世界最高峰の栄誉「ノーベル賞」。毎年10月に発表され、12月に授賞式があります。2013年は、日本人の受賞こそなかったものの、ここ1年ほど話題になっていた「ヒッグス場」の提唱が物理学賞になりましたねー。今回は後編ということで、ノーベル賞を楽しむための残りのネタ知識をお届けします。

ネタその5:総受賞人数は…よくわからない

ノーベル賞は受賞できる人数が決められています。物理、化学、医学生理学、経済学賞はそれぞれ3人までです。また文学賞は1人ですね。じゃあ、あわせて13人+平和賞かというと、そうはいかない。平和賞は、たしかにオバマ大統領や、マザー・テレサといった個人が受賞することもあるのですが、国際赤十字とか国境なき医師団とか、あまつさえ国連平和維持軍みたいに、いったい何人いるんだ!? みたいな受賞対象もあったりするのですね。そうなると、世界的な活動に参加していると、実はノーベル賞の受賞者になっちゃうこともあるわけです。でも、なかなかそれは主張しにくい気がしますけどね。

ネタその6:ノーベル賞受賞まではこんな感じ

受賞に先立ち、ノーベル財団が依頼しているスウェーデンとノルウェーの機関が候補を選定します。10~15人くらいの候補者を立て絞り込むらしいですね。最終の受賞者は直前までごく限られた人にしかわからないようになっています。ただ、これを当てるカケがあったり、アメリカのトムソン・ロイターが毎年予想をたてたりと賑やかですね。

受賞の発表は10月の初旬です。医学生理学、物理学、化学、平和、経済学、文学という順番で発表されます。日付は毎年数日くらいずれます。曜日の関係もあるんでしょうね。

発表時刻は、スウェーデン時間の昼の11時~11時45分くらいで、毎年半年前にノーベル財団から告知されています。日本時間だと夕方の6時すぎですな。ちなみに、本人には発表の30分前に電話で知らされます。まあ、日本だったらいいんですが、アメリカなどだと夜明け前に電話がかかってくることになるんですね。今年も文学賞の受賞者(カナダ在住)が「寝てたわよ」と答えたそうです。

ネタその7:ノーベル賞の受賞式典とその後は

授賞式は、ノーベルの命日である12月10日に行われます。会場は、スウェーデンのストックホルムのコンサートホールで行われます(平和賞だけはノルウェーのオスロ)。授与は国王が行い、賞金、賞状、そして金メダルが贈られます。

授賞式の後、スウェーデン王室も参加する晩餐会が市庁舎で行われます(平和賞はオスロのグランドホテル)。ちなみに、この晩餐会メニューは、市庁舎のレストランにて誰でも食べることができます。料金は、スウェーデンが1495スウェーデン・クローナで2万円くらい。ノルウェーが1950ノルウェー・クローネまあ3万円くらいですね

さらに記念の講演があり、さらに近隣の大学で、学生たちとの懇談があったりします。スウェーデンのストックホルムの大学生は、毎年超一流の科学者を目にすることができるわけですな。そこで、さらなる飛躍をしようと、学生が受賞者とカエル飛びをするのが有名です。まあ、高齢の受賞者などはしないそうですけれどね。けがしたらつまらないですからねぇ。

ネタその8:おみやげには、ノーベルメダルチョコ

あと、ノーベル財団が運営するノーベル博物館にはノーベル賞のメダルと同一デザインのメダルチョコ(晩餐会でも使われているらしい)が売られていて、受賞者もおみやげに買うのだそうですね。ちなみにチョコの値段は100スウェーデン・クローナ、まあ150円くらいだそうです。物理学賞を受賞した益川さんは600枚も買い込んだそうですが、10万円のおみやげってわけですね。でも、喜ばれたでしょうねぇー。

ノーベル博物館 Webサイトのトップページ(2013年10月29日時点)

ネタその9:数学賞はないけれど…

経済学賞で統計など数学者が受賞することはあります。あと、数学者のフィールズさんが提唱し、1936年につくられたフィールズ賞が、数学版のノーベル賞といわれることもよくありますねー。ただ、フィールズ賞はノーベル賞と違うところが2つあるんです。まず1つは4年に1回しか授与されないこと。もう1つは、授与されるのは40歳以下に限定されていることです。また、受賞人数は2~4人となっています。日本人もこれまでに3人が受賞しています。

というわけで、これくらい押さえておけば、12月10日の授賞式もそうですし、ちょっとした時にノーベル賞についていろいろ話せるってなもんです。遠い、スウェーデンのことではありますけれどね。

また、今回はふれませんでしたけど、ノーベル賞受賞者は、本当にいろんな人がいて、なかなか興味がつきません。夫婦・親子でノーベル賞をとったキュリー一族とか、新型インフルエンザの特定に大活躍し、遺伝子工学にはかかせないPCRを発明したLOVE&PEACEなサーファー化学者マーズとか、いろいろですが、なにしろ600人も受賞者がいるのだからして(平和賞の団体受賞はともかく)、これはまたの機会にご紹介しますねー。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。