ポスト「京」の名称が決定

理化学研究所(理研)は5月23日、日本のスーパーコンピュータ(スパコン)「京」の後継機という位置づけで、早ければ2021年からの運用を目指して開発が進められているポスト「京」の名称を「富岳(Fugaku)」と決定したことを明らかにした。

  • 富岳

    「富岳」の文字を飾った額。利用したフォントに特に理由はない。理研では、後日、改めて富岳のイメージにあるロゴマークを作成する予定としている

ポスト「京」の名称となった"富岳"については2019年2月15日~4月8日の期間で行われた一般公募の結果を外部の有識者を交えたポスト「京」ネーミング委員会での審査を経て、5月22日に開催された理研の理事会で承認された。今回の名称公募には、期間中に「京」の名称募集の際の約2.5倍となる5181件の応募があった(うち氏名などのない無効が59件)とのことで、同じ名称の重複を除いた純粋な候補数は2487件であったという。

  • 松本紘

    富岳と書かれた額を掲げる理研の松本理事長

委員会では、

  1. 世界トップレベルの研究拠点・スパコンであることを知ってもらえること
  2. 日本国内のみならず、世界中の人にとって親しみやすい名称であること

という2つの基準をもとに検討を実施。応募件数としては「垓(がい)」、「雅(みやび)」、「極(ごく)」の3つが多かったと言うが、上記の基準に照らし合わせると、必ずしも基準を満たす名称ではない、ということから、「富岳(ふがく)」のほか、「穹(きゅう)」、「叡(えい)」、「Yukawa(ゆかわ)」、「凌駕(りょうが)」、「光明(こうみょう)」、「解(かい)」という7つが委員会にて選定され、それをもとに理事会で決定がなされたという。

富岳と決定された要因は、富士山の異名であり、日本一の山である富士山の高さが性能の高さを、その裾野の広がりがユーザーの拡がりを想起させること、ならびに海外でもMount Fujiといった名称などで親しまれていること、そして山の名称は例えば2018年11月版のTOP500で2位にランクインした米国ローレンス・リバモア国立研究所の「Sierra」をはじめとして、多く使われている1つのトレンドであること、などの理由からであると理研では説明している。

ちなみに5000件を超す応募の中から、「富岳」という名称で応募した人は2名で、応募者の氏名については、後日、理研Webサイトに掲載される予定だという。

  • 理研

    左から理研の美濃導彦 理事、小谷元子 理事、松本理事長、岡谷重雄 副理事、理研R-CCSの松岡聡 センター長

富岳の性能は?

スパコン「京」の後を継ぐスパコン「富岳」は、京の100倍のアプリケーション実行性能を目指して開発が進められたきた。その開発における最大の特徴はシステムとアプリケーションを協調的に開発するCo-designという手法を用いたという点。理研と開発・製造を担当する富士通、そして「富岳」で研究を進めるべき重点課題機関が密に連携をすることで、本当に研究に必要な性能を実現するためのアーキテクチャなどが盛り込まれた形となった。

また、日本で必ず付きまとう電力の制限という問題に対するために、単なる高性能化だけでなく省電力化という背反する2つの課題の両立を実現。富岳の開発の指揮をとってきた理化学研究所 計算科学研究センター(R-CCS)の松岡聡 センター長は、「こんなにすごいことになるのは、これまでの自分のキャリアにおいても初めて」と表現するほど、その電力対性能は高いという。

富岳の中心となるArmベースの7nm FinFETプロセス採用CPU「A64FX」の詳細な電力性能は公開されていないが、最大でもその消費電力は密行列積演算(いわゆるLINPACK)などを行った際にNVIDIAのVoltaアーキテクチャのGPUレベルとのことで、Intel CPUの3~4倍高い電力効率を実現できるとする。また、その開発を担当した富士通についても「長年にわたってCPUを開発してきたわけだが、今回の開発においては、継続的に作っていくことで蓄積されてきた知見が重要な意味を持つものとなった」と高い評価を示す。

また、メモリについてもHBM2と最適化したメモリアーキテクチャの採用。オンパッケージメモリとすることで、低消費電力化とアプリケーション実行性能の向上の両立を実現したとしている。

なお、これらを搭載したノード数は明らかになっていないが、少なくともA64FXは15万個以上が集積されるとのことで、「高性能でありながら、非常に裾野の広い、スパコンを作る側からすると、両立させることは夢のような目標を今回達成できたということは大きな成果。「富岳」という名称がそれを具現化していくこととなる」(松岡氏)と、実際に稼動した際には、9つの重点課題分野のほか、AI、ビッグデータ、シミュレーション、社会課題の解決など、スパコンを利用する人、作る人、さまざまな側面から世界トップクラスの成果を出して行き、日本国民の利益になっていくことを目指すとしている。

  • ポスト「京」の試作機

    ポスト「京」におけるCMU(CPU Memory Unit)の試作機。CPUを2式、光コネクタインタフェースなどを内蔵している (C)富士通/理研

  • ポスト「京」の試作機

    ポスト「京」におけるシェルフ(ラックに最大8式搭載される24式のCMUを搭載)の試作機 (C)富士通/理研