筑波大学は5月21日、さまざまな人工光照射条件下でサニーレタスを栽培した際に起こる代謝の違いを、統合オミックス解析により明らかにしたと発表した。

同成果は、筑波大学生命環境系の草野都 教授、電力中央研究所の庄子和博 上席研究員、北崎一義(現 北海道大学助教)、理化学研究所の福島敦史 研究員およびUC Davis Genome Center(米国)のRichard Michelmore教授らの研究グループによるもの。科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

同研究では、光による植物生長制御研究が盛んである青色光や赤色光に加え、植物が行う光合成との関係がはっきりとは明らかにされていない緑色光に着目した。サニーレタスの苗に青色光(ピーク波長=470nm)・赤色光(同680nm)および2種類の緑色光(同510nm、524nm)を、短期間(1日)および長期間(7日)、2種類の異なる光強度下(PPFD100、PPFD300)で生育し、メタボロ―ム解析を行った。

それぞれの実験条件における代謝物プロファイルを比較した結果、緑色光照射による代謝物プロファイルは赤色光に類似すること、短期間照射では、光強度の違いが代謝物プロファイルの変化に最も大きく寄与し、各光質の違いはその次に影響すること、長期間照射では、光強度ではなく、各光質の違いが代謝物プロファイルの変化を引き起こす原因となっていることを確認した。

これを受け、蛍光灯照射条件下で生育したサニーレタスの代謝物蓄積パターンと比較したところ、赤色光では糖類や植物脂質類が蓄積するのに対し、青色光では抗酸化成分として知られているフラボノール配糖体やクロロゲン酸類が高蓄積することが確認されたという。

  • 代謝物の種類および蓄積量の違い

    植物が利用可能な吸収波長と狭波長LEDよる代謝物の種類および蓄積量の違い (出所:筑波大Webサイト)

今後は、植物工場で生産される野菜の価値を高めるために、「光」をデザインすることで、味や健康にかかわる有用代謝物生産を自在に操る技術開発に貢献できると考えられるとしている。