ルネサス エレクトロニクスは10月16日、「R-Carコンソーシアム 2019」を開催、併せてメディア向けに現状の同社の車載半導体を取り巻く状況などの説明会を開催した。

CASEに代表される自動車産業を取り巻く大変革が到来している現在、こうした技術を実現させるE/E(電気/電子)アーキテクチャの核となるのが半導体であると同社では考えている。また、実際に、1台あたりに搭載される半導体の量は、金額ベースで2018年~2025年にかけて平均(CAGR)4%で成長していき、2025年には334ドルに達するほか、日米欧そして中国いずれの地域でも若干のばらつきはあるものの、緩やかに成長していくことが予測されており、同さyとしてもグローバルでの存在感を増すことを目指すとする。

また、デバイス別で見た場合、マイコンは高性能化が進むこともあり、機能統合による出荷数の減少と、新規アプリケーションの搭載による増加の兼ね合いから同期間のCAGRは1%ほどとほぼ横ばいとなるが、よりハイエンドな処理を担うSoCは同11%、エレクトロニクス化ならびにセンサ数の増加に伴うアナログ半導体およびパワー半導体も手堅い成長が期待されており、IntersilおよびIDTを買収し、当該分野を強化したこともあり、全方位で戦える体制を整えていき、存在感を示すことを目指すとする。

その中でも事業の核となるのは引き続きマイコンとなる。しかし、その一方で、ADASやコネクテッドカーといった領域ではSoCのニーズが増大。また、システムが複雑になると、SoC1つだけでも複数の電圧制御などが求められるようになるなど、SoCと専用の電源ICといったソリューションとしての提供も進めていく必要があるとの見方を示す。

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    ルネサスの車載事業の基本戦略。マイコンを核に、ハイエンドにSoC、そしてアナログ半導体と組み合わせたソリューションとして展開していく

マイコンもSoCも方向性としての基本は、電力当たりの性能をいかに向上させるか。消費電力を下げ、演算性能を上げるのはムーアの法則で証明されているとおり、プロセスの微細化が効果を発揮する。すでに同社も車載向けのフラッシュ混載マイコンとしては実車両に搭載される先端プロセスとなる40nmプロセスを採用したフラッシュ混載マイコンは製品化済みで、これまでに累計4億5000万個ほど出荷したとする。さらに、次世代となる28nmフラッシュ混載マイコンも開発を終え、2022年第1四半期から量産出荷を開始する予定として、技術力の高さをアピールするが、その一方で、「安定供給のためのセカンドソースに対する要求がOEMやティア1からあるため、ルネサスだけが圧倒的な技術力を見せつけて、他社を引き離す、というわけにはいかず、他社の技術進展の度合いを見つつ、その中で先んじてユーザーに提供することで、技術力や品質の高さをアピールしたい」ともしており、すでに16nm フラッシュ混載プロセスについても、研究開発は完了しているとしながらも、そうした事情から状況を見つつ、新製品の投入を図っていくとする。

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    車載向けとしては先端プロセスとなる40nmの量産はすでに開始しており、次世代となる28nmもエンジニアリングサンプルの提供を開始。その次の16nmも研究開発は完了しているという

SoCであるR-Carについては、「IVI/コックピット」、「スマートカメラ」、「セントラルADAS」、「コネクテッド/ゲートウェイ」の4つのエリアにフォーカス。世代ごとの互換性を図ることで、継続して利用していってもらえるようにするほか、オープンプラットフォームとして、R-Carコンソーシアムに参加してもらっているパートナー各社と協力してソリューションとして提供していくことを重要戦略に位置づけているとする。

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    R-Carは4つのセグメントに分けてソリューション展開を加速していく

R-Carとして重要視しているのは、単なる高性能なSoCではなく、上述のとおり、電力あたりでいかに高い性能を提供するか、という点。例えばADAS向けには第3世代のR-Car V3Hが現在は提供されているが、デバイスとしての消費電力の上限は5Wほどという前提があり、その条件の中で7TOPSの演算性能を提供している。次世代品の開発はすでに進められており、同様の電力要求条件のもと、60TOPSの実現を目指しているとする。

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    ADAS向けR-Carの製品ロードマップ。現在は第3世代のV3Hが提供されているが、次世代品では一気に電力当たりの演算性能が引き上げられる予定

ソリューションという意味では、Intersil/IDT系のアナログ系の半導体とSoCを組み合わせたソリューションの提供もユーザー側から期待されているとする。特に電源関連は、エレクトロニクス化に伴い、自動車に搭載されるハーネスの量は近年、増加の一途をたどっており、OEMなどからはその削減を図ることができるソリューションの提供などが求められるようになってきているという。SoCと電源ICを組み合わせ、電力の供給方法をアーキテクチャ/トポロジレベルで変えることで、ハーネスの削減などのほか、EUCの細かな電力制御によるバッテリの長寿命化などを図ることができるようになると同社では説明する。

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    パワーマネジメントICとSoCの両方を有することで、ソリューションとして全体最適化を図ることが可能になるとする

では、こうしたソリューションをどのように実現していくのか。ルネサスでは、複雑化する開発ニーズにR-Carコンソーシアム全体で対応することを目指し、既報のとおり、新たなプログラム「プロアクティブパートナープログラム」を立ち上げた。これは、ルネサスがオープン性、革新性、信頼性の3つの観点から十分な価値を提供することができるというパートナー企業を認定することで、OEMやティア1が彼らと連携して、次世代ソリューションの開発の容易化を図ることを可能とするもので、2019年10月16日時点で第一弾として55社がパートナー企業として認定を受けている。

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    R-Carコンソーシアムの中でも、オープン性、革新性、信頼性の3つの価値をユーザーに対して十分なレベルで提供できるとルネサスが認定したことを示す「プロアクティブパートナープログラム」。第一弾として55社が認定された。今後も、認定企業は順次増加していく見通し

その分野も「ミドルウェア」、「OS」、「開発環境/ツール」、「エンジニアリング/製造」、「SIer」、「コンサルティング」と幅広く、ユーザーは必要に応じて、分野別に認定を受けたパートナーと組んで開発を行うことで、必要なノウハウや技術などを入手することができるようになるという。

ルネサスでは、今回のプログラムについて、従来以上にR-Carコンソーシアムを使いやすい形で提供できるようにしたと説明しており、ベースとなっているオープンプラットフォーム戦略を今後も推進し、リファレンスデザインの拡充なども含め、ユーザーが使いやすいR-Car、というメッセージを強く打ち出していきたいとする。また、クラウドへの対応も順次強化していくとしており、例えばAWS(Amazon Web Services)に関しては、2020年にAWS IoT Greengrassなどを活用したクラウドサービスの開発環境を提供し、それが車載システム上で動作確認できるような仕組みを構築していくほか、開発者向けイベントも開催していく予定としており、今後、より多くのパートナーと連携し、未来のクルマで必要になるさまざまな技術に対し、柔軟に提供できる体制を整えていきたいとしている。

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    ルネサスの掲げるオープンプラットフォーム戦略の概要。現在、ADAS向けや統合コックピット向けなど複数のリファレンスキットが提供されており、今後もラインナップは拡充されていく見通し

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  • R-Carを搭載したADAS向けリファレンスキットと統合コックピット向けリファレンスキット

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  • R-Carコンソーシアム 2019にて展示されていた「Connected ADAS」のデモ。フロントにはステレオカメラとR-Carのユニットを搭載。そこで取得した映像をクラウドに送信し、それを背後のモニターで表示していた