NECは12月10日、JAXAからの契約のもと光衛星間通信システム「LUCAS」向けに、レーザ光を用いて宇宙空間で大容量データ伝送を実現する衛星用の光通信装置を開発したと発表した。開発した光通信装置は静止衛星用と地球観測衛星用の2種類。

  • 静止衛星用の光通信装置

  • 地球観測衛星用の光通信装置

静止衛星用の光通信装置は、2020年11月29日に種子島宇宙センターから打ち上げられたJAXAの光データ中継衛星に搭載されている。一方、地球観測衛星用の光通信装置は、今後打上げられるJAXAの地球観測衛星「だいち3号(ALOS-3)」と「だいち4号(ALOS-4)」に搭載され、光データ中継衛星との間で光通信の実証や実利用が行われる予定。

NECは、静止衛星と地球観測衛星の間で4万キロメートルにおよぶ超長距離の光通信を実用化するために、海底ケーブルやLANなどで広く用いられ部品入手性に優れるが低出力の半導体レーザ光(波長1.5マイクロメートル帯)を真空環境のもとで高出力に増幅する技術をはじめ、データ伝送先の衛星を捕捉し追尾する技術、さらに相対的に移動する通信相手からの微弱な受信光から広帯域の信号を復調する技術などを開発した。

特に精密な光学系部品などで構成される光通信機器が打ち上げ時の激しい振動や衝撃、軌道上で受ける宇宙放射線にも耐えうる設計を行い、またレーザ発振に伴う発熱に対し光通信機器において十分な排熱環境を創る工夫も行っているという。以上の技術開発の結果、新開発の装置は、衛星間の伝送速度を1.8Gbpsと従来比7倍以上に高速化したとしている。

データ伝送時間の拡大と伝送速度の高速化により、従来に比べ多くのデータ量をリアルタイムで入手できるようになり、さまざまな分野で衛星利活用が進むことが見込まれるとのことだ。