「サッポロ生ビール黒ラベル」や「ヱビスビール」といった老舗人気ブランドのビールをはじめ、発泡酒、洋酒、清涼飲料水などを展開するサッポロビール。ブランドイメージが商品の売上に直結するビジネスということもあり、同社は伝統的に消費者との接点づくりに注力してきた。そうした文化を持つだけに、ソーシャルメディアの活用にも積極的で、他社に先駆けてFacebookページを開設するなどソーシャルメディア・マーケティングを実践してきている。同社のFacebookページは20万以上の「いいね!」を獲得、Twitterの公式アカウントのフォロワー数も2万を超えている。

そんな同社は2013年9月、クラウド型ソーシャルメディア管理アプリケーション「Oracle Social Relationship Management(以下、SRM)」を国内企業としては最初に導入、現在はFacebook、Twitter、Google+の3チャネルをSRMで管理・運用している。

国内企業ではいち早くソーシャルメディアを本格活用

サッポロビール デジタルマーケティング室 森勇一氏

デジタルマーケティング室に所属している森勇一氏は言う。「複数のソーシャルメディア・チャネルをSRMで統合的に管理することで、ファンの属性に応じた内容を、最適なチャネルに投稿することが可能になっています」

投稿は各チャネル同時に行っており、平日は毎日必ず1回投稿、2回以上投稿が行われる日もある。投稿の時間帯は、やはり仕事が終わって飲みに繰り出したり、家でじっくり飲みだしたりする夕方が多いという。この投稿時間も、SRMによって最も反応がよい時間を割り出している。特に反応がよいのが水曜日と金曜日だ。金曜日については言わずもがなだが、水曜日は企業の"ノー残業デー"が影響していると見られる。また、意外なのは日曜日の夜の反応がいいことだ。

「1週間が始まろうとしている夜に、スマートフォンを片手に友人たちの投稿を見ながら、仕事で役に立つ情報を収集している時間帯なのかもしれません」(森氏)

「SNSで当社とつながっている20万人という数字は、全体の顧客から見ればほんの一部かもしれません。しかし、一部ではあってもお客さまのリアルな声というのはものすごく貴重だと考えています」と、森氏は強調する。

ファンとなっている顧客が投稿に対してどのような反応を示しているのかを分析し、リアルタイムに把握。そうした情報をもとに次のキャンペーンを立案し、キャンペーン展開後の効果を顧客の反応から検証、次の投稿に生かす──こうしたソーシャルメディアによるマーケティングの一連のサイクルをすべてSRMを使って回している。顧客の反応も、世代別や地域別など属性に応じた分析が可能となっている。

例えば、Facebookではビールの話題が、また、Twitterではバカルディの話題が人気がある。これは、FacebookのユーザーのほうがTwitterのユーザーよりも年齢層が関係あるそうだ。もっとも、いずれも、同社の製品写真とともに投稿をしてくれるなど、"熱い”ファンが多いという。

「ペルソナと呼ぶほどではないかもしれませんが、その気になれば、ペルソナを作ることができるほどのデータ量には達しているのではないでしょうか」(森氏)

"ビールとまぐろ"の関係性を発見!?

サッポロビールでは、以前はソーシャルメディアの管理に別のツールを用いていた。しかし、ソーシャルメディアが急速に拡大するなか、企業と顧客とのコミュニケーションのあり方が今後大きく変わっていくと判断。そうした時代の到来に備え、いち早くソーシャルメディア活用の経験値を獲得することで、競合他社とは違った切り口で顧客に価値を提供し、最終的に競争力の向上へとつなげようと、日本初のSRM導入に踏み切ったのである。

森氏は、「実験的な試みではありましたが、やってみて効果がなければやめてしまえばいいと、トライしてみることに重きを置きました。ソーシャルメディアによるマーケティング活動の一連のサイクルが、SRMであればオールインワンで行える点も魅力的でした」

IT部門を通さず、マーケティング部門単独で導入から運用開始まで進めた。オラクルによる勉強会も開かれ、森氏含めて3人のサッポロビールのWeb担当者は、キャンペーンの作成や管理者の設定、投稿など、主要な機能の使い方について6日間集中して学んだ。現在も定例会が開催されており、重要な新機能に関するレクチャーを受けているという。

「テスト開始後2~3カ月ほどで、投稿やキャンペーンの機能は使いこなせるようになりました」と森氏。

昨年に、リスニングの機能を追加導入し、ソーシャルメディア内の会話から自社商品に関する新たな関係性の発見などに活用している。例えば、サッポロビールの商品について「まぐろ」の話題と一緒に会話されているケースが多いことが判明すれば、まぐろと一緒に商品が写った画像を投稿して訴求力を高めるなどの施策を実施しているのである。

「通常のツールのリスニング機能は、どんな会話がされているかを分析するだけですが、SRMのリスニング機能はかなり深掘りできることで、戦略的に使えると実感しています。新たな関係性を探し出す力が優れているので、先へ先へと見ながら戦略的に投稿し、さらにその反応を見ていけるのは心強いですね」と、森氏は評価する。

今後サッポロビールでは、マスメディアや店頭POP、それにソーシャルメディアなど、それぞれのメディアで個々に顧客とのコミュニケーションも進めるが、顧客の興味や関心に基づいてメディア横断的にコンテンツを提供し、より多くのファンを生み出していけるような仕組みづくりを手がけていく構えだ。そして、ソーシャルメディアから得られた知見を社内のさまざまな部門へとフィードバックできるようにもしていくという。

「そこまでできなければ、ソーシャルメディアにコストをかける意味がないと思っているぐらいです」──森氏はこう力強く語った。