シスコシステムズは12月15日、5G開発戦略を発表するとともに、同社が昨年の12月に東京六本木の本社内にオープンした5Gのソリューション開発を行うためのPoC施設「5Gショーケース」の活用状況を紹介した。
「5Gショーケース」では、現在、15のソリューションが展示され、この1年で50社以上が利用し、100回以上のデモを実施したという。
同社では、ローカル5Gのミリ波とSub6 両方の商用免許を取得し、ショーケースでは、JMAの基地局(ミリ波)とAirSpanの基地局(Sub6)を使った検証が行える。将来は、キャリアアグリゲーションの環境も用意するという。
また同日には、ショーケースにパナソニックのIT/IPプラットフォーム「KAIROS」を導入したことも発表した。放送事業者がIP化対応に向けて、幅広いIP対応機器やソフトウェアを使用して接続互換性の検証やデモ、実証実験、また新しく対応機材やソフトウェア開発を行うための環境として利用できる。また、シスコが提供するSDIからIPへの移行を実現する「Cisco IP Fabric for Media」を組み合わせて構築しているという。
シスコシステムズ 専務執行役員 情報通信産業事業統括 濱田義之氏は、「KAIROS」の前でプレゼンし「ここでの5Gを使ったリモートプロダクション(放送中継車と放送局をネットワークでつないで番組を制作すること)は、IP化とともに放送業界における新たな価値創造の可能性が出てくる」と語った。
「5Gショーケース」では、AppDynamicsやThousandEyesなどで構成する「シスコ フルスタック オブザーバビリティ」を提供し、検証での問題特定、分析を行うことができる。
また、同氏は5Gについて「一般のユーザーが利用促進しているフェーズにあるが、事業者は企業ユースや産業で使われる部分を伸ばしていこうとしている。現在、サービスプロバイダのモバイル事業の収入の8割以上はコンシューマからだが、2025年には半分がエンタープライズやIoTの利用になると予測されている。それに向けたわれわれの事業戦略として、コア技術の継続的なイノベーションが重要になる。例えば、オプティカルとIPを統合したネットワークにしていくことも重要になる。その礎になるのがコンポーネントの革新だ。また、サービスプロバイダの付加価値サービスの提供も支援していく。放送のIP化もその1つだ」と語った。
濱田氏の語ったコア技術の開発は、同社の5G における重点開発領域の1つだという。現在は、1つのコアで複数の世代をサポートするコンバージドコアの開発を進めており、それによって、同社は5Gへの移行をサポートするという。
5GIoTサービス、5Gプライベートネットワーク(ローカル5G)、固定無線アクセスも同社の重点開発領域で、5Gプライベートネットワークでは、Wi-Fi6や有線を含めたマルチアクセス環境下での共通のポリシー適用の検討を進めているという。固定無線アクセスでは、アクセスサービスを統合したMixed Wireless Accessをどのように実現するのかが重要だという。
そのほか、ある予測では2025年にインターネットが世界の電力の20%を消費するともいわれており、環境負荷の低減も重要になるという。
同社ではチップアーキテクチャ「Cisco Silicon One」への積極的投資で、超高速・超低消費電力を実現していくほか、トランスポンダのルータへの搭載による省電力化、Routed Optical Networkingへのアーキテクチャ変革により、消費電力、スペース、オペレーションの効率化を実現するという。Silicon Oneではこれまでスイッチング性能の向上、低消費電力化、バッファリングの向上、ルーティング機能搭載等を実現してきているという。