ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)は10月29日、森ビルが運営する六本木ヒルズの屋上庭園において11月から都市空間における協生農法に関する実証実験を開始すると発表した。

協生農法とは、生産性と環境破壊のトレードオフからの脱却を目指した新しい農法。多種多様な植物を混生・密生させることで、土地を耕さず、また肥料や農薬も使わずに、植物本来の特性を活かして生態系を構築し、土壌の機能を回復するという。

食料生産だけでなく、環境や健康に与える影響までも包括的に考慮した立体的な生態系の活用法であることが特徴であり、人間活動が加わることで自然状態を超えて生物多様性・機能が高まった状態は「拡張生態系」と呼ばれ、学術的に定式化されている。

森ビルは、極力品種数を増やし生物多様性に配慮した都市緑化を推進しており、協生農法の考え方を導入することで、都市における生物多様性の促進できるほか、植物を育てながら同時に空気を清浄化したり、ヒートアイランドやゲリラ豪雨などの影響も緩和する、さまざまサービスを従来より高いレベルで育める可能性が広がるという。

今回の実験では、2015年から行われている西アフリカでの実証実験をはじめ、これまでに露地栽培で得た知見などをベースに協生農法の導入と拡張生態系の実装を建物の屋上で行う。具体的には六本木ヒルズけやき坂コンプレックスの屋上庭園に、3パターンの異なる土壌を用意した特別なプランター5個を設置。

  • 循環する生態系ネットワークのイメージ

    循環する生態系ネットワークのイメージ

プランターには、野菜・果樹を中心に周囲に100種に上る植物種を配置し、生育状態の変化を観察するほか、プランター以外にも六本木ヒルズの屋上庭園の土壌に直に植えた露地栽培型には200種ほどの有用植物を配置する。

ソニーCSLは実験を通して都市における協生農法の可能性を調査するだけでなく、六本木ヒルズに設置するプランター自体を循環する生態系のネットワークを体感するための装置と捉え、今後もさまざまな場所に多様な植生を展開し拡張生態系に包まれた都市の提案を行うとともに、実験で得た知見をもとに開発する「協生理論学習キット」やワークショップなど、協生農法に関する学習のプラットフォーム化を目指す。

一方、森ビルは都市と自然が共生した、未来へつながる持続可能な都市づくりをさらに深化させるとともに、今後もヒルズを実証実験の舞台としてさまざまなパートナーに提供していく考えだ。