中国最大手の半導体ファウンドリであるSemiconductor Manufacturing International Corporation(SMIC:中芯国際集成電路製造)が、イタリアの半導体ファウンドリLFoundryの株式の70%を取得することで、LFoundryの親会社である独LFoundry Europeと伊Marsica Innovationと6月24日(現地時間)に調印したと発表した。取得額は4,900万ユーロ(約55億6,500万円)で、取得後の出資比率はSMIC70%, 親会社2社がそれぞれ15%ずつとなる。

SMICによると、「今回の買収は、中国本土のファウンドリにとって始めての海外半導体メーカー買収であり、この買収により、海外への拡大を図ることができるようになり、真の国際化に向けた大きな一歩となる。今後、SMICは、LFoundryがいままで得意としてきた自動車向け半導体市場に公式に参入することになる」とコメントしているほか、「半導体産業はグローバルな規模の産業であり、中国本土の半導体ファウンドリにとっても、海外に生産拠点を持つことが、ビジネスとしての成功に向けた先例となる。一方のLFoundryにとっても、急成長する巨大市場(中国)へアクセスするチャンスとなる。今後、両社は一丸となってユーロおよびアジア市場の開拓を進めていく」と、欧州およびアジア地域での存在感を高める取り組みを行っていくとしている。

SMICの2015年の売り上げ規模は22億4000万ドルで、直近となる2016年第1四半期にも前年同期比24.4%成長と、中国の半導体投資ブームの波に乗り急成長している。

SMICの生産能力(月産)は、200mmウェハが16万2000枚、300mmウェハが6万2500枚で、200mmウェハ換算では30万2600枚となる。またLFoundryの生産能力は、200mmウェハで4万枚であり、この買収により、SMICの生産能力は13%増加することになる。なお、LFoundryのイタリア本社工場は、もともとの米Texas Instruments(TI)が1988年に建設したDRAM量産工場であったが、その後のTIはDRAMビジネスを米Micron Technologyへ譲渡しており、それにともない2008年にMicreonの所有となり、2013年にLFoundryが買収し、本社・製造本拠地としていた。

SMICは、RF、コネクティビティ、電源管理、CMOSイメージセンサ、組み込みメモリ、MEMSはじめ幅広い製造技術を所有しているが、いずれも主に通信やコンシューマエレクトロニクス向けの用途である。これに対して、LFoundryは、車載、セキュリティ、産業向けの用途に強く、CMOSイメージセンサ、スマートパワー、タッチディスプレイ・ドライバIC、組み込みメモリ、などが主な製品群であり、互いに相補関係にある。そのため、今回の買収により、シナジー効果が発揮され、さらなる躍進につながることを両社は期待している。

なお、中国Beijing Jianguang Asset Managementが主導する金融投資家コンソーシアムが、6月半ばに、オランダNXPのスタンダード・プロダクト事業部門の買収を発表しており、今後も中国勢の海外半導体事業買収が続きそうだ。