税理士試験の難易度と合格率は?公認会計士や他の資格と比較やランキングも調査

税理士とは、納税のアドバイスや申告書を作成する税金のスペシャリストです。

専門性の高い職種であることから、税金に関する業務は税理士だけに認められており、さらに独占業務以外にも税務に付随する業務や、関連性の深いコンサルティング業務も行います。

国家資格である税理士の合格率は20%弱と一般的には難関資格です。

この記事では、税理士を目指している方に、試験難易度や年収について、他資格との比較もあわせてご紹介します。

本記事を読むことで、難易度に合わせた試験対策や、自身の将来像を明確にイメージできるでしょう。

税理士の試験対策は通信講座もおすすめです。

税理士の通信講座に関する詳細は以下の記事をご覧ください。

税理士におすすめの通信講座6選と失敗しない選び方の記事はこちら

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徳永浩光

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目次

税理士になるには?

税理士になるためには、3つの方法があります。

  • 税理士試験に合格し、2年以上の実務経験を積む
  • 税務署で23年以上勤務し、指定条件を満たす
  • 公認会計士または弁護士の資格を取得する

上記の中で一般的なのが「税理士試験に合格し、2年以上の実務経験を積む」方法で、税理士試験合格に加え、通算2年以上の租税または会計に関する事務のうち、所定の業務に従事した実務経験が必要です。

税理士試験に合格するためには、11科目中5科目に合格する必要があります。

科目は「必須科目・選択必須科目・選択科目」の3つに分かれており、科目ごとに難易度が異なるため、科目は慎重に選択しなければなりません。

ただし、簡単な科目から選ぶというよりは、資格取得後のキャリアプランを意識し、実務で役立つような科目を選択するのがおすすめです。

税理士試験の概要

税理士試験の合格基準点は、各科目とも満点の60パーセントです。

試験は複数の科目から構成されており、会計学に属する2科目および、税法に属する3科目の合計5科目に合格する必要があります。

ちなみに、会計学に属する科目は簿記論と財務諸表論で、どちらも必須科目です。

税法に属する科目は、所得税法・法人税法・相続税法・消費税法・酒税法・国税徴収法・住民税・事業税・固定資産税のうち、3科目を選択する必要があります。

ただし3科目は自由に選べるわけではなく、以下のルールがあります。

  • 所得税法または法人税法のいずれか1科目を必ず選択しなければならない
  • 消費税または酒税法のどちらか1科目しか選択できない
  • 住民税または事業税のどちらか1科目しか選択できない

税理士試験は3日間かけて実施されます。

消費税法と酒税法は1日目の3コマ目に、住民税と事業税は3日目の3コマ目に同時に実施されます。

よって、組み合わせられない科目を受けてしまうことはありません。

ただ、時間割は年度によって異なる場合があるため、国税庁のHPなどで随時確認しておきましょう。

受験資格

令和5年度の税理士試験(第73回)より、会計学に属する試験科目(簿記論・財務諸表論)については、受験資格の制限がなくなりました。

そのため誰でも受験が可能となります。

これまでは、大学3年次以上にならなければ税理士試験を受けられませんでした。

しかし、今後は高校生や大学1・2年生でも会計科目の受験が可能なため、大学在学中の5科目合格を実現しやすくなるでしょう。

一方で、税法に属する試験科目については、引き続き受験資格が設けられています。

受験資格は、学識・資格・職歴・認定の4つに分かれており、以下のいずれか1つに該当すれば受験資格が認められます。

学識
  • 大学、短大又は高等専門学校を卒業した者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
  • 大学3年次以上の学生で社会科学に属する科目を含め62単位以上を取得した者
  • 専修学校の専門課程(修業年限が2年以上かつ、課程の修了に必要な総授業時数が1,700時間以上に限る)を修了した者等で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
  • 司法試験に合格した者
  • 旧司法試験法の規定による司法試験の第二次試験又は旧司法試験の第二次試験に合格した者
  • 公認会計士試験短答式試験合格者(平成18年度以降の合格者に限る)
  • 公認会計士試験短答式試験全科目免除者
資格
  • 日本商工会議所主催簿記検定試験1級合格者
  • 公益社団法人全国経理教育協会主催簿記能力検定試験上級合格者(昭和58年度以降の合格者に限る)
  • 会計士補
  • 会計士補となる資格を有する者
職歴 以下の事務または業務に通算2年以上従事した者

  • 弁理士・司法書士・行政書士・社会保険労務士・不動産鑑定士の業務
  • 法人又は事業を営む個人の会計に関する事務
  • 税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助事務
  • 税務官公署における事務又はその他の官公署における国税若しくは地方税に関する事務
  • 行政機関における会計検査等に関する事務
  • 銀行等における貸付け等に関する事務
認定
  • 国税審議会より受験資格に関して個別認定を受けた者

(引用元:国税庁HP

各項目に細かな基準が設けられているため、自分がどれに該当するのかしっかり確認しておきましょう。

なお、受験には条件を満たしていることを証明する書類の提出が必要です。

学識による受験資格

主な学識の受験資格には「大学や専門学校において社会科学に属する科目を1科目以上履修した者」・「司法試験合格者」・「公認会計士試験の短答式試験合格者」などが挙げられます。

なお以下の場合は、大学3年次以上に在学中、または3年次以上で中途退学した方でも、税法に属する試験科目の受験資格(学識)が得られます。

  • 社会科学に属する科目を1科目以上履修し、かつ合計62単位以上を修得している

また、大学生が2つ目の条件で受験を考える場合には、「総単位数が62単位以上であること」・「法律学又は経済学が1科目以上含まれていること」を成績表で確認しておきましょう。

すでに大学を卒業している方は、「卒業証明書」と「課程証明書」を取り寄せた上で、これらの条件を満たしているかどうか確認してください。

資格による受験資格

資格による受験資格には、「日商簿記検定1級合格」または「全経簿記検定上級合格」があり、合格者は、商業簿記・会計学・工業簿記・企業会計に関する法規を理解し、経営管理や経営分析ができるレベルに値します。

