韓国の蔚山科学技術大学校(UNIST)の半導体研究チームが2D半導体素材をシリコンウェハ全面へ広く均等に成長させる技術の開発に成功したことを発表した。

同技術で合成された遷移金属カルコゲン化合物は、半導体素子の製作に適用可能なレベルの結晶性を有しており、次世代半導体素材としての活用が期待できるという。詳細は、米国化学会(ACS)の学会誌「ACS NANO」に掲載された。

具体的には、研究チームはSamsungが支援している韓国の成均館大学校の研究チームと協力して、固体原料だけを使っていた既存の方式を改善し、液状原料と固体原料の両方を組み合わせて使用する方式で、結晶性の優れた遷移金属カルコゲン化合物を合成する技術を開発した。一般的に、液状原料は合成素材の結晶性を低下させるが、促進剤(金属ハロゲン化物)を用いることで結晶性の低下を防いだとしている。

また、高温で蒸気に変換された固体前駆体(原料)を使用して合成する方式では、蒸気の濃度が不規則であるため、均等な品質の薄膜を得ることが困難であり、大面積の合成も難しい。このような問題点を解消する方法として、液体原料(液状前駆体)を利用する方式が挙げられているが、液体原料を使うと、合成素材の結晶性などの品質が低下することが課題とされていた。

そこで、研究チームは、液状の遷移金属原料を基板上にコーティングし、蒸気状態のカルコゲン元素と反応させる方式を採用。これにより、液状原料に含まれている反応促進剤がカルコゲン化化学反応を促進し、結晶性の優れた化合物を得ることができるようになったという。また、促進剤を用いることで、化合物が水平方向にのみ成長し、原子レベルの薄層で構成された遷移金属カルコゲン化合物の合成が可能になったともしている。

今回開発された合成法は、遷移金属カルコゲン化合物の種類に関係なく広く適用することができるため、研究チームでは、MoやWなどの遷移金属と、SやSeなどのカルコゲン元素を組み合わせ、多様な単層遷移金属カルコゲン化合物を合成できることも確認したという。

さらに研究チームは、合成された大面積2D材料を利用して、二セレン化モリブデン(MoSe2)薄膜でトランジスタを製作し、その薄膜が優秀な電気的特性(電子移動度)を持つことも確認したとしている。

なお、研究チームでは、「今回開発された合成法は、商用化が可能な、大面積かつ高性能、均等な品質の2D材料を生産できる技術であり、2次元素材の実用化を促進できると期待している。今後、Samsungの研究陣が、1nmプロセスのロジックデバイス開発に採用する可能性がある」としている。