新潟大学は6月28日、肝細胞がん(肝臓がん)が増殖する仕組みを解明し、その仕組みを打ち消す新規化合物により肝細胞がんの悪性化を抑制することに成功したと発表した。

同成果は、新潟大学大学院 医歯学総合研究科 分子遺伝学 小松雅明教授、斎藤哲也特任助教、同研究科 消化器外科学 若井俊文教授、東京大学創薬機構 岡部隆義教授、慶應義塾大学先端生命科学研究所 曽我朋義教授らの研究グループによるもので、6月27日付けの英国科学誌「Nature Communications」に掲載された。

原発性肝がんの約90%を占める肝細胞がんは、マロリー小体と呼ばれる構造体をその細胞内に蓄積することが知られているが、その機能はこれまで不明となっていた。

今回、同研究グループは、マロリー小体の主成分であるタンパク質p62/SQSTM1が、転写因子NRF2を分解へと導くタンパク質KEAP1と結合し、恒常的にNRF2を活性化する仕組みがあること、NRF2の活性化が肝細胞がんの増殖および抗がん剤耐性を引き起こすことを見出した。さらに、p62/SQSTM1によるNRF2活性化を防ぐ新規化合物K67を同定。K67が、肝細胞がん細胞の増殖を抑制するとともに、既存の抗がん剤の薬効を高めることを確認している。

同研究グループは現在、臨床応用を目指し、K67の薬効を高めるK67誘導体の開発、NRF2自体を標的にした薬剤開発を進めているという。

NRF2の活性化が肝細胞がんの増殖および抗がん剤耐性を引き起こす。K67は、NRF2活性化を防ぐことで、胞がん細胞の増殖を抑制するとともに既存の抗がん剤の薬効を高める