2017年に世界を沸かせた「オウムアムア」に続く、観測史上2つ目の恒星間天体が発見されたかもしれない。

2019年8月30日にアマチュア天文家によって発見された天体「C/2019 Q4」が、その後の分析で、太陽系外から飛来する軌道を飛んでいる可能性が高くなった。さらに、彗星に似た特性をもっていることも判明した。

もし正式に確認されれば、2017年10月に飛来した「オウムアムア」に続く、観測史上2つ目の恒星間天体であり、また観測史上初の恒星間彗星となる。

  • C/2019 Q4

    2019年9月10日に、ハワイにあるカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡で撮影されたC/2019 Q4 (C) Canada-France-Hawaii Telescope

C/2019 Q4

C/2019 Q4は8月30日、クリミア半島にあるクリミア天体物理天文台のMARGO天文台において、ウクライナのアマチュア天文家ゲナディ・ボリソフ(Gennady Borisov)氏によって発見された。

その後、米国航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(ESA)などの観測や分析から、軌道の離心率が「3」と大きな、双曲線軌道を飛んでいることがわかり、太陽系の外からやってきた恒星間天体である可能性がきわめて高くなった。

軌道離心率とは、その軌道がどれだけ真円に近いか、あるいは離れているかを表す値で、たとえば地球のように、太陽のまわりをほぼ完全な円形の軌道で回っている惑星の場合は、0に近い離心率をもつ。これが太陽系内の彗星や小惑星のように、細長い軌道をもつ場合の離心率は0から1の間になる。そして、離心率が1より大きい場合は双曲線軌道と呼ばれ、太陽系にとどまらず、恒星間空間へ出ていくような軌道であることを示す。とくに、今回の3という軌道離心率は、これまで確認されたことがないほどきわめて大きな数値である。

もし正式に太陽系外からやってきたと確認されれば、2017年10月に飛来し発見された、1I/2017 U1「オウムアムア(`Oumuamua)」に続いて、観測史上2つ目の恒星間天体となる。

ハワイ大学のKaren Meech氏らの観測によると、C/2019 Q4の大きさは、2kmから16kmほどと見積もられている。

また、9月13日にカナリア天体物理研究所が望遠鏡で観測したところ、この天体のスペクトルは太陽系の彗星のものと似ており、彗星にあるようなコマ(太陽のエネルギーにより放出された、彗星の核を取り巻く塵やガスのこと)や尾も明確に確認できるとしている。また同日には、ハワイにあるジェミニ天文台なども、C/2019 Q4に尾があることを観測している。

その軌道と合わせて、他の惑星系から飛んできた彗星――「恒星間彗星」である可能性が高いとされ、発見者の名前をとって「ボリソフ彗星」とも呼ばれている。ちなみに、オウムアムアは他の惑星系から飛んできた小惑星であると考えられており、仮にC/2019 Q4が彗星なら、観測史上初の恒星間彗星となる。

カナリア天体物理研究所はこの観測結果について、「もしC/2019 Q4が彗星であるなら、他の惑星系の彗星は、太陽系の彗星と類似している可能性があり、太陽系の外縁にある『オールトの雲』が彗星を形成するのと類似したプロセスによって形成された可能性もあるかもしれない」とコメントしている。

  • C/2019 Q4

    ジェミニ天文台が撮影したC/2019 Q4の画像(合成画像)。彗星のような尾を引いていることがわかる (C) Gemini Observatory/NSF/AURA

観測史上初の恒星間彗星か?

9月12日の時点で、C/2019 Q4は太陽から約4億2000万km、火星の軌道よりも遠くを飛んでいる。この時点での速さは、秒速約42km(時速約15万km)で、太陽を周回するあらゆる物体の速さを大きく上回っている。

また、太陽に接近する方向に飛んでおり、今年10月26日には黄道面を通過、12月8日には太陽に最接近し、12月29日には地球に最接近するとみられる。太陽最接近時の距離は約3億kmで、火星と木星の公転軌道の間を通り抜ける。また、地球との最接近時の距離も3億km以下にはならないとしている。その後は、太陽の重力で軌道を少し変えて、太陽系外へ飛び去っていく。

NASAジェット推進研究所(JPL)で、地球に接近する天体などの研究を行っているDavide Farnocchia氏は「この速さは、この天体が太陽系の外側からやってきたことを示すだけでなく、太陽系を通り過ぎ、恒星間空間に戻っていくような軌道をもつ天体であることも示しています」と語る。

またオウムアムアは、発見された時点ですでに太陽への最接近から40日が経過しており、太陽に対して秒速約38kmで太陽系外に向けて飛び去ろうとしていたため、観測できる期間が短かった。また、天体の寸法も長さ180~400m、幅40mほどと小さな天体だったこともあり、望遠鏡による観測は難しかった。

しかし、今回のC/2019 Q4は、オウムアムアより大きくて明るいこと、そしていまなお太陽に接近しつつあること、さらに太陽との位置関係から10月以降のほうが観測条件がよくなることなどから、これから十分に時間をかけて、詳細に観測することができる。

Farnocchia氏によると、C/2019 Q4は今年12月中旬ごろに明るさがピークに達し、2020年4月ごろまではプロ用の中型望遠鏡で観測できるだろうと予測している。その後は暗くなるものの、2020年10月ごろまではプロ用の大型望遠鏡で観測可能だという。なお、オウムアムアより明るいとはいえ、ピーク時でも15等級くらいの明るさにしかならないと予想されるため、自家用の一般的な天体望遠鏡で見るのは難しい。

今後のさらなる観測で、C/2019 Q4の大きさや回転の状況、組成、そして軌道について、さらに正確かつ詳しくわかるようになるだろう。C/2019 Q4との宇宙のランデヴーは、まだ始まったばかりである。

  • C/2019 Q4

    C/2019 Q4の軌道を示した図。この図からもわかるように、地球から3億km以内には接近しないとみられている (C) NASA/JPL-Caltech

出典

News | Newly Discovered Comet Is Likely Interstellar Visitor
Gemini Observatory Captures Multicolor Image of First-ever Interstellar Comet | Gemini Observatory
Interstellar 2.0 / Space Safety / Our Activities / ESA
Instituto de Astrofisica de Canarias - IAC - Educational Outreach

著者プロフィール

鳥嶋真也(とりしま・しんや)
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。

著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。

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