日常業務において紙とハンコは必要不可欠であり、業務から切り離せないと考えている人も多いのではないだろうか。

しかし、文書作成からチェック、印刷、回覧、承認者のサインを受けるまで、紙とハンコの使用による必ずしも生産的とは言えないプロセスが多々ある。

米DocuSignが提供する署名・捺印の手順を電子化するクラウドサービス「DocuSign(ドキュサイン)」は、そんな煩雑な作業を解放してくれる可能性を秘めているかもしれない。

同サービスは電子署名だけでなく、あらゆる端末でいつ、どこで、何をしたかなど、紙やEメールのやり取りを電子化し、すべて証跡を残すDTM(Digital Transaction Management)プラットフォームと同社では位置づけている。今回、同社の会長であるキース・クラック氏に日本におけるデジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)や働き方改革について話を聞いた。

  • キース・クラック(Keith Krach)氏

キース・クラック(Keith Krach)

米DocuSign Inc. 会長


General Motors(GM)でキャリアを開始し、26歳で過去最年少のVice President(副社長)となり、GMとファナック・ロボティクスのジョイントベンチャーの創設者でもある。

その後、Rasna Corporationの創立チームに加わり、機械設計を最適化するための新手法の確立に携わる。

また、Aribaの共同創設者として携わり、会長兼CEOを7年務め、2000年のAribaの株式公開にも関与し、最終的に時価総額340億ドルを達成した。

これまで米DocuSignの会長として8年、最高経営責任者(CEO)を6年(2017年1月に兼務を解かれ、現在は会長職のみ)務める。25万社とDocusignグローバル・トラスト・ネットワークを構築し、テクノロジー企業との戦略的パートナーシップを作り上げた。

パデュー大学で工学学位を取得しているほか、ハーバード大学でMBAを取得している。

--事業の状況はいかかですか?

クラック氏:現在、グローバルで銀行は上位15行のうち14行、保険会社は上位15社のうち13社、製薬企業は上位15社すべてが導入している。アメリカでは不動産取引の95%はドキュサインを採用し、分野・地域ともに幅広く、32万の法人企業が採用している。ユニークユーザーは3億、1日あたり200万の加入があり、世界188カ国で使われている。

パートナー戦略は多面的であり、ハイテク企業とパートナーシップを組んでいるほか、われわれの製品自体がハイテク企業の製品の中に組み込まれている。また、Google、Microsoft、Dellなど、日本ではNTTなどが投資していることに加え、Microsoft OfficeやSalesforse、SAPなどとネイティブに連携しており、Salesforceはリセラーであり、最大のパートナーだ。

--海外での導入事例を教えてください。

クラック氏:導入した成果としては、米国では例えばバンク・オブ・アメリカが導入し、1万7000人のファイナンシャルアドバイザーが使用しており、今後はリセラー10万人に展開していく。さらに、T-モバイルは3000店舗に導入し、セキュリティやコンプライアンスなど監査証跡のために活用しており、契約時間を従来の68分から8分に短縮できている。

現在、各国でDXが盛んだ。ドイツテレコムのCEOであるTimotheus Hottges(ティム・ヘットゲス)氏は、国・企業がDXを進める上でドキュサインが触媒になっていると述べており、これには3つの理由がある。それは「紙を9割程度削減できる」「ROIが高い」「DXのスピードアップ」の3つだ。

ドキュサインは、実装が簡単で他のアプリケーションと統合ができ、結果として生産性が向上する。また、セキュリティ、コンプライアンスを担保するためリスクフリーであり、モバイルでも使えるため、ユーザーエクスペリエンスも優れている。