ソフトバンクは28日、コロンビア共和国のコメ栽培生産性・持続可能性向上プロジェクト「Smart Rice-Farming(スマートライスファーミングプロジェクト)」に同社の農業AIブレーン「e-kakashi」を導入、11月から稼動することを発表した。

  • 「e-kakashi」(同社資料より)

    「e-kakashi」(同社資料より)

Smart Rice-Farmingは、中南米・カリブ海諸国経済開発のための米州開発銀行(Inter-American Development Bank)グループの"イノベーション・ラボ"に位置づけられる「IDB Lab」が支援するプロジェクト。一人あたりの年間消費量もたかく、コロンビア共和国でも重要な作物である米と稲作だが、気候変動や灌漑水、施肥成分の利用効率などから生産性コストの高さが課題となっていることを2017年の実証実験時に同社は言及している。

CIAT(International Center for Tropical Agriculture/国際熱帯農業センター)主導で行う「スマートライスファーミングプロジェクト」は、コロンビアのカウカ県、バジェ・デル・カウカ県の稲作農家(213ヘクタール)で「e-kakashi」を設置、CIATやソフトバンク、地元の精米会社などとともに効果検証と省資源型イネの電子マニュアルを作成するフェーズ1。対象地域をコロンビアの他県(アラウカ県やカサナレ県)へと広げ、コメ以外の農産物にも対象品目を広げるフェーズ2の2段階のスキームで進める。

e-kakashiは、四角いセンサーノード(子機)を圃場にあたかもカカシのように設置。ゲートウェイ(親機)を1km以内に設置し、取得した環境データ(気温、相対湿度、地温、水温、土壌体積含水率、EC、日射量、CO2濃度)の可視化に加え、栽培管理作業のインプットによりリスクやアラート通知、タイムラインによるわかりやすい作業指示と個別のナビゲーションを得ることができる。

ソフトバンクは、e-kakashiに期待される効果について、データ収集により可視化・分析のみならず、マニュアル化できる点も強調している。勘や経験で行っていた作業をインプットすることでアラートや作業指示を行う機能「ekレシピ」は、土地ごと農家ごととデータによる技術承継や技術共有を可能とするものだ。また、水資源の有効活用、メタンガス排出量の削減もステージ毎の適切なナビゲートにより貢献が期待されることを挙げている。

同社は、今回の導入を機にコロンビアをはじめとするLAC(ラテンアメリカ・カリブ海地域)地域全体において商用レベルで普及させることを視野に入れており、「e-kakashi」による技術支援を通して、世界における持続可能な農業の実現に貢献したい旨を述べている。