MathWorks(マスワークス)は3月26日(米国時間)、MATLABおよびSimulinkの最新版となる「Release 2019a(R2019a)」の提供を開始したことを明らかにした。

今回のリリースでは、ディープラーニング関連の機能強化として、3次元の画像データ(ボクセルデータ)に対応したほか、CNN(Convolutional Neural Network)とLSTMを組み合わせることが可能となり、ストリーミングのビデオパターン分類やジェスチャーの認識などが可能となった。また、You Only Look Once(YOLO)v2への対応やCUDAのコード生成対応、そしてTensorRTにおけるFP16(半精度)のサポートなども実装された。

  • MATLAB R2019a

    ディープラーニング関連の機能強化の概要

さらに、強化学習向けワークフローを強化するための新ツールボックスとして「Reinforcement Learning Toolbox」の追加された。これまで提供されてきた「Deep Learning Toolbox」とは用途に応じて使い分ける形となり、Reinforcement Learning Toolboxは主に制御用途向けに位置づけられていると同社では説明している。

Reinforcement Learning Toolboxのアルゴリズムとしては、「Policy Gradient(REINFORCE)」、「SARSA」、「Deep Q-Network」、「DDPG」、「A2C」、「Q-Learning(Q学習)」の6種類が対応しており、MATLABとToolboxが標準的な組み合わせとなり、Simulinkは推奨商品という扱いとなっている。また、カスタマイズされたラーニングのためのアルゴリズムを利用することも可能なほか、KerasならびにONNXモデルのインポートに対応したとする。

  • Reinforcement Learning Toolbox
  • Reinforcement Learning Toolbox
  • Reinforcement Learning Toolboxの概要

半導体設計を支援するBlockset

R2019aでは人工知能関連のほかに、信号処理関連の機能強化も図られた。例えばICやアナログセンサシステムの設計者に向けた「Mixed-Signal Blockset」が新たに提供が開始された。もともと「Mixed-Signal Library」というライブラリが提供されていたが、同Blocksetは、ユーザビリティの向上を目的にモデリングのためのコンポーネントなどを使いやすい形にしたもの。PLLやADCなどのビルディングブロックが提供されるほか、それらを活用した上位層のシミュレーションを行うことを可能としており、トランジスタレベルのシミュレーションに移行するまえに、特性の検討やモデル構成、回路構成などを検討することができるようになる。

  • Mixed-Signal Blockset

    Mixed-Signal Blocksetの概要

また、SoCやFPGAの開発支援として「SoC Blockset」も提供。従来からEmbedded CoderやHDL Coderを用いて開発できたが、SoC BlocksetではこれらのCoderになかったIOや内部バス、外部メモリなどをつないでシミュレーションすることができるようになった(SoCへの実装にはEmbedded CoderやHDL Coderが必要)。

  • SoC Blockset

    SoC Blocksetの概要

静的解析の使い勝手が向上

このほか、静的解析製品である「Polyspace」もアップデートが施された。従来はPC上でバグの選別、修正を行う「Polyspace Bug Finder」、C/C++コードにランタイムエラーがないことを確認するための「Polyspace Code Prover」を利用する必要があったが、今回のアップデートで新たにこうした処理をサーバで実行することを可能とする「Polyspace Bug Finder Server」ならびに「Polyspace Code Prover Server」が提供されたほか、レビュアー用途に特化した「Polyspace Bug Finder Access」ならびに「Polyspace Code Prover Access」も提供された。

  • Polyspace

    Polyspaceのラインアップが6製品に拡充。ビューワとなるAcccesの価格は「Polyspace Code Prover Access」の年間ライセンスが2万9000円、「Polyspace Bug Finder Access」が5万7500円(必須製品)と従来のPolyspace製品の1/10程度の価格となっている

AUTOSARへの対応を強化

さらにR2019aではAUTOSAR Classic Platform(CP)とAUTOSAR Adaptive Platform(AP)双方のソフトウェア開発を可能とする「AUTOSAR Blockset」も提供される。これは、もともとEmbedded Coderのサポートパッケージという位置づけで提供されていたが、今回、AUTOSARのCPとAPの両方に対応するのに併せ、新製品として提供することが決定されたという。

主にコードの生成は必要とせずに、シミュレーションだけを行いたい、というユーザー向けに提供されるもので、C/C++ベースのAUTOSARコードの生成や、AUTOSAR XML(ARXML)のエクスポートも従来通りできるという。

  • AUTOSAR Blockset

    AUTOSAR Blocksetの概要

なお、R2019aはすでに入手可能となっている。