東海大学医学部付属病院は4月18日、国内で初めての試みとなる細胞治療製品を用いた腰椎椎間板変性症治療に向けた治験を5月7日より開始することを発表した。

椎間板障害は腰痛症の原因の1つであり、脊椎のさまざまな疾患を引き起こすことが知られている。加齢に伴い発症する場合のほか、激しいスポーツなどに起因する場合など、その原因はさまざまで、現在、日本人の4人に1人は腰痛に悩んでいるとも言われ、その診察にかかる医療費も年間で約1700億円を超す規模と推計されるなど、社会的課題となっているが、その治療法は対症療法や椎間板切除、人工的に脊柱を固定する脊柱固定術などが主で、根本的な組織の修復や再生をうながすものではない。

  • 腰痛
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  • 腰痛症は年齢が若い人でも起こりうるが、その根本的な予防や椎間板の修復・再生手法は現在は存在していない (出所:東海大発表資料)

脊椎は、人間最大の無血管(血管が内部に存在しない)の組織とも言われており、関節軟骨や眼球、頭皮などとあわせて、血管のない組織として痛みやすく、痛むと再生しにくい部位として知られている。東海大では、長年にわたって脊椎の再生に向けた研究を行ってきており、脊椎の中心に位置する髄核に幹細胞が少ないながらも存在していること、そこに外部から幹細胞を移植することで、再生できる可能性があることなどを報告してきたほか、自家活性化髄核細胞移植による臨床研究を実施。対象者は術後6.5年を経過しても腰痛の再発は認められず、MRIの定量的評価などでも脊椎の変性の進行が認められないことなども確認、こうした手法が有効であることを示してきた。

  • 腰痛
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  • 椎間板の修復は血管がないことから、ほとんど起こらず、外部から細胞を移植することでしか期待できない (出所:東海大発表資料)

ただし、この臨床研究は患者の椎間板を取り出して、そこから細胞を抽出、培養という手順を踏まえており、時間とコストがかかってしまい、一般に広く普及できる手法かというと、コスト的な問題が課題として残されていた。そこで研究チームは2014年より、椎間板変性疾患の機能回復に向けた細胞治療製品の開発を行っている米ディスクジェニクスと連携して研究を推進。米国のドナーから生細胞を採取し、ディスクジェニクスが独自技術により椎間板幹細胞を分離。医薬品として生成した後、ヒアルロン酸ゲルと混ぜて注射で変性した椎間板に注入することで、細胞の再生を促す手法の開発を進めてきた。

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    ディスクジェニクスが開発した細胞治療製品の概要 (出所:東海大発表資料)

その最大の特徴は、凍結保存した医薬品を、病院で培養するといった手間をかけずにそのまま利用できるという点。ビーグル犬を用いた非臨床試験では、安全性があることや再生が実際に行われていることなどを確認。その後、さまざまな審査などを経て、今回の治験実施に至ったとする。

治験は6つの大学病院で実施

今回の治験の概要だが、その対象となる疾患は「中程度の椎間板変性症が原因の腰痛患者」で、募集患者数は38名。内訳としては、低容量の治療薬群15名、高容量の治療薬群15名、そしてSham(擬似薬)対象群8名となる予定。期間は、治験製品投与後26週間、ならびその後継続観察試験26週間となっている

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    治験概要 (出所:東海大発表資料)

適応条件としては、椎間板変性症と診断されていることが前提で、18~75歳でBMIが18~35までの過去6ヶ月以上慢性的な腰痛があり、過去1年以内に3ヶ月以上、手術を伴わない治療をしても、効果を得られなかった人としている(このほか、治験の決められた時期に来院し、必要な問診や検査を受けることができる、ならびに妊娠の可能性がある女性の場合は、治験参加期間中、治験担当医師の指導による医学的に認められた方法により避妊できる、という条件もある)。

  • 治験適応となる患者の条件 (出所:東海大発表資料)A@腰痛

また、除外基準としては、大まかに以下の項目が掲げられている。

  • 痛みの原因となる椎間板が2つ以上ある人
  • 神経圧迫による神経根症を有している人
  • 片方あるいは両方の下肢に痛みがあり、その痛みがひざ下まで達している人
  • 腰椎椎間板に対して腰椎固定術を行った人(今回の投与部位以外を6ヶ月以上前に手術した人は可)
  • 過去3ヶ月以内に治験製品投与部位に、椎間板侵襲を伴う治療、神経根ブロック注射を行った人
  • 脊椎圧迫骨折(胸腰椎の推体骨折)の既往がある人

説明を行った同大医学部外科学系整形外科学の酒井大輔 准教授は、「参加基準は狭いが、正確な対象患者をピックアップするためには容赦願いたい」と、今回の基準を設定した背景を説明する。

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    治験に関する対象者の除外基準 (出所:東海大発表資料)

なお、治験実施開始日は2019年5月7日を予定。実施施設は、以下の6大学病院となっている。

  • 東海大学医学部付属病院
  • 千葉大学医学部付属病院
  • 山梨大学医学部付属病院
  • 名古屋大学医学部付属病院
  • 三重大学医学部付属病院
  • 大阪大学医学部付属病院