神戸工場、操業開始から続く生産改革の歴史
パナソニック コネクトモバイルソリューションズ事業部 神戸工場は、1990年6月に操業して以降、最初の約7年間は、大量生産に向けたモノづくりを基本としていた。
フリーフローパレット方式と呼ぶ、全長100mの直線大型コンベアラインを構築。ひとつのラインで、組み立てからエージング、梱包までを行う仕組みとし、これを5ライン設置していた。
1997年8月から、セルラインの試行を開始。同年11月に、U字型のセルラインを2本稼働。同時に直線コンベアを2ライン撤去した。さらに1999年8月には、すべての直線ラインを撤去するとともに、U字型セルラインを合計で9本稼働する体制へと移行。これにより、多品種少量生産に対応できる体制を構築することができ、1人あたりの生産性も大幅に向上したという。神戸工場では、需要の変化や生産する機種に応じて、U字型セルラインのほかにも、I字型セルラインを採用。試行錯誤を繰り返しながら、組み立て工程を進化させていった。
また、パナソニックグループ全体を対象にした「松下全社セルプロジェクト」がスタートしたのが2001年度であり、神戸工場は先行する形で、セル生産を導入していたことがわかる。
2000年度以降に取り組んだのが、セル生産におけるソフトウェア革命である。ひとことでいえば、ポカヨケの仕組みづくりによる運用の進化だ。
組み立てラインには、うっかりミス(ヒューマンエラー)を防止するポカヨケの仕組みを相次いで導入する活動を開始。同時に材料物流改革を進め、みずすまし方式による部品供給を開始。これを活用しながら、呼び鈴材料供給によるタイムリーな部品供給、材料指示・照合システムによる正確な供給体制へと進化させていった。
また、2001年度以降は、一人の作業者が複数の組み立て工程を担当する多能工の育成を開始し、セルの究極の形ともいえる「1人生産」の検証や、複数人で順番に同じ作業を行う巡回型の「ウサギ追い生産方式」なども検証。JIT(ジャストインタイム)による集中特化型組み立てラインの構築などにも取り組んでいった。
一方で、2000年度には、製造情報ネットワーク品質管理システムである「KISS(Kobe Intranet Solution of Super-Production)」システムを導入。2002年度からは、KISSシステムを生産工程と連動させ、基板に印字したQRコードを用いて、生産工程から製造後の修理までを一括管理する体制へと進化させた。
2003年度からは、基板実装から組み立てまでの一貫生産へと進化。2005年度には、レッツノートで5ライン、タフブックで4ラインの生産体制を敷くとともに、基板実装ラインを10ラインから11ラインへと増強。この時点で、年間60万台の生産体制を確立した。
そして、2025年10月には、約3億円を投資して、神戸工場の敷地内に10m電波暗室を設置した。屋外電波の影響を受けずに、短時間で正確な電磁波の測定が行うことができるようになったため、開発期間の短縮化や、製品品質の向上などにつなげることができたという。この頃、海外生産にシフトするPCメーカーが多いなか、神戸工場における生産体制の増強、電波暗室をはじめとする設備への投資を進めるパナソニックの取り組みは、国内開発、国内生産にこだわり、日本の顧客の近くでモノづくりをするという姿勢を、社内外に打ち出すことにもつながった。
2006年度からスタートしたのが、「速くて、軽い工場」への変革だ。ここでは、年間100万台以上の生産にも対応できる体制づくりを目指すことになった。
ここで目玉となったのが、2007年3月に新設した物流棟だ。
物流棟は、1フロアあたり4000平方メートルの3階建ての構造となっており、生産棟と隣接。物流棟の3階部分と、レッツノートの基板実装ラインおよび組み立てラインがある生産棟2階が、同じ高さでつながっている。
従来は、神戸工場から約3km離れたところに置かれていたVMI(Vendor Managed Inventory)倉庫を物流棟の1階および2階に集約し、約10日分の在庫をVMI方式で保管。また、生産棟の3階にあった部品倉庫の機能も物流棟3階に移管し、約5日分の部品在庫を保管できるようにした。