合格率は10~15%程度で、合格に必要な勉強時間は約550時間、平均受験回数は4回程度といわれており、会計に関する資格の中でも難易度が高い試験です。

そのため、試験合格者は会計に関する一定以上の知識があるとみなされ、受験資格が与えられます。

職歴による受験資格

職歴による受験資格は、「受験資格として認められる職歴を証明すること」で取得可能です。

上記の業務は、いずれも税理士業務や試験科目との関連性が高いことから、税理士試験を受験するのにふさわしい経験を有していると証明されます。

税理士・弁護士・公認会計士業務の補助事務などがこれにあたり、通算2年以上の従事が必要です。

2年間における実務経験は、税理士登録の条件である「会計に関する事務(貸借対照表勘定及び損益計算書を設けて経理する事務)2年以上」にも当てはまります。

よって、試験合格後すぐに税理士登録ができるため、税理士補助として働きながら受験する方が多いのも納得です。

認定による受験資格

上記3つの「学識」「職歴」「資格」による受験資格に該当しない場合でも、国税審議会の個別認定を受けることによって受験資格が認められる場合があります。

具体的には以下の通りです。

  • 海外の大学を法律学又は経済学を履修した上で卒業した者について、日本の大学等の卒業者と同等であると認められる場合
  • 商工会・青色申告会における記帳指導事務に2年以上従事した者

なお、認定条件で税理士試験を申込む場合は、受験資格認定通知書のコピーを提出する必要があります。

受験資格の証明方法

税理士試験は、出願する際に受験資格を証明できる書類が必要です。

万が一、書類が不足していれば出願は受理されません。

学識や資格による受験資格は、成績証明書や卒業証明書・資格試験の合格証明書・登録証明書のコピーを提出してください。

成績証明書や卒業証明書は、卒業した学校で発行されます。

遠隔地に住む卒業生向けに郵送で発行してくれる学校もあります。

職務による受験資格は、指定様式の職務経歴書を作成し、該当する業務に携わっている会社の署名・捺印が必要です。

離職後でも問題ありませんが、前勤務先との関係が悪くて頼みづらいといったことがないよう注意しましょう。

個別認定の場合は、国税審議会から受験資格認定申請書を提出し、認定を受ける必要があります。

そして、認定後に発行される受験資格認定通知書のコピーを提出してください。

いずれの証明書類も準備に時間がかかる場合があります。

出願の締切日から逆算し、早めに準備するよう心がけましょう。

試験科目

税理士試験は、「会計2科目」「税法9科目」の合計11科目から、5つを選ぶ必要があります。

会計科目

  • 簿記論
  • 財務諸表論
  • 両科目必ず選択

税法科目

  • 法人税法
  • 所得税法
  • どちらか1科目を必ず選択
    ※2科目選択も可能
  • 相続税法
  • 消費税法または酒税法
  • 固定資産税
  • 国税徴収法
  • 住民税または事業税

※消費税法と酒税法のどちらか一方のみ選択可能
※住民税と事業税のどちらか一方のみ選択可能

  • いずれかを選択

(引用元:国税庁HP

5科目の内訳は、会計学に属する2科目と税法に属する3科目です。

会計学には「簿記論」と「財務諸表論」の2科目が含まれており、いずれも必須科目です。

税法科目については、全9科目(所得税法・法人税法・相続税法・消費税法または酒税法・国税徴収法・住民税または事業税・固定資産税)の中から3科目を選択します。

ただし、所得税法と法人税法はどちらか1科目を選択しなければなりません。

残りの2科目(所得税法と法人税法を両方選択した場合は1科目)を相続税法・消費税法または酒税法・国税徴収法・住民税または事業税・固定資産税の中から選択してください。

なお、税理士試験は「科目合格制」という特徴を持っています。

受験者は一度に5科目を受験する必要はなく、1科目ずつ受験してもよいことになっています。

つまり税理士試験は、複数年で合格することを想定している試験であるといえるでしょう。

1度合格した科目は生涯有効であるため、たとえ1年に1科目でも、いずれ5科目合格すれば資格取得が可能です。

決して簡単な試験ではありませんが、科目合格制度を利用し、選択科目を上手く選択することで、合格設計がしやすい試験といえます。

じっくり根気よく取り組めば、十分合格を目指せるでしょう。

試験日程

令和6年度(第74回)税理士試験の日程および、試験科目の出題範囲は下表のとおりです。

なお、令和5年度(第73回)税理士試験から、試験3日目の国税徴収法と固定資産税の試験開始時間が変更されています。

月日 時間 科目 出題範囲
8月6日(火) 9時から11時 簿記論 複式簿記の原理・その記帳・計算及び帳簿組織、商業簿記のほか工業簿記を含む。ただし、原価計算を除く。
12時30分から14時30分 財務諸表論 会計原理・企業会計原則・企業会計の諸基準・会社法中計算等に関する規定・会社計算規則(ただし、特定の事業を行う会社についての特例を除く。)・財務諸表等の用語・様式及び作成方法に関する規則、連結財務諸表の用語・様式及び作成方法に関する規則
15時30分から17時30分 消費税法または酒税法 当該科目に係る法令に関する事項のほか、租税特別措置法、国税通則法など当該科目に関連する他の法令に定める関係事項を含む。
8月7日(水) 9時から11時 消費税法または酒税法
12時から14時 相続税法
15時から17時 所得税法
8月8日(木) 9時から11時 国税徴収法
12時から14時 固定資産税 当該科目に係る地方税法・同施行令・同施行規則に関する事項のほか、地方税法総則に定める関係事項及び当該科目に関連する他の法令に定める関係事項を含む。
15時から17時 住民税または事業税

(引用元:国税庁HP

税理士試験は年に1度、8月に実施されます。

試験日程は3日にまたがっており、科目によって受験する日程や時間帯が異なります。

そのため、受験科目を1日で受験する方もいれば、2〜3日に分けて受験する方も出てくるでしょう。

試験スケジュールは事前にしっかり確認し、心身ともに万全な状態で取り組めるよう自己管理に努めましょう。

税理士になるために必要な勉強時間は?

