京都大学は、海溝などの沈み込み帯の浅い部分で発生するゆっくり地震(通常の地震に比べて遅い断層すべり速度で歪を解放する現象)の活動の後半で、特に潮位変化によりゆっくり地震が誘発されやすいことを発見したと発表した。

同成果は、同大 理学研究科博士課程学生の片上智史氏、防災研究所の山下裕亮 助教、伊藤喜宏 准教授、太田和晃 特定研究員、鹿児島大学の八木原寛 助教、九州大学の清水洋 教授らの研究グループによるもの。詳細は、米国の科学誌「Geophysical Research Letters」に掲載された。

津波発生領域と潮汐応答を示したゆっくり地震の位置関係を示す概略図 (出所:京都大学Webサイト)

地震波を放出し数分程度継続するゆっくり地震を低周波微動という。これは巨大地震発生前にもしばしば観測され、地震発生を予測する上で重要な現象として注目されている。沈み込み帯の地震発生域深部で起こる低周波微動に関する研究が進む一方、津波発生領域を含む浅部側ではこれまで十分な研究がなされていなかった。

研究グループは、2013年に観測された宮崎県から鹿児島県沖の南海トラフにおける浅部低周波微動を対象に、沈み込み帯浅部で発生する低周波微動も潮の満ち引きと関連があるのか調査を実施した。その結果、従来検出されていなかった規模の小さいゆっくり地震を検出する手法を確立し、津波発生域となる沈み込み帯浅部で、潮の満ち引きによってごく微小なゆっくり地震が誘発されることを発見した。

研究グループは同成果に関して、東北地方太平洋沖地震時に巨大津波の発生源となった、沈み込み帯浅部の歪蓄積過程や摩擦特性など、これまでよく明らかにされていなかった物理過程を解き明かす上で重要な知見であると説明している。