ヤマハ発動機は3月8日、農業用ドローン「YMR-08」や産業用無人ヘリによる農薬散布・施肥作業のデータ管理や運行管理をスマートフォンやパソコン端末で簡単に行えるソフトウェアサービス「Yamaha Motor Smart Agriculture Platform(YSAP)」の提供開始に向けて、トプコン、国際航業、ウォーターセルの3社と協業し、実証実験を開始すると発表した。

  • ドローン「YMR-08」

    ドローン「YMR-08」

YSAPは、防除・追肥作業計画の管理、作業履歴や作業中の機体の飛行位置情報などを管理できる。YMR-08や産業用無人ヘリコプターなどとともに使用することで、高効率・高精度な防除・追肥作業や散布作業のデータを管理し、散布作業の価値や効率を高めることを狙いとしている。

今回の取り組みは、ヤマハの2030年を見据えた中長期成長戦略「ART for Human Possibilities, Advancing Robotics」の一環となり、同社はロボティクス技術や無人システムの開発することで、付加価値の高い農業経営や農業分野の省人化/自動化へのニーズの高まりに対応するという。

YSAPの実証実験の開始は、こうした取り組みの一環であり、散布用無人ヘリやドローンの付加価値を高め、散布作業の効率化・高精度化を目的としている。

農作物の育成解析、圃場の土壌解析、最適な施肥計画づくり、農薬散布作業の負荷低減などの分野においてYSAPの利用価値を高めるために、衛星画像解析による営農の生産性向上サービス「天晴れ(あっぱれ)」を提供する国際航業、可変追肥システムの運用に不可欠なレーザー式育成センサ「Crop Spec」を提供するトプコン、一連の農作業の工程データを一元管理できる農業支援システム「agri-note(アグリノート)」を提供するウォーターセルと協業する。

  • 新サービスの概要

    新サービスの概要

ヤマハ発動機 ソリューション事業本部 ロボティクス事業部 UMS統括部長の中村克氏は「農業の現状は非常に厳しく、変換点を迎えている。就農人口の減少に加え、平均年齢も高齢化している。そのような状況にもかかわらず、耕地面積は増加しており、生産効率を向上させて収益性を確保しなければならないと感じている。そのため、センシングを活用した次世代農業経営と作業の効率化を支援する」と、意気込みを述べた。

  • ヤマハ発動機 ソリューション事業本部 ロボティクス事業部 UMS統括部長の中村克氏

    ヤマハ発動機 ソリューション事業本部 ロボティクス事業部 UMS統括部長の中村克氏

このような状況に対し、ヤマハは産業用無人ヘリとドローン、水田で遠隔操作可能な除草剤散布用無人ボートをはじめとしたUMS(Unmanned System:無人システム)に加え、果樹栽培などの自動化を支援する農業用UGV(Unmanned Grand Vehicle:無人地上車)といった幅広い無人製品群を持ち、製品の機能を高める企業と連携を図りつつ、スマート農業分野でのノウハウの獲得と、先進農業発展への貢献を進めていくという。

YSAPにより、散布管理者は散布日程、オペレーター、散布機材などの管理をアプリケーション上で行えることに加え、策定した計画は携帯端末上に表示されることから、散布作業者は効率的に散布作業を行うことを可能としている。

また、画像の解析や圃場の観測を通じて生育状態などを簡単にデータ化・可視化できるため、生産者はデータに基づく適切な施肥設計・施肥作業や圃場の確認頻度の低減をすることができるという。

さらに、作物の育成状況などの圃場管理をデータにもとづいて適切に行うことができるため、生産者は圃場の状況に合った散布・施肥(追肥)を行い、収穫量の向上を期待することができるほか、最適な量の追肥は肥料代の節約にもつながるとしている。

  • 左からトプコン スマートインフラ事業本部 国内IT農業推進部 部長の吉田剛氏、中村氏、国際航業 営農支援サービス「天晴れ」チーム チームリーダーの鎌形哲稔氏、ウォーターセル 代表取締役の長井啓友

    左からトプコン スマートインフラ事業本部 国内IT農業推進部 部長の吉田剛氏、中村氏、国際航業 営農支援サービス「天晴れ」チーム チームリーダーの鎌形哲稔氏、ウォーターセル 代表取締役の長井啓友