一般的に税理士試験の勉強時間は、4,000時間程度といわれています。

年数にすると4〜5年かかるケースも多く、長期計画を立てる必要がある資格です。

4,000時間は5科目すべてに合格するトータルの勉強時間で、選択科目をどれにするかによっても勉強時間が大きく変化します。

それぞれの科目によって難易度に違いがあり、それに伴って勉強時間も多く必要となります。

しかし、初めて税理士について勉強する方と予備知識や実務経験のある方とでは、合格基準に達するまでの勉強時間は異なります。

そのため、勉強時間はあくまでも目安に過ぎず、一概にどのくらいの勉強時間が必要かは断言できません。

科目別による平均学習時間の目安は次の通りです。

科目選択 科目名 出題 平均学習時間(目安)
必須科目 簿記論 計算100%/理論0% 500時間
財務諸表論 計算50%/理論50% 500時間
必須選択科目 法人税法 計算50%/理論50% 700時間
所得税法 計算50%/理論50% 600時間
選択科目 相続税法 計算50%/理論50% 500時間
消費税法 計算50%/理論50% 300時間
固定資産税 計算50%/理論50% 250時間
事業税 計算30%/理論70% 250時間
住民税 計算50%/理論50% 200時間
酒税法 計算40%/理論60% 200時間
国税徴収法 計算0%/理論100% 150時間

(引用元:スタディング公式HP

平均学習時間は150〜700時間と、科目によって大きな差が生じています。

たとえば国税徴収法と法人税法では550時間もの差が見られます。

特に、必須科目・選択必須科目は難易度が高いといわれているため、多くの学習時間が必要です。

また、選択科目である相続税法や消費税法を選んだ場合、国税徴収法や酒税法よりも多くの勉強時間を必要とします。

このように科目ごとに勉強時間が異なるため、選択科目選びは重要といえるでしょう。

しかし、学習時間が少ない科目を選べばいいというわけではありません。

税理士試験は「相対評価制」が用いられています。

そのため学習範囲がせまい科目は、正答率が高くなければ合格できないというケースがあります。

さらに、人気の高い科目ほど、受験者のレベルが高くなることも頭に入れておきましょう。

よって、勉強時間だけで選択科目を決めることなく、自分の将来像を考えた上で、必要な科目を選択することが大切です。

どの科目についても、しっかりとした学習計画が必要不可欠です。

上記の学習目安時間を参考に、多すぎると感じるくらいの勉強時間を確保することをおすすめします。

簡単だったという意見も?税理士の難易度について

難関資格として名高い税理士ですが、「簡単だった」という意見も散見されるのは本当でしょうか。

科目合格制度を取り入れるほど、長期戦が予想される税理士試験ですが、ある理由から受かりやすいといわれる科目があります。

たとえば法人税と所得税がこれにあたり、学習内容に重なる部分が多いという特徴があります。

そのため、同じような問題に遭遇する確率が高く、得点化しやすい傾向にあるでしょう。

ほかにも、法人税と事業税、所得税と住民税なども重複する部分が多いといわれています。

内容が重複していれば、学習への馴染みも理解度も深いものが得られるでしょう。

このように、科目によって学習内容に重複する部分があることは、「受かりやすい・簡単」といわれる理由の一つであるといえるでしょう。

しかし、重複内容があるからといって、税理士試験の難易度が高いことに変わりはありません。

重なって出てくるからこそ、絶対に落とせない重要箇所という緊張感を持つべきでしょう。

「簡単だった」という言葉に踊らされることなく、科目選択の参考にする程度にしておくとよいでしょう。

他資格と比較した場合の税理士の難易度

他資格と比較した場合の税理士の難易度も見ていきましょう。

合格率・勉強時間・難易度はそれぞれ次の通りです。

資格名 合格率 勉強時間 難易度
税理士 10% 4,000時間 超難関
公認会計士 9.6% 5,000時間 超難関
司法書士 5.1% 3,000時間 超難関
社労士 7.9% 1,000時間 難関
中小企業診断士 28.9% 1,000時間 難関
行政書士 11.8% 600時間 難関
ファイナンシャルプランナー(1級) 7~18% 400時間 普通

(引用元::フォーサイト公式HP/スタディング公式HP/アガルートアカデミー公式HP

年度によって合格率は変化しますが、税理士と近い合格率を持つ資格に公認会計士・社労士・行政書士などが挙げられます。

しかし勉強時間を見てみると、公認会計士5,000時間に対して行政書士1,000時間と4,000時間もの差が生じています。

よって、「難易度が高いほど勉強時間も長くなる」とは一概に断言できません。

どの資格試験にもいえることですが、学習時間は全くの初学者と、ある程度の知識や経験がある方とでは大きく異なります。

あくまでも一つの目安として捉えましょう。

そして、受験者の性質も各資格試験によって異なります。

税理士や公認会計士は、長期戦を覚悟で挑む方が多いため、受験への意識レベルも相当高いでしょう。

こうした意識の高い受験者が多く揃う試験は、さまざまな資格試験の中でも難易度は高くなることが考えられます。

公認会計士と比較した場合の難易度

公認会計士と税理士は、職業内容や試験の難易度など、頻繁に比較対象に挙げられています。

公認会計士は大企業向けの会計監査が主業務であり、税理士は税金の専門家と、担う業務は大きく異なります。

それぞれの難易度については、「公認会計士のほうが税理士より難しい」といわれています。

近年の公認会計士の合格推移は、以下のとおりです。

年度 出願者数 合格者数 合格率
令和5年 20,317人 1,544人 7.6%
令和4年 18,789人 1,456人 7.7%
令和3年 14,192人 1,360人 9.6%
令和2年 13,231人 1,335人 10.1%
平成30年 11,742人 1,305人 11.1%
平成29年 11,032人 1,231人 11.2%
平成28年 10,256人 1,108人 10.8%
平成27年 10,180人 1,051人 10.3%

