「TRIP→プロジェクト」の灯りのもとで

六本木ヒルズアリーナに設置された"灯台"は、「TRIP→今日が明日になるのを目撃せよ」というイベントのテーマを照らす道しるべ、というコンセプトで作られたもの。最上部に赤々と燃えるのは、東日本大震災の津波による塩害で立ち枯れた杉を材料にした炭。日比野やアートナイトスタッフの手によって、現地で杉を切り、炭焼きをするところから制作が行われた。

アートは時代を映すものであり、「3.11はアート界にとっても忘れてはいけない日」だと日比野氏は語る

夜通し火が灯る灯台のもとで、トークイベントやパフォーマンスがオールナイトで披露された。ときおり、パンという炭がはぜる音とともに、ガラスの内側を火の粉が舞い落ちる。消防法をクリアするために行き着いた炭火という手段が、静かに、しかし絶えることなく、追悼と復興を考え続ける道しるべを体現するものになった。

六本木ヒルズ各所に作品を展示

また、六本木ヒルズの各所に、さまざまなインスタレーションや体験型作品が展示された。設置場所や参加者が作品の一部となることで、アーティストの意図がより際立つものとなっている。

村上慧「他人のトンネル」

五十嵐靖晃「そらあみ―六本木―」

人混みの中ですれ違う全ての他人は、一人の人間として一日を生きている。日常の六本木では感じることのない、そんな一人の"他人"とすれ違うことを体感する作品だ

人を繋ぎ、記憶を繋ぐというコンセプトで、過去に三宅島、浅草などでも制作が行われた、参加者が"編む"作品。六本木ヒルズの高い吹き抜けに吊るされた網の向こうに、どんな風景が見えるのだろうか

FUNEプロジェクト「六本木造船所」

「船頭が先導」

段ボールを材料にした船を参加者が造る「造船所」が出現。何を載せるのか、どこへ行くのか。参加者の様々な思いがひとつの形になる過程そのものが、作品のメッセージを伝える

この企画ではイベントオリジナルの提灯が配られ、多くの人がLEDの灯りを手に夜の街を歩いた。陽が昇れば役目を終えるが、同時にこのイベントで唯一参加者の手元に残る"灯りの記憶"となる