大阪府教育委員会と日本マイクロソフトは3月27日、昨年9月から行っていた遠隔授業サポートシステムの検証を終え、府立高校全体に対して本格提供することを決定したと発表した。

遠隔授業サポートシステムの会見の様子。会見でも同システムが使われ、大阪と日本マイクロソフト本社(品川)、銀座の3拠点をつないで行われた

遠隔授業サポートシステムは、日本マイクロソフトが提供する教育機関向けクラウドサービス「Microsoft Office 365 Education」(以下、Office 365 Education)を活用して、自宅や病院から学校の授業に参加できるシステム。病気やけがなどで長期にわたり登校が困難な府立高校の生徒が対象とされている。

大阪府教育委員会では、療養中の生徒に対して非常勤講師を派遣して学習を支援する新規事業を平成24年度に開始。この事業を知った日本マイクロソフトからOffice 365 Education活用の提案を受け、検証作業を進めてきた。

大阪府教育委員会 教育長 中西正人氏は、Office 365 Educationの大きな利点として初期/運用コストの低さを挙げる。「サーバなどを新たに導入する必要がないうえ、校内にある既存のPCやカメラ、マイクがそのまま使える。新たな費用負担はほとんどなかった」と説明した。

加えて、当初は想定していなかった導入効果として、「(一般的なWebラーニングシステムとは異なり)授業をリアルタイムに中継しているため、遠隔授業を受ける生徒はクラスの様子や学習の進み具合がわかり、安心できる。そのうえ、休み時間や放課後にほかの生徒とコミュニケーションできるため、療養中の生徒が勇気づけられていた」といったエピソードも明かした。

日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター統括本部 文教本部長の中川哲氏は、Office 365 Educationの利点として、「クラウドサービスなので、サーバの管理者が不要という点は大きい。ITに詳しい人がいなくてもシステムを利用できる」とコメント。続けて、「今回の遠隔授業サポートシステムは、Office 365 Educationの中でもLync Onlineという機能を使って実現しているが、Lync OnlineはWeb会議だけでなく、在籍状況確認やインスタントメッセージなどの機能もあり、コミュニケーションしやすい環境を提供できる」と説明した。

試験導入の様子

また、大阪府教育委員会 委員長を務める陰山英男氏は、「試験導入を決めてから利用を開始するまでが非常に速かった。授業を録画しておけば体調不良で参加できなかった生徒が後で学べるようにもなる。ITの進化は、時間、空間を超える術をもたらし、教育の場に学習の翼を広げてくれている」とコメントした。

なお、Office 365 Educationは、基本機能を提供する「プランA2」が教育機関に限り無償で利用できる。加えて、日本マイクロソフトでは、今回の試験導入を基に、「遠隔授業サポートシステム活用マニュアル」も作成しており、同社Webサイトにて公開している。