(引用元:公認会計士・監査審査会HP

合格率は9〜11%程度となっており、近年はやや低迷傾向にあります。

税理士の合格率が15〜20%程度であることから、公認会計士のほうが合格率は低いことが分かります。

ちなみに、公認会計士の合格に必要な勉強時間は5,000時間、税理士の合格に必要な勉強時間は4,000時間ほどです。

よって、合格率と勉強時間の両方からみても、公認会計士のほうが難易度は高いといえるでしょう。

公認会計士の試験は、「短答式試験」と「論文式試験」で構成されています。

短答式試験は年2回、論文式試験は年1回施行されます。

「財務会計論」「管理会計論」「監査論」「企業法」「租税法」の必須5科目の合格に加えて、「経営学」「経済学」「民法」「統計学」の選択科目から1科目の合格が必要です。

短答式試験は基本的に一発合格を求められますが、論文試験は不合格であっても税理士のように「合格済み」という実績が残ります。

ただし、合格実績は2年間しか有効期間がないため、速やかに論文試験に合格しなければなりません。

公認会計士は複数科目の一発合格が必要なため、働きながら合格を目指すのは難しい傾向にあります。

一方、税理士は科目合格制度があるため、時間をかければ合格しやすい資格といえるでしょう。

そのため、仕事をしながら取得を目指す場合は、税理士試験の方が合格しやすいといえるかもしれません。

反対に、学生など短期間で集中的に勉強できる環境が整っている方は、公認会計士を目指しやすいでしょう。

このように税理士と公認会計士は試験の性質が異なるため、一概にどちらが簡単か・難しいかは判断しづらいでしょう。

しかし、公認会計士は税理士登録が可能な点を考えると、公認会計士の方が上級ランクの位置付けといえるかもしれません。

司法書士と比較した場合の難易度

税理士と比較される資格試験の一つとして、司法書士があります。

司法書士とは、不動産登記手続や成年後見事務、多重債務者の救済など、日常生活における法的手続きや法的助言をする重要な役割を担う職です。

一般的には、「税理士よりも司法書士のほうが難易度は高い」といわれています。

近年の受験者数・合格者数・合格率の推移は以下の通りです。

年度 受験者数 合格者数 合格率
令和5年 13,372 695 5.20%
令和4年 12,727人 660人 5.19%
令和3年 11,925人 613人 5.14%
令和2年 11,494人 595人 5.17%
平成31年 13,683人 601人 4.39%
平成30年 14,387人 621人 4.31%
平成29年 15,440人 629人 4.07%
平成28年 16,725人 660人 3.94%
平成27年 17,920人 707人 3.94%

(引用元:法務省HP

年度によっても変化しますが、例年3~5%台と非常に低い水準にあります。

税理士の合格率が約15%〜20%あることからも、圧倒的に低いことが分かります。

試験科目は、民法・不動産登記法・商法・会社法・商業登記法・民事訴訟法・民事執行法・民事保全法・司法書士法・供託法・刑法・憲法の計11科目から出題されます。

そのため、非常に広範囲の勉強が必要不可欠といえるでしょう。

このように、試験範囲の広さは、司法書士試験が難関といわれる最大の理由です。

司法書士試験の出題形式には、択一式と記述式・口述式の3種類があります。

すべての試験でこれらの合格基準点を満たさなければ不合格となります。

そのため、苦手な科目は諦めるという選択ができず、すべての科目をまんべんなく勉強しなければなりません。

こうした合格基準点も司法書士試験の難易度を高めている要因といえるでしょう。

さらに、司法書士試験の難易度が高い理由の一つとして、相対評価で合格者を決める点があげられます。

相対評価とは、受験者のうち点数がいい上位者だけを合格させる方法のことです。

つまり、受験する年の平均点が高ければ不合格となる可能性があります。

そのため、絶対評価を採用している資格と比較すると、合格率は低下します。

このように、相対評価を採用していることも、司法書士試験の難易度を上げている一因といえるでしょう。

社労士と比較した場合の難易度

社労士とは、労働者や企業の労務環境についてアドバイスする専門家です。

社労士と税理士は、「労務管理の専門家」「税務に関する専門家」と、それぞれ扱う分野が異なります。

しかし、どちらも「士業の中で社会的価値が高い」「将来性が見込まれる」「独立しやすい」などの理由から比較の対象に挙げられます。

近年の社労士の受験者数・合格者数・合格率の推移は以下の通りです。

年度 受検者数 合格者数 合格率
令和5年 42,741人 2,720人 6.4%
令和4年 40,633人 2,134人 5.3%
令和3年 37,306人 2,937人 7.9%
令和2年 34,845人 2,237人 6.4%
令和元年 38,428人 2,525人 6.6%
平成30年 38,427人 2,413人 6.3%
平成29年 38,685人 2,613人 6.8%
平成28年 39,972人 1,770人 4.4%
平成27年 40,712人 1,051人 2.6%

