早稲田大学(早大)らは、日本の南鳥島周辺の排他的経済水域(EEZ)内に存在するレアアース泥の資源分布を可視化して資源量を把握し、世界需要の数百年分に相当する莫大なレアアース資源が存在することを明らかにし、さらに、レアアース濃集鉱物を選択的に回収する技術の確立に成功したことを発表した。

この成果は、早稲田大学理工学術院 髙谷雄太郎講師、東京大学工学系研究科 加藤泰浩教授らの研究チームが、千葉工業大学、海洋研究開発機構、東亜建設工業、太平洋セメント、東京工業大学、神戸大学と共同で発表したもので、英国のオンライン科学誌「Scientific Reports」に4月10日(現地時間)に掲載された。

  • 研究で用いたコア試料の採取地点(出所:東工大ニュースリリース)

    研究で用いたコア試料の採取地点(出所:東工大ニュースリリース)

レアアース元素は、再生可能エネルギー技術やエレクトロニクス、医療技術分野など、日本が技術的優位性を有する最先端産業に必須の金属材料である一方で、レアアースの世界生産は中国の寡占状態にあり、その供給構造の脆弱性が問題となっている。今後もレアアース資源の安定的な確保は不可欠で、日本の排他的経済水域内(EEZ)におけるレアアース泥の分布およびレアアース資源量の正確な把握が望まれていた。

有望エリアにおける海底面からの深度別レアアース濃度分布図(出所:東工大ニュースリリース)

有望エリアにおける海底面からの深度別レアアース濃度分布図(出所:東工大ニュースリリース)

今回、研究チームは、南鳥島EEZ南部海域に存在する有望エリアのレアアース資源分布を初めて可視化することに成功した。特に、北西に位置する一角に極めてレアアース濃度の高い海域が存在することを確認し、このエリア(約105km2)だけでも、レアアース資源量は約120万トン(酸化物換算)に達し、最先端産業の中で特に重要なジスプロシウム、テルビウム、ユウロピウム、イットリウムは現在の世界消費の57年分、32年分、47年分、62年分に相当することがわかった。

また、有望エリアの全海域(約2,500km2)を合算すると、その資源量は1,600万トンを超え、同エリアが量(資源量) と質(鉱物学的な特長を生かした選鉱が可能)両面から、レアアース泥の莫大な資源ポテンシャルを持つことが明らかになった。

さらに、研究チームは、レアアースの大半が含まれる生物源のリン酸カルシウムが、レアアース泥中の他の構成鉱物に対して大きな粒径を持つことに着目し、粒径分離によってレアアース泥中の総レアアース濃度を最大で2.6倍にまで高めることに成功した。粒径分離によって泥の重量が大幅に減少するため、海上への揚泥や製錬のコストの削減も期待される。

これにより、レアアース泥の粒径選鉱を行うことによってレアアース泥開発の経済性を大幅に向上させることが可能となる。加えて、日本のEEZに莫大なレアアース泥が確認されたことは、我が国の資源戦略に対しても極めて大きなインパクトを与える。

この研究成果をもとに、将来的に南鳥島レアアース泥の開発が実現すれば、日本のみならず世界においても海底鉱物資源の開発が進展するとともに、レアアースを活用した多様な最先端産業の発展・創出といった波及効果が期待される。

  • ハイドロサイクロンを用いた分級試験の様子(出所:東工大ニュースリリース)

    ハイドロサイクロンを用いた分級試験の様子(出所:東工大ニュースリリース)