KDDI、KDDI総合研究所、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)、XNef(エックスネフ)は7月10日、脳神経科学とAI(人工知能)を組み合わせ、スマートフォンの使い過ぎなどの「スマホ依存」に関する共同研究を開始した。今後、スマホ依存の実態調査・解明を進め、2024年度中にスマホ依存の改善・予防を行うスマートフォンアプリの実用化を目指す。

昨年12月にKDDIとKDDI総合研究所が実施した約9万人を対象にしたアンケート調査では、全体の約4人に1人(約25%)がスマートフォンの長時間利用などに問題を感じており、うち約83%スマートフォンの利用を改善したいと回答したほか、全体の約74%が睡眠時間の減少、視力の低下、生活習慣の乱れなどの悪影響があると回答している。

また、新型コロナウイルス感染症での外出自粛の影響により、スマートフォン・インターネットの利用が促進されたこととも相まり、ニューノーマルにおいてはスマートフォンが社会を支える基盤として重要な存在となっていくと考えられている。このような状況を踏まえ、KDDIとKDDI総合研究所はこれまでの啓発活動に加え、科学的な観点でのスマホ依存に関する研究を進めることが必要だという。

両社では、安全・安心なスマートフォンの利用環境を提供するため、AIを応用したデータドリブンで高度な脳活動計測・解析技術で実績のあるATRおよび、脳神経科学研究の医療への応用・実用化を行っているXNefと共同でスマホ依存の実態調査・解明と、脳神経科学とAIを活用したスマホ依存の改善・予防を目指すため「脳・行動情報に基づくスマホ依存の推定」「活動を活用したスマホ依存の軽減」の研究を開始。今後は病院などの医療機関との協力関係を構築し、研究活動を拡大していく。

  • 共同研究のイメージ

    共同研究のイメージ

脳・行動情報に基づくスマホ依存の推定については、スマホ依存にかかわらず依存状態にある場合、一般的には本人が依存状態を自覚することが難しいという特徴があるため、共同研究では脳情報やスマートフォンの行動情報をAIで解析し、スマホ依存の状態を検知する手法の開発を目指す。さらに、精神疾患との関連性なども調査し、スマートフォンの利用状況から精神疾患を類推する手法などの開発も目指す。

脳活動を活用したスマホ依存の軽減に関しては、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神疾患では投薬をはじめとした物理的なアプローチではなく、心や身体、脳に働きかける心理的なアプローチによる治療法が検討されており、特にDecNef(デックネフ、Decoded Neurofeedbackの略。fMRIと人工知能技術を組み合わせ、対象とする脳領域に特定の活動パターンを誘導する方法)法を用いた治療法が検討されている。実証実験では、DecNef法を活用し、スマホ依存を引き起こす脳活動を可視化することでスマホ依存の程度を軽減する手法を研究する。

加えて、スマホ依存の実態調査・解明を進め、スマホ依存の検知・改善・予防を行うスマートフォンアプリの開発に向けた課題の確認・手法の検討を行い、最終的には2024年度に実用化を目指す。

各社の役割としてKDDIは快適なスマートフォン利用環境の実現に向けた研究開発、KDDI総合研究所はスマホ依存の実態解明、スマホ依存を軽減させるための行動変容技術の研究開発、ATRはスマートフォンの利用に関する脳活動・行動の解析とDecNef法の応用、XNefはDecNefシステムの研究開発、臨床開発戦略の提案をそれぞれ担う。