今年1月にDropbox Businessの新機能としてローンチした共同編集ツール「Dropbox Paper」。提供開始から約1年が経過しようとしているが、ユーザー数は着実に増加しているようだ。このたび、米Dropboxで製品開発を主導した米Dropbox Product Managerのカヴィタ・ラダクリシュナン氏と、Paperのデザインチームリーダーである同 Design Managerのカート・ヴァーナー氏の2人に対しインタビューの機会を得たので、Paperの開発経緯や方向性を中心とした話を紹介する。

  • 米Dropbox Product Managerのカヴィタ・ラダクリシュナン氏、同 Design Managerのカート・ヴァーナー氏

    左から米Dropbox Product Managerのカヴィタ・ラダクリシュナン氏、同 Design Managerのカート・ヴァーナー氏

インタビューの前に、まずはPaperについておさらいしてみよう。Dropbox自体はファイルなどの共有・保存に使用するが、Paperはドキュメントの作成・保存・共有を可能としている。単なるノートアプリではなく、チームにおける作業前のアイデア出しなどに活用されており、ドキュメントの共同作成に加え、コメントの共有、画像の埋め込みなどもでき、他のドキュメント、Dropboxファイルにもアクセスを可能としている。

Paper上ではカーソルで示した行の右端に、YouTubeなどのメディア追加、画像の追加(ドラッグ&ドロップも可能)、Dropboxファイルの追加、箇条書き、番号付きリスト、タスクを割り当て締め切りを設定するチェックリスト、セクションの区切り、コードの追加、マークダウンに対応している。

  • Dropbox Paper

    右端の赤枠で囲んだカ所にメディア追加などが表示される(画像はメディア追加をクリックし、メディア一覧が表示されている状態)

  • Dropbox Paper

    You Tubeを埋め込んだ状態

また、ページの右下には書式設定や挿入などのショートカットキーのヘルプもあり、例えば「:」で絵文字の一覧が表示され、「@」でユーザーを選択し作成中のドキュメントの共有や通知ができるほか、編集権限も設定が可能なためセキュリティ性を担保している。

  • Dropbox Paper

    「:」で絵文字の一覧が表示される

  • Dropbox Paper

    「@」でユーザーの選択が可能

「/date+スペースキー」を入力すると日付が表示されるため、ヘルプの存在は作業性を高めることに一役買っている。「/gif ~(感情などの単語) +エンターキー」を入力すれば、GIFが呼び出されて画像も埋め込める。これを可能にしたのは仕事とは言え、作業をしつつも楽しめる要素を盛り込んでおり、同社の哲学を反映したという。

  • Dropbox Paper

    「/date+スペースキー」で日付を表示

  • Dropbox Paper

    「/gif ~(感情などの単語) +エンターキー」でGIF画像が埋め込める

ドキュメントは、チームメンバーであれば誰とでも共有可能で、iOSやWindowsのデスクトップPC、ノートPC、タブレットと多様なデバイスに対応し、離れた場所でも共同作業が行える。共有の有無は、メンバーのアイコン状態で把握し、共有できていればカラー表示、できていなければモノクロ表示となるため、チームメンバーがアクセスすれば作業中でもコメントが可能だ。

また、作成したドキュメントはパワーポイントなどにコピー&ペーストするのではなく、そのままプレゼンモードに移行すれば、エンターキーでスライドを進行させることが可能なため、プレゼンにも利用できる。特に、まだアイデア出しの段階であれば状況が変化することもあるため、スライドを作り直すよりもPaper上にあるものを幅広く共有できることは作業スピードの向上につながる。

少し前置きが長くなったが、Paperの標準的な機能を紹介した。以下より、開発の陣頭指揮を執った2人のインタビューだ。

Paperを開発した背景は?

ラダクリシュナン氏:Dropboxそのものは資料を作成し、完成したものを共有・保存する。一方で、従来はEメールやミーティングなどで行っていた作業開始前のアイデア出しなどの共有を円滑に進めるためにPaperを開発した。メンバーのアイデアをWordなどのドキュメントだけでなく、YouTubeをはじめとしたメディア類、チェックリスト、製作プロセスで使用するツール群の中で、どのように組み合わせて資料を探す手間を省くか、ということを考えたからだ。

どのようなユーザーエクスペリエンス(UX)を狙ったのか?

ヴァーナー氏:UXは、われわれとしても非常に重要なものだ。Paperに新機能を追加する際は大きな判断となるが、いかにUXがクリーンかつ、ワークフローがスムーズなのかということにフォーカスし、議論している。そのため、ユーザーが利用した結果、抱えている課題をどのように解決できるのか、といったところに視点を置いてUXを考えている。

ラダクリシュナン氏:Paper自体はフルスクラッチで開発しており、例えば他の製品であれば必要とされる機能をすべて追加していくアプローチだが、われわれのアプローチは機能を絞り込み、追加されるべき機能の可否については、明確な基準を設けて製品開発に取り組んでいる。