協同乳業は6月27日、口腔内F.nucleatumが大腸がんに関与していると考えられるという研究結果を発表した。同研究は、同社の松本光晴主幹研究員らと、横浜市立大学肝胆膵消化器病学の日暮琢磨診療講師らの研究グループによるもの。詳細は、英国消化器病学会の機関誌「Gut」で公開された。

  • 研究の流れ

    研究の流れ

次世代型DNAシークエンサーの普及とともに大腸がんの病態に関わる腸内細菌の研究が世界的に進められる中、F.nucleatumが大腸がんの病態や予後に悪影響を及ぼすといった報告例が増えている。しかし、F.nucleatumは従来ヒト腸内からは検出されないことが多く、大腸がんの感染源については不明な状況であった。

そこで同グループは、F.nucleatumが口腔内環境において優先菌種であることから、口腔内F.nucleatumが大腸(がん)組織へ細菌が移行しているという仮説のもと、研究を行ったという。

全14名の患者を対象に、内視鏡を用いて採取した大腸がん組織および唾液検体をF.nucleatum選択培地にて培養し、計1351個の分離菌を解析したところ、8名(57%)において、大腸がん組織と唾液の両方からF.nucleatumが検出された。次に、その8名の検体より分離されたF.nucleatumを対象に、AP-PCR法を用いて菌株レベルで解析した結果、8名中6名において、大腸がん組織と唾液の両方から同一菌株が確認された。これは全被験者の43%、大腸がんからF.nucleatumが検出された患者母集団では75%に相当する。

この結果は、大腸がん悪化への関与が強く疑われるF.nucleatumの感染源が、口腔内環境に由来することを強く示唆するという。また、大腸がんの新たな治療法、予防法、リスク評価などに繋がる可能性がある発見と考えられるとのことだ。

今回の研究の一方で、F.nucleatumが大腸(がん)組織まで移行・感染する経路に関しては、まだ明らかにされておらず、今後の研究課題になるとしている。また、同研究の論文データは症例数が少ないため、より多くの大腸がん患者を対象にさらなる研究を進めて行く予定だという。