Webデザイナと開発者の祭典

Web系のデザイナや開発者向けの国内イベント『ReMIX Tokyo 09』が16日、東京ミッドタウン(東京・六本木)で開催された。このイベントは、米Microsoftが主催しているイベント「MIX」をベースとする、MicrosoftのWeb関連技術、および製品に関連したカンファレンスである。今年は、先日米国で発表された「Silfverlight 3」や、リリースを控えている「Expression Studio 3」「Windows Azure」を中心としたクラウド関連技術などが中心に語られた。

Webデザイナ/開発者向けイベント「ReMIX Tokyo 09」

オープニングのキーノートでは、最初に.NET Framework関連技術の開発チームを統括しているスコット・ガスリー氏が今日のソフトウェア開発やWebにおけるUX(ユーザーエクルペリエンス)デザインの重要性を訴え、世界的に有名なデザインディレクターの川崎和男氏をステージに招いた。

マイクロソフト デベロッパー プラットフォーム コーポレート バイスプレジデント スコット・ガスリー氏

川崎和男氏が語る「コンピュータが消える日」

川崎氏は、自分はMicrosoftが嫌いなわけではなく、Windowsを使っているとしながらも、「コンピュータが消える日」というMicrosoftにとっては心中穏やかではいられないだろうテーマを掲げた。やがて無線通信とWebの融合によってデバイスがOSの呪縛から解放され、新しいコンピュータシステム、新しいデバイスに身を委ねることになるだろうと語る。その時、机の上にディスプレイとキーボードがあるという古典的スタイルは、やがて消えると同氏は言う。

川崎和男氏。大阪大学大学院コミニュケーションデザイン・センター教授などを務め、多方面で活躍している

川崎氏の「コンピュータが消える」とは、本当にコンピュータやOSが無くなってしまうと言っているわけではない。コンピュータの存在を意識することがなくなるという意味である。今、我々はコンピュータの存在を意識して利用している。ソフトウェアの操作にはキーボードやマウスといった入力デバイスを必要とするため、それを使える場所に人が固定される。そして、アプリケーションのインストール、データのバックアップや同期、セキュリティなど、自分のコンピュータを管理しなければらない。

筆者なりの解釈であるが、同氏の構想は今よりもネットワークが発達した近い将来ではWebがプラットフォームとなり、デバイスやソフトウェアもPC中心ではなくなり、新しくWebに最適化された形でデザインされるというものだろう。ソフトウェアを使うために机の前に拘束されることがなくなり、重いノートPCを持ち歩くこともなくなる。大きなハードウェアはクラウドの向こう側で運用され、消費者は小さく軽量なデバイスからサービスを利用する形になる。コンピュータとの対話にはキーボードやマウスに代わって、音声やジェスチャーが使えるようにもなるだろう。

ソフトウェアも変化する。アプリケーションもデータもWebの向こう側に配置することで、利用者はコンピュータの管理から解放される。デバイスや場所に依存することなく、どこからでも自分専用のアプリケーションやデータにアクセスできるようになる。Webさえ利用できればコンピュータのOSが何であるかは重要ではなくなり、OSの競合から解放されるというわけだ。

川崎氏はウェアラブルコンピュータやユビキタスという言葉を使わなかったが、新しいデバイスの例に眼鏡やどこでも使えるような投影型キーボード(i.Tech社のバーチャルキーボードのようなもの?)を挙げていたので、構想としてはユビキタス(コンピュータ・ネットワーク)+拡張現実+クラウドのようなものではないだろうかと想像する。アニメ『電脳コイル』の世界が近いかもしれない。

川崎氏はOSとWi-Fiが融合する時、Web-Social Infrastructureが構築されるとも語った。今、手元にある多くのデジタル資産がWebに移行し、やがてOSも通信もWebに集約されるというのだ。この発想は、MicrosoftよりもGoogleに近いものだろう。Microsoftは、これまでWebやクラウドの重要性を認識しつつも、一貫してデスクトップ・ソフトウェアも必要であると訴えている。Software as a Serviceではなく、Software+Serviceである。

Microsoftの主張には説得力がある。どちらが良い悪いではなく、技術的にどちらにも長所と短所があり、使い分ける必要があると言っているのだ。HTTPはコンテンツの要求と応答を行うプロトコルとして設計されているため、アプリケーションが通信基盤とするには非効率的な部分が多い。Webは遅く不安定であり、この問題は簡単に解決できるものではない。とはいえ、Microsoftも対策を怠っているわけではない。川崎氏の構想に一番近いのは、おそらくMicrosoft Live Meshだろう。Live Meshの詳細はこちらの記事をご覧意だたきたい。

最後に川崎氏は、こうしたWeb中心の新しいコンピューティングの時代が到来することに対し、「Microsoftが困っているのなら、私がアドバイスするのが最適である」として講演を締めくくった。だが、今も10年前のVisual Basic 6で作られたアプリケーションが保守されている現実を鑑みれば「コンピュータが消える日」まで、Microsoftにはしばらくの猶予がありそうだ。