京セラは、半導体リソグラフィ技術などを活用することで、自動で血液などの体液から任意の細胞を分離して、その濃度を計測できるマイクロ流路チップ「細胞分離・濃度計測デバイス」を開発したことを発表した。

同デバイスは、ライフサイエンス分野における生体の検査や細胞などの分析に向けた特定細胞の抽出作業を行なう前工程作業の自動化を可能とするもの。例えば、白血球を用いる検査の前工程においては、自動で血液中の白血球を高精度で分離しつつ、その濃度を計測することを可能とする。

  • 「細胞分離・濃度計測デバイス」の概要

    「細胞分離・濃度計測デバイス」の概要

仕組みとしては、フォトリソ技術を活用して積層された、測定したい細胞サイズにマッチさせた(白血球の場合、約10μmほど)マイクロ流路チップと、LEDとフォトダイオード(PD)を組み合わせた独自の濃度測定センサを組み合わせることで数cm角のチップ上で、分離と濃度測定を実現するというもの。これにより、従来、白血球の分離には熟練の技術者が約90分かけて遠心分離機などを活用して作業を行なう必要があったものを、同デバイスを測定機器にセットして約30分待つだけで、同じ作業を完了することができるようになるという。

  • 細胞を分離させる流路技術

    細胞を分離させる流路技術のイメージ

  • 細胞を分離させるための技術の概要

    細胞を分離させるための技術の概要

すでに同デバイスは、広島大学発のベンチャー企業で、テロメアの端にある「Gテール」の長さを調べることで、疾患にかかりやすい状態かどうかを知ることが出来る「テロメアテスト」や、マイクロRNAなどの数量の変化を測定することで、疾患の早期発見を可能とする「ミアテスト」などを手がける「ミルテル」での2019年春からの活用が決定しており、これらのサービスのより迅速な提供にむけて利用される予定だという。

  • デバイスを活用することで得られるメリット

    デバイスを活用することで得られるメリット

なお、京セラでは、ヘルスケア領域に自社の有するさまざまな技術を展開していくとしており、今回のデバイスのみならず、それを活用する検査機器などを提供していく計画を掲げているほか、さまざまな細胞への適用や、細胞以外の分離デバイスとしての用途や、製薬分野での活用なども視野に研究開発を進めていくとしており、2023年には同事業を100億円規模にまで成長させることを目指すとしている。

  • 「細胞分離・濃度計測デバイス」
  • 「細胞分離・濃度計測デバイス」
  • 「細胞分離・濃度計測デバイス」
  • 「細胞分離・濃度計測デバイス」の実物。左上のプリント基板上にLEDとPDが形成されている