(引用元:アガルートアカデミー公式HP

平成27年は2.6%、令和3年は7.9%と、年によって合格率にばらつきはあるものの、例年の合格率は平均6〜7%程度です。

税理士と比較した場合、税理士の科目合格率は15%程度と、社労士の方が合格率は低いことが分かります。

しかし、二つの難易度を比較すると「社労士よりも税理士の方が比べ物にならないほど難しい」といわれています。

なぜなら、社労士は一度合格すれば取得可能ですが、税理士は11科目の中から5つ合格しなければなりません。

出題範囲も広く、非常に難易度が高い数学系の問いが出題され、1科目ごとの難易度は社労士試験より高いといえます。

勉強時間で比較してみても、税理士の合格に必要な勉強時間は約4,000時間と、社労士の4倍の時間が必要です。

ただ、税理士試験には一度合格した科目は免除されるなど、社労士試験にはない優位性もあります。

社労士の試験の特徴として「法改正」と「試験時間の長さ」が挙げられます。

試験では、法改正問題に注意が必要です。

頻出問題で問われる法律が改正を受けるケースもあるため、最近の年度における過去問を慎重に確かめてください。

試験時間が長いのも社労士試験の難点です。

選択式80分、択一210分と非常に長丁場であるため、スタミナが問われるでしょう。

本番までに少なくとも210分以上の集中力を保つ努力が必要です。

そのため、模試や過去問で集中力を養う工夫も学習のうちといえるでしょう。

行政書士と比較した場合の難易度

行政書士は、行政機関に提出する書類作成のプロフェッショナルです。

具体的な仕事としては、官公庁に提出する書類・権利義務に関する書類・事実証明に関する書類の作成や提出手続きなどがあります。

行政書士と税理士は、職域が近く相性もよいため、ダブルライセンスもおすすめです。

行政書士として会社の設立をサポートした後に、会社と顧問契約を締結して税理士業務を営むなど、活動の幅を広げられるメリットがあります。

行政書士と税理士を比較すると「税理士の方が明らかに難易度は高い」といえるでしょう。

近年の行政書士の受験者数・合格者数・合格率の推移は以下の通りです。

年度 受験者数 合格者数 合格率
令和5年 46,991人 6,571人 13.98%
令和4年 47,850人 5,802人 12.13%
令和3年 47,870人 5,353人 11.18%
令和2年 41,681人 4,470人 10.72%
令和元年 39,821人 4,571人 10.72%
平成30年 39,105人 4,968人 12.70%
平成29年 40,449人 6,360人 15.72%
平成28年 41,053人 4,084人 9.95%
平成27年 44,366 5,820 13.12

(引用元:行政書士試験研究センター公式HP

合格率は9〜15%程度となっています。

合格率だけで比較すると行政書士の方が難しく感じますが、実際には税理士の方がかなり難易度は高いといえます。

税理士試験に合格した方は、資格手続きをするだけで行政書士になれることからも、税理士は行政書士より上級資格であるといえるでしょう。

行政書士試験のメインは法令科目ですが、行政業務に関連する一般知識なども広く問われます。

二次試験では、出題された事例について質問されます。

試験官の質問や説明をよく聞き、丁寧に回答することが求められるでしょう。

40文字程度の記述式問題では、配点を高く設定しているのが特徴です。

わずか3問の出題で、1問20点の配点があるため、記述式の攻略こそが合格への近道といえるでしょう。

中小企業診断士と比較した場合の難易度

中小企業診断士とは、中小企業をターゲットとして経営課題に関する診断や助言をする専門家のことです。

全国には数多くの中小企業が存在しており、経営的なサポートは欠かせません。

税理士と中小企業診断士の大きな違いの一つが、独占業務の有無です。

税理士は、税務代理・税務書類の作成・税務相談の3業務については、資格がなければできません。

一方、中小企業診断士に独占業務はありません。

さまざまな業務と連携し、組織運営や再生をサポートします。

マーケティングや財務分析、事業計画書の作成、労務対策など、コンサルティングに携わる分野は多岐にわたります。

近年の中小企業診断士の合格率の推移は以下の通りです。

年度 1次合格率 2次合格率 試験合格率
令和5年 29.6% 18.9% 5.6%
令和4年 28.9% 18.7% 5.4%
令和3年 36.4% 18.3% 6.6%
令和2年 42.5% 18.4% 7.8%
令和元年 30.2% 18.3% 5.5%
平成30年 23.5% 18.8% 4.4%
平成29年 21.7% 19.4% 4.2%
平成28年 17.7% 19.2% 3.3%
平成27年 26.0% 19.1% 4.9%

(引用元:中小企業診断協会HP

合格率は1次試験で17〜42%、2次試験で18〜19%で推移しています。

全体の合格率は3〜7%程度と非常に低い水準となっています。

しかし、中小企業診断士と税理士を比較すると、税理士の方が圧倒的に難易度は高いといえるでしょう。

中小企業診断士の合格に必要な勉強時間は1,000時間とされており、税理士試験の4分の1にとどまります。

中小企業診断士と税理士は、重複する科目があります。

税理士資格を持っている方であれば、学習時間はさらに短縮できるでしょう。

このような点からも、中小企業診断士試験は税理士に比べ難易度は低いといえます。

とはいえ、中小企業診断士試験は経済学など広い分野から出題されるため、しっかりと対策をとる必要があります。

ファイナンシャルプランナーと比較した場合の難易度

ファイナンシャルプランナー(FP)は、年金・保険・投資・税制・生活設計などに関する専門知識を活かして、的確な資産運用のアドバイスをする仕事です。

FPと税理士を比較すると、税理士のほうがはるかに難しいといえるでしょう。

取得に平均7年程度かかるといわれる税理士に対し、FPは数ヵ月ほどの準備期間があれば合格を目指せます。

近年のファイナンシャルプランナー1級の合格者数は以下の通りです。

実施年月 学科 実技
2023年9月 13.00%
2023年6月 84.59%
2022年9月 12.28%
2022年6月 85.98%
2022年5月 9.39%
2022年2月 85.88%
2022年1月 6.67%
2021年9月10月 13.03% 85.16%
2021年6月 85.27%
2021年5月 20.05%
2021年2月 9.95% 88.49%
2020年9月・10月 15.01% 86.34%
2020年1月 11.81%
2020年2月 84.92%

(引用元:金融財政事情研究会公式HP

FP1級の合格率は、学科試験と実技試験で大きく異なることが分かります。

実技の合格率は80%を超えますが、学科合格率は10〜20%ととても低い数字です。

つまり、学科試験をクリアすることが一番のハードルとなります。

なお、FP試験を受験する際には、法改正に注意を払いましょう。

法改正は毎年行われているため、覚えなければいけない数字などが変わります。

最新の情報を得るため、テキストは一番新しく出版されたものを選びましょう。

日本FP協会や金融財政事情研究会のホームページで、法改正の情報が掲載される場合があるため、随時確認しておきましょう。

独学での税理士試験合格は可能?