この結果、レッツノートに使用される約65%の部品が常時在庫できる環境が整い、部品の調達から、生産ラインへの供給時間を短縮。物流コストの削減、外部倉庫コストの削減を実現するとともに、生産管理システムの進化などにより、生産の空いた隙間に、量販店などからの受注にも柔軟に対応できる仕組みを構築したという。
さらに、組み立ておよび検査工程の強化や、試験設備の強化などを推進。基板実装ラインに加えて、基板組み立てラインも自動化を進めることで、それまでは4~6人で行なっていた検査作業を1台の検査機に集約。設置スペースを半分以上削減したほか、基板実装工程が24時間稼働であったのに対して、基板組立工程は8時間で稼働していた体制を見直し、いずれも24時間体制へとシフトできるようになった。生産工程全体の工数も、8~10%程度削減したという。この基板実装および組み立て工程の自動化は、タフブック「CF-U1」の基板から採用したという。
こうした取り組みの結果、生産計画から調達、生産、出荷、次の生産計画までを含んだ生産リードタイムは、2005年には25日間だったものが、2007年には8日間にまで短縮し、顧客への納期日数も半減したという。
受注連動革新、物流革新、レイアウト変更によるエリアの有効活用、基板組み立て工程からシフトした人員の有効活用などを通じて、「速くて、軽い工場」への改革が進んでいったのだ。
2010年代に入ると、神戸工場の大きな特徴となったのが、圧倒的ともいえる多品種少量生産への対応だ。レッツノートでは、HDDやメモリ、カラー天板が選択できるのが特徴で、2000種類以上のカスタマイズに対応。さらに、神戸コンフィグレーションセンターの開設により、オプション設定やソフトウェアのインストールなど、1台ごとに仕様が異なるカスタマイズにも対応していた。当時は、出荷量全体の3~4割が、カスタマイズやコンフィグレーションによる出荷だったという。
同時に、人の経験に頼らないモノづくりへの進化を進めていた。防滴性能に大きな影響を与える防水ディスペンサーの塗布や、高い技術が要求されるLCDフィルムの貼付といった作業に、匠の技を伝承しながら自動化を推進。さらに、2017年2月に発売したレッツノート「CF-XZ6」では、基板実装の最終検査工程に双腕ロボットを導入し、フレキケーブルの折り曲げ作業にもロボットを活用するなど、ロボット活用を積極化していった。
双腕ロボットの導入前は、6軸の多間接ロボットを利用して、大ロット向け機種に限定した形で基板実装検査を行っていたが、双腕ロボットの導入によって、複数の機種の基板を同時に検査することができるようになり、従来は人手でしか検査ができなかった作業の完全自動化にも成功した。このとき、基板実装工程では、双腕ロボットや多間接ロボットの導入によって、作業を行うオペレーターの人数を半減しながら、10%の生産性向上を実現したという。
さらに、2018年3月から稼働させた新たな基板実装機は、ミクロン単位で実装位置を判別し、修正すべき箇所を自動的に判定して、それをフィードバックしたり、フィードフォワードしたりする仕組みとなっており、閾値を超える前に異常を検知して、それを自動で修正。品質の高い基板実装を可能にしたという。
また、異なる基板サイズでも、レール幅を自動変更することができるため、段取り替えをせずに、必要な部品を実装できる仕組みを導入。需要動向に応じて様々な基板の生産を可能にした。1日に10回以上行なわれている段取り替えが一気に減ったという。
一方、組み立て工程では作業者の様子をカメラで撮影し、正確な作業を行っていることを確認したり、正しい作業を行うように指示したりといったように、神戸工場全体のデジタル化や自動化も推進された。
さらにDX化の取り組みが進展。2020年度からは、Blue Yonderを活用したS&OP(Sales & Operations Planning)の導入により、需要集計から計画作業までのリードタイムを1週間から1時間へと大幅に短縮。2025年11月からは、日本国内における納期回答の自動化を進めており、納期回答の速度を90%改善したほか、納期回答リードタイムは約1.5倍もの改善効果を生んだという。また、需給のマッチング精度の改善により、総在庫を14%削減しながら、戦略在庫比率を7%増加することにも成功。さらに、業務効率を2.4倍改善したという成果が出ている。
