第5章 Windows 8.1の改良点/システム全般 - Windows 8.1で変更されたコントロールパネル

Windows OSを使いこなす上で重要になるのが各種設定だが、Windows 8.1でも以前と同じようにコントロールパネルが重要箇所であることに変わりはない。同OSは後述する「PC設定」の設定項目が充実しつつあるものの、やはりコントロールパネルから各種設定を行う場面が多いのは以前と同じ。しかし、コントロールパネルの各アプレットを逐一紹介するのも冗長になるので、Windows 8から変更されたアプレットのみをピックアップし、紹介する。

1つめは「インターネットオプション」。Internet Explorer 11を標準搭載することで、設定項目にも変更が加わり、<詳細設定>タブには、いくつか見慣れない項目が加わった。「HTTP設定」セクションへ新たに<SPDY/3の使用>が加わり、初期状態で有効になっている。これは第4章でも述べたようにInternet Explorer 11がSPDYに対応したことによる変更だろう。「インターナショナル」セクションでは、以前の<IDNサーバー名を送信する>が<イントラネットのURLにIDNサーバー名を送信する>に、<UTF-8のURLを送信する>も<URLパスをUTF-8として送信する>へ改称している。また、<イントラネットURLのUTF-8クエリ文字列を送信する><イントラネット以外のURLにIDNサーバー名を送信する><イントラネット以外のURLのUTF-8 クエリ文字列を送信する>と状況に応じて送信情報を制御する項目が加わった(図154)。

図154: Internet Explorer 11の仕様変更に伴い、設定項目内容が変化した「インターネットオプション」の<詳細設定>タブ

「セキュリティ」セクションでは、<TLS 1.1の使用>および<TLS 1.2の使用>、<拡張保護モードを有効にする>が初期状態で有効になり、<オンラインからの攻撃の緩和に役立てるため、メモリ保護機能を有効にする>が取り除かれた。メモリー保護機能に関しては無効にすることができなくなり、Do Not Track(DNT)は<常にDo Not Trackヘッダーを送信する>から<Internet ExplorerでアクセスしたサイトにDo Not Track要求を送信する>に改称されている。

「ブラウズ」セクションでは、<ショートカットの起動時にウィンドウを再使用する><ページレイアウトエラーから互換性表示で自動的に回復><選択時に[アクセラレータ]ボタンを表示する>が削除され、<ページフリップを有効にする>を<ページ予測によるページフリップを有効にする>に改称。そして<パフォーマンスを最適化するためにサイトとコンテンツをバックグラウンドで読み込む>が加わっている。最後の設定項目は「Internet Explorer 11 のプライバシーに関する声明」によると、ユーザーの参照頻度などを参照にコンテンツを先読みするプリロード機能と思われる。なお、デスクトップアプリ版Internet Explorer 10/11の設定項目を比較した表を作成したので、参考にしてほしい(図155~158)。

図155: 「HTTP 1.1設定」「アクセラレーターによるグラフィック」「インターナショナル」セクションにおけるInternet Explorer 10/11の相違点

図156: 「セキュリティ」セクションにおけるInternet Explorer 10/11の相違点

図157: 「ブラウズ」セクションにおけるInternet Explorer 10/11の相違点

図158: 「マルチメディア」「ユーザー補助」セクションにおけるInternet Explorer 10/11の相違点

第3章でも触れたとおりWindows 8.1のスタートボタン復活に伴い、「タスクバー」は「タスクバーとナビゲーション」に改称し、新たに<ナビゲーション>タブを設けている。「画面隅でのナビゲーション」セクションには、<右上隅をポイントしたときにチャームを表示する><左上隅をクリックしたときに、最近使ったアプリに切り替える><左下隅を右クリックするかWindowsキー+Xキーを押したときに表示されるメニューで、コマンドプロンプトをWindows PowerShellに置き換える>の3項目を用意し、モダンUIやクイックアクセスメニューの項目に関する動作変更が可能だ(図159)。

図159: 「タスクバーとナビゲーションのプロパティ」ダイアログには、モダンUIに関する設定項目を集めた<ナビゲーション>タブが加わった

「スタート画面」セクションでは、<サインイン時または画面上のすべてのアプリを終了したときに、スタート画面ではなくデスクトップに移動する><スタート画面にデスクトップの背景を表示する><Windowsロゴキーを押したときに、使用中のディスプレイにスタート画面を表示する><スタート画面への移動時にアプリビューを自動的に表示する><アプリビューからの検索時にアプリだけでなくすべての場所を検索する><アプリビューをカテゴリ順に並べ替えたときに、デスクトップアプリを先頭に表示する>と6項目を用意。文字どおりスタート画面の動作に関する設定変更を行うためのものだ。こちらも項目名に設定の意味が含まれているので詳細は割愛するが、いずれもWindows 8.1のデスクトップ環境を使うユーザーには有益なものばかりである。その一方、Windows 8の時点でこれらの設定項目が用意されていれば、これほどの混乱を招くことはなかっただろう。

