富士通と富士通研究所は9月19日、ものづくりの分野において設計業務を効率化するAI技術を開発したと発表した。

ものづくり分野の設計業務の中でも上流工程では、実物の試作を行う前に、物理法則に基づいた計算により設計パターンの特性の把握や評価を行うシミュレーションが不可欠となっている。しかし、シミュレーションに緻密さが求められるものづくりの分野では高い解像度が必要なため計算量が多く、設計候補ごとに実行する場合にはその計算時間の削減が課題となっている。

  • 設計候補の評価

    シミュレーションを使った設計候補の評価

そこで設計を短時間で評価するために、シミュレーションの入出力データから学習したAIにより評価値を推定する方法が考案されているが、実際のものづくり現場へ適用するためには、十分な精度が得られていなかった。

  • 開発期間の短縮

    AI活用による開発期間の短縮のイメージ

そこで今回、研究グループは設計候補をリアルタイムで評価するための新たなAIの学習技術を開発。これにより、学習データが十分に取得できない場合でも高精度な評価を可能にしたという。

具体的には、回路設計の工程で、回路から10m離れた場所での電磁波強度を推定する実験において、従来のディープラーニングを用いて672データで学習した場合の推定誤差は±16%であったのに対し、今回開発された技術では、推定誤差は±2.9%と軽減されることを確認したという。

  •  AIによる推定

    遠方の電磁波強度の周波数分布のAIによる推定

この結果について研究グループでは、設計業務における設計候補の絞り込みにシミュレーションの代替として活用できるめどが得られたとしており、今回開発された技術を活用することで、シミュレーションの工程の短縮が期待できるようになるとする。

なお、今回開発された技術は、2019年度中に電磁波解析ソリューション「FUJITSU Technical Computing Solution Poynting」の追加機能として製品化される予定のほか、今後も開発技術の実証を進めていくことで、他業種や業務への展開も検討していくという。