岡山県の瀬戸内市は10月23日、越後の龍の異名を持つ戦国武将の上杉謙信の愛刀「無銘一文字(山鳥毛、通称:さんちょうもう)」(国宝)の購入費を集めるためのプロジェクト「山鳥毛里帰りプロジェクト」を立ち上げ、その第1弾となるふるさと納税の受付を11月1日より開始すると発表した。

  • 山鳥毛のレプリカ
  • 山鳥毛のレプリカ
  • 山鳥毛のレプリカ
  • 山鳥毛のレプリカ
  • 山鳥毛のレプリカ。写真は、「刀剣乱舞-ONLINE-」のプロデュースを手掛けるニトロプラスの社長である小坂崇氣(でじたろう)氏所蔵のひとふり(大野義光 刀匠作)

山鳥毛は岡山県に在住の個人の所有物で、現在は岡山県立博物館に寄託されている。2016-2017年度にかけて、上杉謙信の居城である春日山城があった新潟県上越市が、約420年ぶりに春日山に戻し、上越の宝にすることを目的に購入運動を起こしたが、折り合いがつかず、2018年に入って、所有者から瀬戸内市に譲渡の打診があったという。

  • 山鳥毛の概要

    山鳥毛の概要 (出所:山鳥毛里帰りプロジェクト発表資料より)

瀬戸内市には、公立の博物館として「備前長船刀剣博物館」があるが、同市の武久顕也 市長は、「博物館が 出来て約35年が経ったが、1ふりも国宝がない状態がまま、頑張って、備前長船の名前に恥じないように務めてきた。その一方で、刀剣の聖地の名にふさわしい刀剣を所蔵したいという夢を市民や刀匠から言われていた」と今回の背景にある思いを説明。また、購入に必要な金額が5億円と高額なこともあり、「財政状況が厳しい中、市民の理解が得られるのか、ということに悩んだ」とするも刀匠や岡山県を代表する文化関係者などで構成される評価委員会にて5億円以上の価値があるという評価を受けたこともあり、購入を目指すことを決定したとする。

「現在の所有者は売却を希望している。このプロジェクトが上手くいかなければ、岡山県から、山鳥毛が失われる可能性もある。小さな自治体ながら、岡山県全体が刀剣王国と呼ばれてきた誇りをかけて、微力ながら頑張っていきたい」と、今回のプロジェクトにかける思いを説明。購入に至った場合は、博物館で責任を持って預かり、さまざまな形で地域、県、国に大きな意味を価値を持たせ、日本刀を愛してくれる人を増やす取り組みを世界に広げて行きたいとした。

  • 山鳥毛里帰りプロジェクトの目的

    山鳥毛里帰りプロジェクトの目的 (出所:山鳥毛里帰りプロジェクト発表資料より)

今回のプロジェクトに向けた資金調達の方法は大きく3つ。1つ目は上述のふるさと納税を基本としたクラウドファンディング。2つ目はKickstarter(キックスターター)を活用した海外向けクラウドファンディング、そして3つ目が企業版ふるさと納税の活用となっている。

  • 資金調達方法

    購入費用5億円の資金調達方法は大きく3種類を用意 (出所:山鳥毛里帰りプロジェクト発表資料より)

ふるさと納税は、同市の特設サイトから直接の寄付もしくは、各種のふるさと納税ポータルサイトでも受付を予定。返礼品としては、刀匠の大野義光氏作の山鳥毛写し(太刀)や、備前長船刀剣博物館にて2013年に開催された特別展「二次元VS日本刀展」のコラボ作品である外装付き刀(刀匠 安藤広康氏作)といったものから、鍔や文鎮、地場の農産物といったものまで予定されているという。

武久市長は、「こういった取り組みを進めることで、単に瀬戸内市が山鳥毛を購入したい、という単純な話でなく、刀の魅力、価値を高めていくことにつながる。日本に日本刀あり、ということと、それを踏まえて正しい知識と理解を得てもらうことが、絶滅危惧種ともいえる刀匠の励みとなって、技術伝承のための試金石になると思っている。古い刀をしっかりとした形で収蔵することで、現代刀も含めた、今の刀匠の手による刀の価値も上がっていく。そして、最終的に経済循環が起こることで、刀匠の育成につながり、技術の伝承にもつながっていくと思っている」と、このプロジェクトが刀匠の育成につながることを強調。単なる資金調達に終わることなく、大きな変革を与えるように努力していきたいとしていた。

  • クラウドファンディングの狙い

    クラウドファンディングの狙い (出所:山鳥毛里帰りプロジェクト発表資料より)

なお、ふるさと納税の受付は2018年11月1日よりスタート。締め切りは2019年1月31日を予定している。また、企業版ふるさと納税については、事業が成立した段階の後に寄付をしてもらう必要があるため、2019年3月31日までを区切りとする予定だという。

  • 山鳥毛のレプリカ
  • 山鳥毛のレプリカ
  • 寄付の返礼品として予定されている刀匠 大野義光氏作による山鳥毛のレプリカ