「フォント」は機能の改良はないものの、新たに「游明朝」「游ゴシック」と言う2つのフォントが加わった。これらは有限会社字游工房がライセンスを持つ日本語書体だが、両者とものTrueTypeフォントであり、OpenTypeフォントではない。そのためDTPなどに利用するには同社が発売するフォントを購入した方が適切だ。どのような経緯で游ゴシックが採用されたか不明だが、日本語フォントに注力している姿勢は素直に評価したい。ただし、游ゴシックを初期状態で選択している箇所はないため、自身で設定する必要がある。なお、蛇足だが本稿で用いている表はすべて遊ゴシックを用いたので書体の参考にしてほしい(図160~161)。

図160: 「游ゴシック」は細字/太字/標準の3タイプが用意されている

図161: 「游明朝」も游ゴシックと同じく細字/太字/標準の3タイプ

Windows 8.1から新たに加わったアプレットとしては「ワークフォルダー」が目に付くはずだ。こちらはWindows Server 2012 R2の「ファイルサービスと記憶域サービス」が稼働している状態で、HTTPSベースのフォルダー同期を行うための機能である。最近各所で目にするBYOD(個人デバイスの業務使用)を前提に、会社のファイルサーバーと自身のBYODマシンを同期することで、作業効率を高めると言うものだ。なお、サーバーでリバースプロキシ機能「Webアプリケーションプロキシ」が稼働していれば、インターネット経由の同期も可能だ。いずれにせよ、Windows Server 2012 R2によるサーバー環境が必要となるため、通常使う場面は少ないだろう(図162)。

図162: Windows Server 2012 R2の「ファイルサービスと記憶域サービス」が稼働している環境で使用可能になる「ワークフォルダー」

最後に「プログラムと機能」から呼び出す「Windowsの機能」の相違点を紹介する。Windows 8.1プレビューと同じく「レガシーコンポーネント」と言うカテゴリが新設され、「DirectPlay」が加わっている。そもそもDirectPlayはDirectXを構成するコンポーネントの1つだが、DirectX 8以降は更新されておらず、レガシー(枯れた)に分類されたのだろう。

また、新たに加わった「SMB 1.0/CIFSファイル共有のサポート」は、SMB(Server Message Block)はWindows XP時代のファイルやプリンターの共有で使われてきたプロトコルに対応するためのコンポーネントである。既にWindows VistaはSMB 2.0を実装し、Windows 7やWindows Server 2008 R2でSMB 2.1を実装。Windows 8およびWindows Server 2012ではSMB 3.0に更新されているため、本来は不要なはずだが、Windows 8からアップデートインストールしたWindows 8.1マシンに関しては有効になっていた。これはWindows XPやLinuxのSamba(サンバ)を実装するNAS(ネットワークアタッチトストレージ)との互換性を維持するためのものだろう(図163)。

図163: 「レガシーコンポーネント」「SMB 1.0/CIFSファイル共有のサポート」が加わった「Windowsの機能」

なお、Windows 8まで用意されていた「Windows 7のファイルの回復」はWindows 8.1プレビュー同様取り除かれたが、GUI操作を行うための「%Windir% \ System32 \ sdclt.exe」は復活している。そのため、同コマンドを管理者権限で実行すれば、システムイメージの作成は可能だ(「ファイル履歴」のナビゲーションウィンドウにある<システムイメージバックアップ>からGUI操作による作成も可能)。復元時は「PC設定」の「保守と管理」→「回復」→<今すぐ再起動する>ボタンとクリック/タップし、詳細オプションから<イメージでシステムを回復>を選択すればよい。

もっとも「ファイル履歴」を有効にすると実行できないのはWindows 8.1でも同じだ。エラーコード「0x80070005」で検索すると、任意のデバイスにアクセスできない際に発せられるエラーのため、ファイル履歴機能が理由なのかは不明だが、あくまでも1度のバックアップを作成すると言う目的で利用するとよい(図164~165)。

図164: 「%Windir% \ System32 \ sdclt.exe」を実行すれば、システムイメージのバックアップは可能

図165: 「ファイル履歴」によるスケジュールを有効にしている環境では、エラーが発生した

ちなみに管理者権限で「%Windir% \ System32 \ Wbadmin.exe」を利用すれば、コマンドラインからシステムイメージを作成することも可能だ。例えばC&Dドライブの内容をEドライブに保存する場合は「wbadmin START BACKUP -backupTarget:E: -Include:C:,D: -allCritical -vssFull」と実行する。ただし、BIOS環境のコンピューターの場合は問題ないが、UEFI環境ではドライブ文字の誤取得が発生し、うまく実行できなかった。Windows 8以降はシステムのリフレッシュなど再インストールを極力抑える仕組みが組み込まれているが、以前のようにフルバックアップを常に作成したい方は、任意のバックアップツール導入を考慮すべきだろう(図166)。

図166: コマンドラインから「Wbadmin.exe」を使えば、システムイメージのバックアップは可能