テクトロニクス社は5月9日、IoT機器の設計や教育分野での使用を想定したUSB経由でPCと接続して利用する形態のベクトル・ネットワーク・アナライザ(VNA)「TTR(Tektronix Transmission Reflection)500シリーズ」を開発、自社のUSBベースRFテスト機器(USB RF)のラインアップに追加したことを発表した。

あらゆるものがネットワークにつながることが想定されるIoT機器の開発現場では、機器の価格低減圧力と開発サイクルの短期化、その一方で品質は向上、というニーズが存在している。しかし、従来のRFに関連した測定機器は高価なものが多く、資金に乏しいベンチャー企業では1台でも導入されていればまだ良いほう、という場合もあり、高い性能を維持したまま、低価格なものが欲しい、という声が強まっていたという。

同シリーズは、そうした声に対応するために開発されたもので、一般的なVNAに対し、表示部と、そのコントロールなどを行うコンピュータ部を廃したほか、2つのRFソースと6つのRFレシーバを1チップ(ASIC)化することで、小型・低価格化を実現したという。その結果、フル2ポート、2パス/SパラメータのVNAながら筐体のサイズは競合他社が提供するベンチトップタイプのVNAと比べ、約1/7程度となる206.4mm×44.5mm×285.8mm、重量は1.59kgと手軽に持ち運びが可能はサイズと重量を実現した。

TTR500シリーズの性能仕様の概要

TTR500シリーズの機能ブロック図(左)と実際の基板での説明(右) (右の画像の出所:Tektronixの米国Webサイト)

また、PCとの接続はUSB 2.0にて行われ、操作は専用に提供される「VectorVu-PCソフトウェア」にて実施。同ソフトウェアは、ベンチトップの利用になれた熟練者でも、PCのGUIベースのツールの操作になれた若手エンジニアであっても直感的に利用ができるように、ベンチトップそっくりな操作パネルのレイアウトの状態から、プルダウンで項目を選択する方法まで、GUIを変更することが可能。測定項目自体も、ベンチトップのものと遜色ないため、より広い作業スペースの確保なども容易に実現できるようになる。

VectorVu-PCソフトウェアの概要

実際にUIを変更した様子のデモ。アイコンを押すだけでUIのレイアウトを順次変更することができる。接続可能なPCはWindows 7/8/10の64ビット版であり、タッチパネルでの操作もPC側が対応していれば問題なく動作する

なお、同シリーズには100kHz~3GHz対応の「TTR503A型 USBベクトル・ネットワーク・アナライザ」ならびに100KHz~6GHz対応の「TTR506A型 USB ベクトル・ネットワーク・アナライザ」の2機種が用意されており、国内向け標準価格は503A型が118万円(税別)、506A型が163万円(税別)となっている。

本体と各種オプションの標準価格。校正キットは利用するコネクタによって異なってくる

TTR506Aの実機。電源は5V入力対応だが、バッテリー駆動ではなく、AC駆動となっている。タブレットPCとつないで利用すると、かなり手軽に外に持ち出して利用する、といったことも可能なイメージとなる。ちなみに右下の画像はパナソニックのTOUGHPADのほか、スペクトラムアナライザ、VSG、VNA、電源が置かれている様子。TOUGHPADのサイズが10.1型と考えると、そのコンパクトさが分かるだろう