映像や音楽、脚本などの権利者団体で構成する「デジタル私的録画問題に関する権利者会議」は29日、東京都内で記者会見を実施。文化庁が提案したHDDレコーダなどへの補償金課金案に反対するメーカー側の姿勢について、「これまでの議論のちゃぶ台返しをやったようなものだ」と強く批判した。

私的録音録画補償金を巡るメーカー側の姿勢を批判した「デジタル私的録画問題に関する権利者会議」の記者会見

文化庁で議論されているのは、私的使用を目的とした個人または家庭内での著作物の複製について、一定の割合で録音録画機器のメーカーから補償金を徴収し、著作権権利者への利益還元を図る「私的録音録画補償金」の今後のあり方。

iPodなどの携帯音楽プレイヤーやHDDレコーダ、次世代DVD、PCといった現行の補償金制度外の機器についても対象に含めるよう求める権利者側と、著作権保護技術の進歩を理由に同制度の縮小を求めるメーカー側が約2年間にわたり議論をしてきた。

これまでの議論を踏まえ、文化庁は今月8日、音楽CDからの録音と無料デジタル放送からの録画を前提とし、iPodなどの音楽プレイヤーとHDDレコーダーを補償金の課金対象とすることを提案。だが、メーカー側はこの案に激しく反発。今回権利者側が記者会見を開いたのは、このメーカー側の姿勢について異議を申し立てるのが目的だった。

日本芸能実演家団体協議会の椎名和夫氏は「メーカーのやっていることはちゃぶ台返し」と述べた

記者会見では、日本芸能実演家団体協議会の椎名和夫氏が「メーカーのやっていることはちゃぶ台返し」と批判。「PCを補償金の対象外にすることに同意するなど、権利者側は最大限の譲歩をしている」とした上で、「メーカー側にも我々の意見に賛同している人がいると聞く。原理主義の一部のメーカーが多数派工作をした結果、合意形成が難しくなった」とメーカー側の足並みの乱れを指摘した。

また、「メーカー側には、著作物の複製ができる機器を販売することによって、権利者がコンテンツを二次利用することで得られる利益を喪失させているという認識が足りない」とし、私的録音録画補償金が必要な理由を説明。

さらに、「今日一番言いたいことは以下の事」と断った上で、「現在機器に上乗せされている補償金は、建前は消費者が払っていることになっているが、現実はメーカーが払っている。もし、補償金がなくなれば、契約と保護技術により消費者に個別に課金されるわけで、メーカーは一切の負担を免除されてしまう」と述べた。

29日に実施延期が確定した「ダビング10」に関しては、「権利者はダビング10を人質にとっているわけではない。ダビング10が実施されないのは、メーカーが一貫性のない行動をとるからだ」と訴えた。

日本音楽作家団体協議会の小六礼次郎氏も、「ここまで議論を重ねてきたのに、なぜこうなってしまうのか。落胆、困惑もしているが、むしろあきれている」と述べ、メーカー側を強く批判した。