集中して働ける自分なりの場所が見つかる

それでは、16階に移ろう。以下が、16階の全体のイメージだ。フリーアドレス制が採用されており、どこで働いてもよいのだが、玉木氏は「8時間もオフィスにいると飽きてきます。環境を変えるだけで、集中することができるようになります」と話す。

  • 16階の全体イメージ。芝生がところどころにある15階とはまた違った趣だ

16階は1人で集中して仕事ができる個人ブースが設けられている。新型コロナウイルスの影響で、オンラインでのやり取りが増えており、自宅で集中して働くことができない社員を考慮して、複数のエリアが用意されている。

複数ある集中スペースの中で、個人的に興味を惹いたのが、以下の個人ブースだ。まるでかまくらのような作りで、すっぽりとくるんでくれる。完全に閉め切った個人ブースとはまた違った感覚で、集中できそうだ。

  • 16階にある個人ブースの「集中スペース」。すっぽりとくるんでくれる

16階にはプレイルームも設けられている。プレイルームにはソファーとモニターが備え付けられているほか、絨毯が敷かれているエリアもある。まるで、自宅にいるかのような錯覚を起こしてしまいそうだ。

  • その名の通り、遊んでもかまわない「プレイルーム」。自宅にいるかのようにくつろげそうだ

前のページから、オフィスの内装を紹介してきたが、椅子や机の種類が豊富であることに気付かれただろうか。家具の中でも椅子は好みが分かれるもので、かつ、健康維持にも直結している。カオナビの新オフィスに用意された椅子の種類は50に上るそうだ。50種類もの椅子を試してみるだけで一苦労だ。これも「会社を自分の居場所と感じられる」というコンセプトから来ている。どこまでも、社員に寄り添っている。

玉木氏に、今のオフィスに点数をつけるとしたら何点になるかを聞いたところ「100点に近いです。すべての社員が自分の居場所を見つけることができるスペースになっているからです」という答えが返ってきた。

会社にいる時だけがその人ではない

テレワークなど、自由度の高い勤務体系を導入すると、問題となるのが評価だろう。玉木氏が管轄する「ブランドデザイン本部」ではマクロの視点で社員を見ており、社内の活動に加えて、外部の活動も評価対象としている。「カオナビにいるときだけがその人ではありません」と、玉木氏は語る。

オフィスへの投資は人材確保の目的もあるそうだ。今後、日本は人材不足が深刻化することが見込まれており、どの企業も優秀な人材を確保するために戦略を練っているはずだ。

玉木氏は「売り手市場である今、正直なところ、業務内容が被る企業はいくつもあります。そうした状況の中、どうしたらモテる会社になれるのか。われわれは、社員に寄り添うことで、モテる会社を目指しています」と話す。Z世代と言われる若い人たちは、もっと上の年代の人とは異なる就職観を持っていると言われており、彼らを引き付けるためのエッセンスが新オフィスに散りばめられていると言える。

さらに、玉木氏は「われわれはタレントマネジメントに関わる企業という立場からも、先進的な取り組みをしていきます。新しいオフィスに興味がある企業は多いでしょう。ぜひ、われわれのPDCAサイクルを客観的に見てもらって、参考にしていただければと思います」と話す。

ブランド戦略の統合、人材確保など、さまざまな狙いの下、始まったカオナビの新オフィス。新型コロナウイルスが収束して、社員の方々が思う存分、オフィスを使い倒せる日が早く来る日を願う。