税理士試験に独学で合格するのは不可能に近いといえるでしょう。

実際に独学で合格したという方は極めて少数です。

税理士試験は、会計や税務に関する11科目が出題され、そのうち5科目に合格しなければなりません。

しかし、11科目のどれもが難関であり、各科目の合格率は10%~20%前後です。

そして、1科目に合格するだけでも数百時間の勉強が必要です。

資格取得までには一般的に4,000時間という膨大な学習時間を要します。

あまりに長い学習期間における独学は、モチベーションの維持が難しく、挫折しやすいのが実情です。

税理士試験は知名度が高く、予備校や通信講座などの種類も豊富です。

税理士を目指すほとんどの方は、予備校や通信講座を利用し、集中的に勉強に励んでいます。

夜間や週末に開講している講座もあり、さまざまな生活事情に合わせたコースが多数用意されています。

平均的には2年程度の期間で、税理士試験に出るポイントはひと通り習得が可能です。

独学で税理士になることも不可能ではありませんが、勉強の効率を上げるためにも、できればこれらのいずれかを利用することが望ましいでしょう。

効率良く勉強するポイント

税理士試験に合格するために、効率良く勉強するポイントをいくつか紹介します。

まずは何よりも「合格までの計画作り」を事前に行うことが大切です。

「5科目合格」を終点とし、それから逆算して考えることが非常に重要です。

そして、「簿記論」「財務諸表論」に関しては、出来るだけ早く合格しておくことをおすすめします。

「簿記論」「財務諸表論」は必須科目に指定されており、税理士試験全体の基礎となる科目です。

税理士試験の簿記論は、簿記資格とも似た内容を学びます。

すでに簿記を学んだことがある方はイメージをつかみやすいでしょう。

事前に「日商簿記1級」に合格したのち、税理士試験を受験するなら、続けて「簿記論」「財務諸表論」を受験することをおすすめします。

簿記論・財務諸表論の「過去問」「理論暗記」を加えるだけで、合格できる可能性が高く、効率的に合格を目指せるでしょう。

そして、税理士試験を突破するために欠かせないのが、「最新の試験動向をしっかり調べること」です。

税理士試験は、試験委員によって作問に偏りがみられる場合があります。

したがって、試験の動向をきちんと分析しなければなりません。

試験委員には「学者」「官僚」「実務家」のいずれかがあり、科目ごとに担当が決まっています。

過去問からそれぞれの解法パターンを理解しながら勉強を進めましょう。

最近では、試験委員対策用の問題集も発売されるようになりました。

SNSなどのメディアでも試験委員対策講座が無料で視聴できるものもあります。

そうした情報源をきちんと活用して、効率的な学習に役立てていきましょう。

税理士の合格率について

ここからは、税理士試験の合格率をみていきます。

近年の合格率は、以下の通りです。

年度 令和5年度 令和4年度 令和3年度 令和2年度 令和元年度 平成30年度
受験者数 32,893人 28,853人 27,299人 26,673人 29,779人 30,850人
合格者数 7,125人 5,626人 5,139人 5,402人 5,388人 4,716人
合格率 21.7% 19.5% 18.8% 20.3% 18.1% 15.3%

(引用元:国税庁HP

年度により多少のバラツキはありますが、15~20%で推移しています。

受験者数は年々減少傾向が続いていますが、今年度は前年度より626人増加しています。

しかし、合格率については1.5%下がり、合格者数は263人減少と厳しい結果となりました。

したがって、受験者数の増減は合格率にほとんど影響のないことが分かります。

もっとも、毎年試験の難易度や分量が変わるにもかかわらず、合格率はほぼ変わりません。

各科目とも満点の60%が合格基準とされていますが、実際には上位10〜15%が合格する相対評価による試験であるといえるでしょう。

科目別の合格率

科目別合格率は以下の通りです。

科目名 令和5年度 令和4年度 令和3年度 令和2年度 令和元年度 平成30年度
簿記論 17.4% 23.0% 16.5% 22.6% 17.4% 14.8%
財務諸表論 28.1% 14.8% 23.9% 19.0% 18.9% 13.4%
法人税法 14.0% 12.3% 12.8% 12.0% 14.7% 11.6%
所得税法 13.8% 14.1% 12.6% 16.1% 12.8% 12.3%
相続税法 11.6% 14.2% 12.8% 10.6% 11.7% 11.8%
消費税法
酒税法
11.9%
12.7%
11.4%
13.2%
11.9%
12.6%
12.5%
13.9%
11.9%
12.4%
10.6%
12.8%
国税徴収法 13.9% 13.8% 13.7% 12.2% 12.7% 10.7%
住民税
事業税
14.7%
16.4%
17.2%
14.1%
12.7%
12.6%
18.1%
13.1%
19.0%
14.8%
13.5%
11.0%
固定資産税 17.3% 18.4% 13.8% 13.5% 13.7% 14.9%

(引用元:国税庁HP

各科目10~20%で推移しています。

必須科目である簿記論と財務諸表論は、他科目よりも高い水準となっており、20%を超える年もみられます。

選択科目の住民税と事業税では、令和3年度を除き、住民税のほうが若干高い合格率です。

しかし、合格率は毎年変化するため、あくまでも目安であると捉えましょう。

合格率によって難易度が決まるというわけではありません。

科目を選択する際には、合格率だけで選ぶことがないよう注意しましょう。

なお、簿記論・財務諸表論・法人税法・所得税法は、他の税法科目に比べてボリュームが多い科目です。

こうした学習量についても考慮しながら、科目の組み合わせを考える必要があります。

年齢別の合格率

年齢別合格率は以下の通りです。

年齢 令和5年度 令和4年度 令和3年度 令和2年度 令和元年度 平成30年度
41歳以上 13.1% 11.5% 11.8% 13.2% 11.5% 10.0%
36~40歳 20.8% 19.4% 18.3% 19.2% 16.2% 14.3%
31~35歳 23.5% 22.2% 21.3% 21.7% 19.7% 16.8%
26~30歳 27.1% 24.0% 23.0% 25.1% 23.0% 18.1%
25歳以下 29.7% 30.9% 29.7% 33.8% 32.7% 27.0%

