ものづくりの最初の一歩となるデザインや設計。中でも設計プロセスは、「生成(GENERATE)」、「反復(ITERATE)」、「検証(VALIDATE)」という3つのフェーズで構成されるが、設計を行い、それを元にシミュレーションを行い、またその結果をもとに設計をしなおす、という繰り返しが、これまで連綿と繰り返されてきた。

しかし、近年、設計期間の短縮や、製品の短TAT化、試作数の削減、リスクや故障コストの削減といったことを実現したいと言うニーズが高まりを見せており、設計の途中にシミュレーションを組み込み、結果を見つつ、設計の最適化を図って行くことができないか、という要求が以前に増して強くなってきているという。

一方で、シミュレーションを設計の途中に組み込むためには、シミュレーションに対するノウハウが必要であったり、設計モデルをそのまま解析に使えなかったり、また、設計変更のたびにシミュレーションを行う手間暇とコストなどを考える必要があり、これまでなかなか言うは易く行うは難し、という状況が続いてきたといえる。

この1~2年にかけてPTCはANSYSとのパートナーシップにより、こうした状況を変えようという動きを見せてきた。さらに2018年11月にはジェネレーティブ・デザイン・ソフトウェアを提供する米Frustum(フラスタム)を約7000万ドルで買収したことを発表。これにより、設計プロセスの3つのフェーズすべての対応できるソリューションを提供することが可能になると同社では説明する。

  • 設計プロセス

    設計プロセスの概要。ANSYSとのパートナーシップに加え、フラスタムの買収により、すべてのフェーズでシミュレーションを提供することが可能になったという

  • 設計プロセスの課題

    従来の設計プロセスにおけるシミュレーション活用に対する課題

PTCでCTO室(OCTO)のマネジメントディレクターを務めるスティーブ・ダーティン氏によれば、フラスタムの買収は、「アディティブマニュファクチャリングのリサーチを長年行ってきたなかで、ARやクラウド、ジェネレーティブデザインなど、新技術が使えることが見えてきたため、そうした技術をCreoに組み込んでいこうという決定のもと行なわれた」と説明。同社の屋台骨であるPLMやシミュレーション、パラメトリックな機能などに対し、AIやクラウドといった技術が変革をもたらすことを期待して行なわれた取り組みであることを強調する。

今回のフラスタムの技術や、ANSYSとの協業結果の1つであるANSYSのDiscovery Liveをベースに、リアルタイムでシミュレーション結果を得ることを可能とする「Creo Simulation Live」などを活用することで、これまで、CreoでデザインしたデータをANSYSやマスワークスなどが提供するシミュレーションツールに一度渡して、その結果をもとに、再度変更を行なうといった作業から設計エンジニアは解放され、設計途中にリアルタイムで解析結果を見ることが実現されるようになることが期待されるという。

  • PTCのデモ
  • PTCのデモ
  • スノーモービルの設計を用いた各設計プロセスごとにおけるシミュレーション結果のデモの様子

「設計プロセスの早い段階でシミュレーションが手軽にできるようにすることで、設計エンジニアが革新的なデザインを実現することの手助けになりたい」と同氏は語っており、今後は設計プロセスの自動化や、より多くのアイデアの具現化につながるテスト環境の提供なども進めていきたいとしている。「いろいろ自動化することで、これまで考えられなかったデザインを生み出すことができるようになる。また、マルチフィジクスの解析に対応することで、そうしたデザインの実用性も即座にわかるようになる。こうした今まで想像の世界であったものが現実的なものとして見えてきたことに非常にワクワクしている」(同)。

実際の流れとしては、設計段階における大雑把な解析をCreo Simulation Liveにてリアルタイムで行い、その後、Creo Simulateで高精度な検証のためのシミュレーション、という使い分けがなされる見込みだという。また、次のステップとしては、Creo 7.0のころを見込んでいるが、ANSYS Discovery Ultimate(旧 ANSYS AIM)や、フラスタムの技術を取り込む予定だという。フラスタムの技術やANSYS Discovery Ultimateについては、すべての技術を取り込むには3~5年をかけるイメージとのことであるが、こうした取り組みが進むごとに、より幅広い解析が設計の現場で可能になってだろうと同氏は期待感を込めてコメントとしていた。

  • Creo Simulate
  • Creo Simulate
  • 精度よりも速度を重視する設計初期にはCreo Simulate Liveを、精度が欲しい場合にはCreo Simulate(将来的にはCreo Simulate AIM)をそれぞれ使い分けるといったイメージとなる