前回は、ベンダー企業からユーザー企業へ、人材が流動的に動くことが企業の活性化につながるという話だった。今回は小さいながらも戦略的にITを活用している企業を紹介。そこから、中小企業における戦略的ITの活用方法について意見が交わされた。

過去の記事はこちら
【座談会その1】情報システム部門が持つふたつの顔、コストセンターとプロフィットセンター
【座談会その2】ベンダー企業からユーザー企業へ、CIOの登場がビジネスを活性化する

対談者

ブリッジ・リサーチ&コンサルティング合同会社 代表社員
阿部 満氏(写真真ん中)

サイボウズ株式会社 ビジネスマーケティング本部 サイボウズ Office
プロダクトマネージャー 栗山 圭太氏(写真左)

サイボウズ株式会社 ビジネスマーケティング本部 ダイレクトマーケティング部
マーケティングディレクター 佐藤 学氏(写真右)

佐藤氏:日本の場合、情報システム部の仕事は、例えば経理や製造のシステムのように、現場の業務をスムーズにすること、と考えられがちです。ですが、海外の場合は、経営の観点から、今、何をすべきかを決めていきます。おそらく、近い将来は日本の情報システム部門もこうなっていくのではないでしょうか?

阿部氏:これは、私の持論ですが、現代の経営には、人、物、金、そして情報、この4つが重要です。つまり情報システムが経営の観点から考えられるのは、ある意味で当然のことなのです。 現在のビジネスにおいてITは非常に重要な位置を占めています。日本には、もう少し実力が出せれば、一気に上場までジャンプアップできる可能性を秘めた中小企業が沢山あります。そして、もう一歩で立ち止まっている企業を見ると、やはりITを戦略的に利用できていないケースが多いのです。サイボウズを入れたけど、入れただけで使えてない、というように。 逆に年商1億以下であっても、ITを戦略的に利用していて、成長を期待させてくれる企業も沢山あります。

栗山氏:私の知っているお客さんの中に、まさにそのような会社があります。そこは、6-7ユーザーの小さな会社なのですが、「今は、ホワイトボードでも十分だけど、大きくなった時には絶対に必要になるから、今のうちに仕組みをしっかりしておきたい」という理由でスケジューラーなどを導入されているんです。ワークフローでも、交通費の決済でもいい加減にしないように。将来、50人100人となった時を見据えてシステムを導入する、そんな方々が最近は増えてきています。

阿部氏:大きくなることを見据えて、しっかりとした仕組みと企業文化を作っておこうと、そう考えているのでしょう。そのように先を見据えてITを戦略性に利用している企業は、今後伸びる可能性は大いにあります。

生まれ変わっても情報システムになりたい、実は、それが問題?

栗山氏:実は、今回のアンケートでちょっと気になっている部分があります。 「生まれ変わっても情報システム部門で仕事したいか」という問いについてですが、個人的には、情報システム部って結構大変なイメージがあって、Noって答える人が多いのでは?と予想していました。しかし、逆にYesが過半数(63.9%)なんですよね。勿論、これはこれで良い事だとは思いますが、その一方で、単に自分が好きなシステムを作っていられるから、そう感じているだけなのではないかとも思ってしまうんです。もしそうであれば、あまり企業としての発展は見込めないのでは、と。

阿部氏:多くの企業にとって、情報システム部門はコストセンターだという見方をされています。世間で言われる、コスト削減部門として考えられているので、会社の中でも弱い立場なんです。 そこで生き残っていこうと考えた場合、後ろ向きな手段として、自分にしか扱えないようなシステムを作って、それで会社の中の自分の立場を確保する。実際、そんなケースもあります。でも、それでは会社自体が発展しません。結果的には、自分の首を絞める事になってしまいます。やはり、立場を確保するのなら、前向きな手段でやらないとだめでしょう。

栗山氏:アンケートによると、業務改善に前向きなコメントが多数見受けられます。私達が会う方々は、かなり前向きな意識が高いようです。まあ、グループウェアの導入を検討している時点で、ある意味、意識が高くて当然ではあるのですが、それでも実際にやろうとすると、なかなか上手く行かないのが現実です。この原因はどこにあるのでしょう?

阿部氏:業務改善を行う場合、どうしても組織の壁があります。情報は、部門内であれば比較的まとまりやすいのですが、それが部門間にまたがると急に複雑になります。 業務改善を行おうとすると、例えば製造部門や経理部門、営業部門それぞれから、いろいろな要求が上がってきます。それを一つ一つつぶしていこうとすると、大変な事になります。とても情報システム部門だけでできるものではありません。もしかすると、システムの問題ではなく、業務フロー全体を見直す必要がある場合もあります。業務改善をやるのであれば、それは経営側が旗を振って、会社全体でやらなければなりません。

佐藤氏:情報システム部門は、通常業務だけでも結構忙しいので、そこに業務改善の仕事が加わっても手が回らずに後回しになってしまうケースが多い。他部署のトラブル対応で、丸一日掛かる場合もありますから、そこはある程度、会社として動いてもらわないと、なかなか前には進まないでしょう。

情シス座談会その4:「情報システム部が変われば会社は成長する。そして情報システム部が変わるために必要なもの、それは」はこちら!