(引用元:国税庁HP

合格率が最も高いのは25歳以下の受験者です。

そして、年齢が上がるほど少しずつ合格率が減少していくのが分かります。

20代の受験者は試験だけに専念できる方が多いことや、若く記憶力が高いことなどが強みといえるでしょう。

一方で、年齢が高くなるほど仕事量が多く、学習時間の確保が難しい点は否めません。

しかし、41歳以上の層でも合格率は10%超と、例年一定の割合で合格者が存在します。

税理士は超難関資格ではあるものの、仕事と勉強を両立することは不可能ではありません。

若いうちに受験すれば有利ですが、年齢に関係なく努力すれば合格できる試験ともいえます。

学歴による合格率

受験者の学歴と合格率についてもみておきましょう。

近年の学歴別の合格率は以下の通りとなっています。

学歴等区分 令和5年度 令和4年度 令和3年度 令和2年度 令和元年度 平成30年度
大学卒 21.1% 18.6% 17.7% 19.3% 17.3% 14.7%
大学在学中 30.5% 29.8% 31.1% 32.6% 32.9% 21.4%
短大・旧専卒 13.6% 13.8% 14.3% 17.3% 11.9% 9.6%
専門学校卒 16.4% 17.9% 16.1% 16.8% 15.9% 15.1%
高校・旧中卒 23.8% 22.1% 22.5% 23.8% 21.0% 17.9%
その他 32.7% 42.0% 43.5% 42.2% 38.1% 32.4%

