コロナ禍でさまざまなことがオンラインで進みつつある昨今、動画市場がこれまでにないほどの拡大を見せています。YouTubeやTikTokなど、一般人も気軽に動画を配信できる中、企業がビジネスに動画を有効活用する上で、どのような点に気を付けるべきでしょうか。

世界中に広がる動画の台頭

今年3月に開催した戦略発表会に登壇したブライトコーブ米国本社のCEO ジェフ・レイは、「動画はこれまでになかったほど力を増している」と語りました。かつて動画といえば、放送局がコントロールして視聴者がそのコンテンツを受け取るという構図でした。

現在はユーザー側がいつ何を視聴するか、どこで視聴するか、どんなデバイスを使って視聴するかまで選ぶことができるようになり、時間と空間のバリアは打ち破られたといえます。

この状況はデータにも現れています。2020年は北米での動画の視聴時間は前年比で78%増加しました。オーストラリア・ニュージーランドでは215%、ラテンアメリカでは132%、ヨーロッパでは90%と大幅な伸びを示しています。動画の台頭は世界的にさらに広がっていくと考えられます。

日本では、在宅勤務の増加で「コネクテッドTV」の需要が急拡大

では、日本の動画業界の動向についても見ていきましょう。ニュース、スポーツ、リテール(小売・EC)のどのカテゴリーでも、前年比で大幅な成長が見られます。特に大きな伸びを見せているリテールカテゴリでは、人々の購買活動がオフラインからオンラインへと急速にシフトし、またオンラインの購買活動において動画の重要性が顕著に表れる結果となりました。

動画視聴デバイスでは、コネクテッドTVによるシェアが増加しています。 コネクテッドTVとは、スマートTV、FireTVやAppleTVなど、近年増加しているインターネットに接続したTVデバイスのことです。テレビなど大きな画面で視聴できるため、動画尺の長いコンテンツで特に利用される傾向があります。

この傾向は「動画視聴数前年比増加率」のグラフにも表れています。

コネクテッドTVは、リビングに設置されることの多いデバイスです。コロナ禍によって在宅の時間が長くなり、家のリビングでコンテンツを楽しむ機会が増え、コネクテッドTVを視聴する機会が前年と比べて圧倒的に増えたということが、このデータからも読み取れます。

これからもシェアが高まると予想されるコネクテッドTVは、今後の動画戦略を練る上で重要な位置づけになり、リビングルームでインターネットを介してコンテンツを楽しむことが重要な体験になっていくでしょう。

社内のコミュニケーションでも広がる動画活用

動画の活用は、顧客とのコミュニケーションツールとしてだけでなく、インターナル・コミュニケーション(社内コミュニケーション)においても広がり始めました。

例えば、米フォード社は、自社の自動車関連の動画コンテンツをWebサイトで展開しています。顧客にフォードの車の魅力を伝えるだけでなく、従業員やディーラーなどに対して動画を使ってコミュニケーションを図っています。

また、日本マクドナルドでは、かつてフランチャイズを含めた数多くの店舗とのコミュニケーションに苦労していました。そこで、動画を使うことで、従業員トレーニングもスムーズに行えるようになったそうです。社内向けにオリジナルの音楽やダンスなどの動画を配信し、同社のファミリーになることの楽しさを伝えることで、従業員の意識向上にもつなげています。

動画の配信には欠かせない3つのポイント

2020年以降、無観客でのスポーツの試合やライブイベントの配信が急速に進みました。企業でもリモートワークが一般化し、ビジネスイベントやセミナーなどのオンライン化も普及しました。

毎年3月に米国テキサス州オースティンで開催されている、世界最大級のエンターテインメント関連のカンファレンス&フェスティバル「SXSW」も2021年はオンライン開催となりました。同イベントではブライトコーブのシステムを活用して650時間ものコンテンツを5つのチャネルを介して同時に展開し、自宅にいながらリアルタイムにコンテンツを視聴できます。視聴体験としてはNetflixのように、好きなチャンネルを選んで見ることができるようになっています。

リアルで開催されるイベントでは参加できるセッションが限られますが、オンラインであれば、さまざまイベントに瞬時に参加でき、リアルイベント以上のリーチを獲得できるなど、大いに発展していく可能性があります。

また、こうしたオンラインイベントをコネクテッドTVの活用によって、リビングルームでインターネットを介してコンテンツを楽しむという体験も増えていくでしょう。アフターコロナでも、コロナ前のようにリアルイベント中心に戻ることはなく、リアルとオンラインのハイブリッドになっていくことが予測されます。

しかしその一方で、安定した配信ができなかったり、セキュリティ面に不安があったりすれば、視聴者の信頼を失ってしまう可能性もあります。動画配信においては、安全性、拡張性、信頼性の高いプラットフォームが今後さらに求められていくでしょう。

著者プロフィール

ブライトコーブ株式会社 マーケティングマネジャー

大野耕平

大手独立系slerにてソリューション営業を10年経験後、2016年にブライトコーブ入社。3年間の営業を経験した後、2019年より現職。さまざまな角度で、企業における動画活用の啓蒙に注力し、様々なイベントやメディア取材で講演をしている。また、日本における大企業内での社内広報や従業員エンゲージメントにおける動画活用の提案も多数実施している。