパーティデータやECサイトや公式ホームページから得られるファーストパーティデータの活用に向けて、調査回答者の90%以上がマーケティング予算を増やすと回答しているという。

  • Braze マーケティング本部長 田中裕一氏

田中氏は、「カスタマーエンゲージメントの取り組みと収益の相関は高く、ゼロ・ファーストパーティデータの活用に向けて多くの企業が戦略的な投資とデータ管理を進めている。そのうえで、企業が今後成長していくためには、テクノロジーの活用とチームの構成が重要になってくる。顧客情報を生かしながらPDCAを実施し、アジャイルに体制を変化しカスタマーエンゲージメントを実行していくことが重要だ」と解説した。

加えて、田中氏は「リテール&Eコマース」「クイックサービスレストラン&デリバリー」と、米国の2つの業界トレンドを紹介した。リテール&Eコマース業界は、モバイル対応を進めており、コロナ禍にあっても収益目標を達成できているという。マーケティングを成功している企業の特徴としては、顧客をパーソナライズ化し、キャンペーンやカスタマージャーニーに基づく施策を積極的に行い、そこから得た学びを次の施策に生かしているという。

一方、クイックサービスレストラン&デリバリー業界は、人手不足とともにデジタル化も進んでいるため、「AIやチャットボット活用などカスタマーエンゲージメントの最前線の取り組みが進む」と田中氏。同業界でマーケティングを成功している企業は、3つ以上のチャネルを活用して顧客と繋がり、カスタマーエンゲージメント活動をマーケティングのKPI(重要業績評価指標)にしているという。

最後に、日本市場 製品責任者の新田達也氏がBrazeのプロダクトビジョンとロードマップを説明した。田中氏は、「従来のMA(マーケティングオートメーション)ツールは企業視点で、いかに効率的にマーケティングプロモーションを行うかという点に主眼が置かれていたが、Brazeは顧客視点で考える。企業からどんなエンゲージメントを受けたら顧客は心地よいか、ブランドに対して愛着が湧くかといった視点で機能開発を行っている」と製品コンセプトについて話した。

  • Braze 日本市場 製品責任者 新田達也氏

Brazeでは基本的に、「リアルタイム」「オムニチャネル」「スケーラビリティ」という3つの要素をベースに製品開発と機能強化を進めているという。

  • Brazeのプロダクトを支える3つの要素、出所:Braze

これまで、日本語版ダッシュボードの提供(英語以外の表示言語サポートしては初)や日本で利用者の多いLINEへの対応、TealiumやTreasure DataのCDP(カスタマーデータプラットフォーム)との連携など、四半期に一度、新機能や機能強化を提供してきた。2月9日からはカスタムレポート作成の「Braze Report Builder機能」や「Snowflakeリーダーアカウントとのデータ共有」など8つの新機能を提供するという。