ちなみに、神戸工場のユニークな取り組みのひとつが、2014年10月から、神戸工場のインフラを活用してスタートしたPCのリフレッシュ事業である。神戸工場の修理部門の機能をベースに、企業で使用していたPCを、神戸工場の品質基準のもとで再生。動作試験やクリーニングを行い、リフレッシュしたPCとして再販している。三井住友トラストグループのSMTBリースが運営する中古PC販売サイト「レッツタウン」で販売しており、神戸工場認定の「リフレッシュシール」も貼付している。再生PCであるため、出荷台数は限定されているが、これまでに1万3000台以上の出荷実績を持つ。
最新版! 神戸工場のレッツノート生産ラインを見てみる
それでは、現在の神戸工場におけるレッツノートの生産ラインの様子を、写真で見てみよう。
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部品を基板に実装する高速マウンター。主要モデルの基板を統一したことで、段取り替えが少なくなり、設備を増強しなくても、生産量を増やすことができたという
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基板実装の最終検査工程の様子。2026年6月から稼働しており、基板分割の作業も自動的に行う
<動画>物流棟から部品がAMRで搬送される
<動画>AMRによって組み立て工程に部品を投入する
レッツノートは、2026年4月に発売した「CF-SC7」、「CF-NC7」、「CF-FC7」において、互換性という考え方を採用しており、画面サイズや筐体サイズが異なっても同一の基板や部品を採用し、ほぼ同一の部品レイアウトとなっている。そのため、同じ組み立てラインで、これらの機種を混在して生産することができるようになった。
従来は、12.4型の「CF-SR4」と14.0型の「CF-FV5」は、個別に専用ラインを設け、需要の変動にあわせて、組み立てラインを再構成する必要があったが、いまでは専用ラインという概念がなくなり、12.4型の「CF-SC7」、13.3型の「CF-NC7」、14.0型の「CF-FC7」が、同じラインで生産できるようになっている。需要の変動にあわせて、生産する機種を柔軟に変えることができる環境が整ったともいえる。
038 039 「CF-SC7」(左)と、「CF-FC7」(右)の筐体内部の様子。基板は同じものを使用しながら、フレキケーブルの長さが違うだけだ
パナソニック コネクトモバイルソリューションズ事業部神戸工場の遠藤昇工場長は、「神戸工場にとって、2026年度は、スマートファクトリーの実現に向けたフェーズチェンジの1年になる」と位置づける。
「神戸工場全体のデジタル化を新たなフェーズに進める転換期だと捉えている。それに向けた第1歩として、アナログ作業の棚卸をしているところである」とし、「現場や間接業務には、多くのアナログ情報が残っており、人の頭のなかにあるノウハウもデジタル化する必要がある。デジタル化した情報を、誰でも判断しやすい形で可視化すれば、生産性や品質の向上につなげることができる。これを2026年度中に完遂したい」と意気込む。
さらに、「人が行っていた作業を機械やシステムに置き換える自動化に加え、デジタル化や可視化、データ活用によって効率化するスマートファクトリー化を、2028年度までに実現したいと考えている。その先に目指す姿として、工場自らが判断し、自律的に最適化と改善を行うオートノマスファクトリーを掲げている」と語る。
レッツノートおよびタフブックが、30周年を迎えた節目となる2026年度を起点に、神戸工場は、「オートノマスファクトリー」という新たな世界に向けた取り組みを加速することになる。









































