コクヨは2008年11月、東京ショールーム内にCO2削減を目指す実験オフィス「エコライブオフィス品川」(総面積約2,000平方メートル)を開設した。コクヨグループの広報を担当しているコクヨビジネスサービス広報部東京広報グループの海老澤秀幸氏は、「同社の環境配慮への取り組みの一環として、同オフィスを設置した」と話す。

近年、CO2の排出が問題視されており、各所でCO2削減のための取り組みが行われている。海老澤氏によると、意外なことに、物流や工場ではCO2の削減が進んでいるが、オフィスや家庭ではCO2の排出が増加しているという。こうした背景を踏まえ、同社として、どうすれば企業がCO2を削減できるのかを、エコライブオフィスによって具体的に示していこうとなったそうだ。

海老澤氏は「単に設備から省エネを考えれば、建設会社のほうが専門的。そこで、オフィス空間の構築を生業とするコクヨとして、独自のコンセプトに基づく省エネのための施設を作りたかった」と話す。同社は、同オフィスの目的として、CO2削減と並んで、「社員の生産性・創造性の向上」を掲げている。それを実現するため、同オフィスでは、設備によってオフィスの消費電力を減らすことに加えて、社員の意識を変革する取り組みも行われている。

その取り組みの一環として、同オフィスでは社員に対し時間の有効活用を勧めている。例えば、同オフィスには19:00に一斉消灯するという決まりがある。とはいっても、19:00以降に働くことは可能だそうだが、「19:00に消灯」というルールを作っておくことで、社員の時間に対する意識が高まってきたという。

同オフィスは「オフィス」、「スタジオ」、「ガーデン」の3つのエリアから構成されているが、ガーデンはその名のとおり、屋外のスペースである。このガーデンでは屋内と同様に働けるよう、デスクには電源が設置され、無線LANにアクセスできるようになっている。写真には映っていないが、取材時にも社員の方々がPCを使いながらガーデンで仕事をされていた。

同社では年90日のガーデンワークを推奨しており、「夏の暑さ、冬の寒さなど、季節を感じながら働くことで、社員に環境を意識してほしい」(海老澤氏)という狙いがあるそうだ。冬の防寒対策としてダウンジャケット、ひざ掛けなどが用意されており、同社の本気さがうかがえる。

左から2つの写真はガーデンの様子。観葉植物が植えられていたり、噴水があったりと公園のような空間だ。ガーデンの入口には防寒対策が用意されている(写真右)

また、オフィスエリアの7割の座席がフリーアドレスなのだが、時間に対する意識を高めるべく、1つの席の利用時間は最大2時間までとなっている。加えて、親しい社員が固定の場所に固まるのを防ぐために、フリーアドレスの座席は席決めシステム「DARTS」で決めなくてはならない。DARTSは言ってみればくじ引きのようなシステムで、どの席になるかはシステムのみぞ知るというわけだ。

写真左は席決めシステム「DARTS」の操作画面。座席を所有する時間を入力して席を決めてもらう。黄色いイスのエリアがフリーアドレスの座席で、黄緑のイスのエリアが固定の座席となっている(写真右)

同オフィスでは140名の社員が実際に働いている。その内訳は、オフィス家具を作成している「コクヨファニチャー」、研究開発・新規事業を担当している「RDIセンター」、製品を販売している「コクヨオフィスシステム」の3社の社員だという。グループ会社の人間とはいえ、異なる会社の人間が働いているというわけだ。こうした仕組みを活用すれば、自然と社員の交流が深まっていくに違いない。

そのほか、エコ活動をしたらポイントを積み上げていく自己申告制の「エコポイント」という制度があり、毎月表彰が行われている。例えば、エレベーターを使わずに、階段を使ったら1ポイントといった具合だ。この活動はライブオオフィスで働く人たちに限らず、大阪本社でもエレベーターの利用を極力控えようという動きが始まり、今では3台のエレベーターのうち1台は稼働を停止しているそうだ。