7月5日、2014年の冬季五輪の開催地がロシアのソチに決定した。歓喜のロシアの一方で、くやしさをかみしめることとなったのが、韓国の平昌だ。平昌もソチと同時に立候補していたものの、国際オリンピック委員会(IOC)総会の最終的な投票で敗れてしまったのだ。2010年冬季五輪に続く誘致失敗だった。

韓国では開催地決定前から、平昌への五輪誘致に大変な盛り上がりを見せていた。その熱気はブロードバンド大国らしく、インターネット上でも所々で見られていた。2014年の冬季五輪にまつわる、韓国の盛り上がりぶりを振り返る。

2月からインターネット署名運動

検索ポータルの「Daum」内にある「アゴラ」は、あらゆる社会問題を討論したり、署名運動したりすることができるスペースだ。

ここへ2月15日に登場した署名運動が「みんなで一緒に平昌冬季五輪を誘致しましょう!!」というテーマだ。アゴラで署名運動を展開する場合は通常「署名目標」といって、「これだけ集まって欲しい」という目標値を決めるのだが、ここでの署名目標は1万件。これに対し集まった署名は、投票日の前日まででも計1万184件に達し、目標値を上回るほどの大きな反響を得た。

このテーマを立ちあげたネティズンは、「冬季五輪誘致という重要な岐路に立っているのにも関わらず、それに対する熱気が全国民に達していないような気がして」という理由から、このテーマを立ち上げ、関心を喚起しようとしたのだという。

その熱意が伝わってのこの結果。多くのテーマが連日掲載され、最悪の場合は誰からの支持も注目も得られないこともあるアゴラにおいて、大変多くの同意を得られ健闘した方だといえる。

7月5日時点における「みんなで一緒に平昌冬季五輪を誘致しましょう!!」の投票数。10,184を記録しているのが分かる

応援も慰めも動画で

最近の韓国で人気の動画投稿サイトも平昌で盛り上がった。ユーザー投稿による動画共有サイトであるPandora.TVには7月6日時点で、70を超える平昌関連の動画と、これに対する1,000以上のコメントが掲載されているという。

とくに注目度が高かったのは、投票日の直前に同サイトが緊急入手し独占公開した、平昌のプレゼンテーション動画だ。

この動画は平昌が機密としていたため、投票日直前になっても公開されなかったものである。そのうえ2007年カンヌ国際映画祭への出品作品を制作したイ・チャンドン監督の監修ということで、まだ見ぬ映像にネティズンからの関心は高まっていた。

現在のところ、このプレゼンテーション映像には500を超える応援や、慰めのコメントが書き込まれている。

2010年の挫折から立ち上がり、2014年への希望を描いたプレゼンテーション映像「New Dresams @ Pyeong Chang」

また冬季五輪のプレゼンテーションの際、アナウンサーのアン・ジョンヒョン氏は、自信にあふれた英語アナウンスで高い評価を受け、アン氏の姿のみを特集的に扱った編集動画が掲載されるなど、注目度を大きく上げた。

投票日の結果発表の際は、アン氏が涙を流して悔しがる姿を撮った写真を一目見ようと、ネティズンが検索ポータルに殺到し、人気検索語ランキングのトップ10にも登場したという。これも今回公開された動画の威力といえよう。

一方、Pandora.TVには、ソチのプレゼンテーション動画も掲載されている。SF映画の巨匠、スディーブン・スピルバーグ氏が監修したというこの動画もまた、大きな反響を呼んでいる。

さらにPandora.TVには、慰めの動画も登場した。「平昌愛歌-崩れた冬季五輪の夢」という動画では、五輪誘致のため活動した人たちが、結果を知って落胆したり悲しがっている様子が映し出されたうえで、「泣かないで」「がんばって」といった励ましのメッセージを送るという、感動的な内容となっている。

応援も慰めもインターネットの動画で行うのは、大変韓国らしい手法だ。

プレゼンテーション映像に出演し、英語でのアナウンス力を高く評価されたアン・ジョンヒョンアナウンサー

誘致のために活動した人たちの失望する姿に「がんばって」という文字を重ねた「平昌愛歌-崩れた冬季五輪の夢」

3度目の正直はあるのか

このほか「2014平昌冬季オリンピック誘致委員会」公認の「公式応援団」として2003年に発足した「トンサモ(韓国語で"冬季五輪を愛する人たち"の省略語)」は、サイバー広報団として活動。冬季五輪の誘致活動について報告するニュースレターを発行して平昌への関心を喚起したほか、農協と提携し「トンサモカード」というクレジットカードまで発行した。

一方、2014平昌冬季オリンピック誘致委員会の公式サイトにある自由掲示板には、2006年から何百という応援メッセージが、5日以降には100以上の慰めメッセージが書き込まれている。

投票日が過ぎた今は敗北ムードの強い韓国だが、先のアゴラなどには2018年への意気込みを語る掲示文が早くも登場している。平昌は再々挑戦の意思を正式に発表してはいないが、可能性が全くないともいえない。3度目の正直に向け、平昌が再度立ち上がる日がまた来るかもしれない。