(引用元:国税庁HP

大学在学中の合格率が最も多く、高校・旧中卒が続きます。

大学生や高卒の合格率が比較的高いのは、試験勉強に割ける時間が多いからであると考えられるでしょう。

学歴別の合格率を見てみると、大卒が高卒よりも低く、高卒や中卒が大卒より高い傾向にあります。

これらの点から、学歴による合格率の差はつきにくいと考えられるでしょう。

むしろ、「勉強時間にどれだけ時間を掛けられるか」のほうが、合否への影響は大きいのではないでしょうか。

税理士試験の制度がおかしいといわれる理由

ここからは、税理士試験の制度について詳しくみていきましょう。

あわせて、試験日・合否判定・合格発表など、「税理士試験の制度がおかしい」といわれる理由についても解説していきます。

試験日が平日

例年、税理士の試験日は「平日」に開催されています。

一般的な資格試験は土日など休日に実施されるケースが多いため、何かしらの理由があるといえそうです。
考えられる理由は以下の二つです。

  • 試験科目が多いため
  • 公務員が試験監督であるため

税理士試験は科目数が多く、試験は3日間に渡って開催されます。

そうなると、土日では収まりきらないことから、平日3日間に分けていると予想されるでしょう。

もう一つ考えられる理由に、「試験監督が公務員であるため」という点があげられます。

公務員の方が休日出勤した場合には、休日勤務手当を支払わなければなりません。

土・日・月曜日を試験日にした場合、2日分の休日勤務手当が発生します。

税理士試験は全国規模で開催され、受験者数も非常に多いため、相当な出費となるでしょう。

このような余計な出費を削減するという目的もあるかもしれません。

あくまでも予想ですが、税理士試験が平日実施されるのはこれらの点からであると考えられます。

合格発表まで約4ヶ月

税理士試験は年1回、8月上旬〜中旬に試験が開催されます。

そして、合格発表は約4ヶ月後です。

「なぜ4ヵ月もかかるのか?おかしい」と感じている方も多いかもしれません。

4ヵ月といえば、1年の3分の1に値し、受験生はとってあまりに苦痛な時間といえます。

税理士の合否判定に時間を要するのは、「記述式の採点に時間がかかるから」といえそうです。

税理士試験の問題はすべて記述式です。

記述式は採点者が1枚ずつ答案を採点しなければならず、非常に効率が悪いことが伺えます。

採点では論理的な文章かどうか、キーワードが正確に用いられているか、内容の理解度といった点が判断されます。

令和2年度の受験者数は26,673人です。

これほどの人数分を採点するには、膨大な時間が必要なのは想像に容易いでしょう。

よって結論として、「合格発表までに4カ月かかるのは妥当である」といえそうです。

公認会計士は税理士になれる

現行法において、公認会計士が日本税理士連合会に申請し、税理士登録をすることで、資格が自動付与されます。

つまり「公認会計士は無試験で税理士になれる」ということです。

これは、公認会計士の試験範囲に「租税法」が含まれている点が、税理士登録の自動付与につながっていると考えられるでしょう。

時折、「公認会計士は税理士になれる」といった説明を目にしますが、税理士登録は必須です。

当然、公認会計士が税理士登録せずに行った税務業務は、「税理士法違反」となるため注意して下さい。

一方、公認会計士に自動付与制度はありません。

公認会計士になりたければ、試験に合格して資格を取得する必要があります。

この点について「なぜ?おかしい」という反論があるようです。

しかし、税理士資格はあくまでも税務に関する専門知識や技術の証明であり、公認会計士の代表的な仕事である「監査」については業務外になります。

よって、税理士が公認会計士を担うことはできないという結論に至ります。

合否の判定ができない

資格試験では模範解答が存在していることが一般的です。

また、配点も明らかにされていることがほとんどでしょう。

しかし、税理士試験では模範解答と配点のどちらも公開されていません。

そのため、受験生は自己採点することが非常に困難で、正確な点数を把握できない状態にあります。

これは明らかに「おかしい」といわれても仕方のない点かもしれません。

現在のところ、予備校が模範解答を公開しているため、それを参考にして自己採点をする形をとっています。

しかし、模範解答の作成が困難な問題や、予備校によって解答が異なるケースも散見されます。

問題ごとの配点もわからないため、総得点を検証できません。

そもそも国税庁は模範解答を作成していません。

税理士試験の採点は、模範解答に沿ってなされておらず、採点者の判断に基づいて点数が付けられています。

特に計算問題では、膨大な数字が並びます。

正誤を模範解答なく判断するのは極めて困難です。

そのため、本当に正誤判定に間違いはないのか、疑問を抱いている方は少なくありません。

資格取得までが長すぎる

税理士試験は、非常に長い受験期間が必要です。

社会人の受験が多いことや、試験制度の性質によることも要因の一つといえるでしょう。

一般的には、複数年かけて科目合格を重ね、最終合格する方が多い傾向にあります。

具体的な年数を公的に示したものはありませんが、全科目合格まで平均6~7年かかるといわれています。

10年以上費やしたという方も珍しくありません。

2〜3年で合格する予定で、10年以上かかってしまった場合、人生設計が大きく狂ってしまうでしょう。

税理士という超難関資格が存在すること自体が、「おかしい」といわれるのかもしれません。

税理士の年収は?

ここからは、税理士の年収についてみていきましょう。

税理士になるためには、非常に難易度の高い試験を突破しなければなりません。

それだけに、高年収が期待できると考える方も多いでしょう。

ただし近年は、倒産や廃業による中小企業の減少から、公認会計士が税理士を兼任するケースが増えています。

このため、税理士の競争環境は徐々に厳しさを増しており、かつてほど高収入が得られないという声も聞かれます。

税理士の平均年収

「令和3年度賃金構造基本統計調査」によると、税理士の平均年収は、658万円ほどとなっています。

一般労働者の平均年収が約308万円であることから、税理士の平均年収はかなり高年収だといえるでしょう。

しかしあくまで平均値であるため、独立税理士と、雇われ税理士では大きく差が生じるでしょう。

税理士資格を取得すれば高収入が見込めるわけではありません。

開業の場合は営業力も必要です。

税理士としての知識や経験のみならず、営業力やコネクションなど、経営者としての手腕が要求されます。

年代別の年収

年代別の年収は以下の通りです。

年代 平均年収
20~24歳 約364万円
25~29歳 約506万円
30~34歳 約913万円
35~39歳 約1,009万円
40~44歳 約1,158万円
45~49歳 約1,107万円
50~54歳 約813万円
55~59歳 約755万円
60~64歳 約416万円
65~69歳 約681万円

(引用元:資格の大原公式HP

50代を迎える頃までは、年齢が上がるにつれて年収も増加する傾向にあります。

そして、平均年収の年代別ピークは40代です。

40代になると税理士として実務経験をこなし、組織をまとめるマネージャーや役職者になっているケースも少なくありません。

そういった役職者の場合、年収1,000万円を超えることも珍しくないでしょう。

また、こうした実務経験を得て独立開業する方が多いのも40代といえます。

一般企業では60代で退職となりますが、税理士には定年がないため、60代や70代でも働くことが可能です。

税理士の平均年齢は60歳近くであるともいわれています。

そのため、生涯にわたって稼ぎ続けられるでしょう。

男女別の年収

男女別の年収は以下の通りです。

年代 男性の平均年収 女性の平均年収
20~24歳 約364万円 約364万円
25~29歳 約577万円 約404万円
30~34歳 約984万円 約707万円
35~39歳 約1,036万円 約931万円
40~44歳 約1,201万円 約929万円
45~49歳 約1,177万円 約862万円
50~54歳 約913万円 約658万円
55~59歳 約960万円 約592万円
60~64歳 約419万円 約411万円
65~69歳 約983万円 約250万円

(引用元:資格の大原公式HP

男女別の年収で比較すると、20代前半は変わらないものの、それ以降は男性のほうが女性よりも高いことが分かります。

これは、女性が出産や育児を理由に、退職や休職を機に仕事から遠ざかることが考えられるでしょう。

しかし、資格職である税理士は、女性にとって結婚・出産などで一時的にキャリアの中断があっても、復職しやすいという特徴があります。

さらに、全産業における女性の平均年収は287万円である点から、女性の税理士は生涯にわたって高収入を得やすいことがうかがえます。

税理士の難易度・合格率:まとめ

ここまで税理士の難易度や年収について紹介しました。

税理士は、公認会計士や司法書士に次ぐ、非常に難易度の高い国家資格です。

平均年収は658万円程度と、一般サラリーマンより高く、生涯を通して高年収を得られる職業といえます。

会計事務所や一般企業に勤務して安定した収入を確保することも、独立開業でさらに高見を目指すことも可能でしょう。

税理士資格を取得するには、会計科目・税法科目の中から5科目に合格する必要があります。

「1年に1科目合格」を目指して取り組む方が多い傾向にあり、平均取得年数は6〜7年程度といわれています。

なお、独学ではモチベーションの維持が難しく、挫折しやすいのが実情です。

そのため、予備校や通信講座を利用し、集中的に取り組むことをおすすめします。

まずは、受験する科目の合格率や難易度を把握し、学習計画を立てることが大切です。

じっくり根気よく取り組めば、決して合格できない試験ではありません。

これから税理士試験の受験を検討されている方は、ぜひこちらの記事を参考にしてみてください。

また当サイトでは、税理士の資格取得におすすめの通信講座についても紹介しているので、あわせてご覧ください。

税理士の通信講座に関する詳細は以下の記事をご覧ください。

税理士におすすめの通信講座6選と失敗しない選び方の記事はこちら

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監修者

国家資格キャリアコンサルタント

教育研修会社にて、7年間営業として、企業へのキャリア開発支援制度の導入、個人のキャリア開発に携わり、その後独立。

キャリア支援を通して、個々人の理想の働き方・生き方を考えるサポートをしている。

その一環として、マイナビニュース資格の監修を担当。

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