3月初旬、モータメーカーとして知られる日本電産が公開した"過剰に"スタイリッシュな動画が話題になった。スマホを使ってペットボトルのフタを開けられる"画期的"なデバイス「SMART PET BOTTLE」を開発したという内容なのだが、BtoB企業として知られる同社のキャラクターとはかなり異なる印象だ。

Motorize "SMART PET BOTTLE"

しかし、これはジョーク動画ではなく、実際に動くデバイスなのだという。そこで今回は、このデバイスを生んだ新たなモーターの可能性を提案するプロジェクト「Motorize」の立ち上げの理由やその狙いについて、日本電産の広報担当、「Motorize」プロジェクトチームより技術担当の方にお話を伺った。

「SMART PET BOTTLE」の実物。目の前でフタを飛ばしてもらった

――「Motorize」プロジェクトについて、立ち上げのきっかけを教えてください。

広報担当: 多くの方に日本電産という会社を知ってもらうために、プロジェクトを立ち上げました。また、多くの方に日本電産の事を知ってもらうためには、CMだけでなく、若者世代にも関心の高い、このような動画コンテンツを通して知っていただくということが有効だと考えたため、この企画をスタートしました。

――「SMART PET BOTTLE」が生まれた経緯を教えてください。

技術担当: モータは回す機械です。一方、身の回りにある「回す」動作として、ペットボトルのフタを開ける行為があります。そのふたつは関わりの薄いもの同士ですので、あえて合わせてみた、というのがきっかけと言えるかと思います。

――「SMART PET BOTTLE」の機構についてご解説いただけますか?

「SMART PET BOTTLE」を開いたところ

ペットボトルに装着すると、飲み口のまわりを覆うような形になる。日本電産のロゴと同色のLEDが光る

技術担当: 「SMART PET BOTTLE」は、ペットボトルの上部に挟み込むように取り付けます。モータは左右に1つずつ配置しています。1個のモータでもフタを開けること自体はできますが、水平にフタを開けるためにこの構造にしています。

――開発段階で苦戦した部分などあれば教えてください。

技術担当: 開発初期は苦戦しましたね。当初はもっと多くのモータを搭載していたのですが、設計を見直して今のかたちに落ち着きました。また、ペットボトルの飲み口付近に基板があると飲むときに不便だということで、飲み口のまわりに電子部品が来ないようにしました。

動力源はリチウムイオン電池、スマホと通信するためのBluetoothやWi-Fiも搭載しています。モータの回転をギヤでペットボトルのフタ部分に伝えて開栓して、最後にフタを跳ね上げて飛ばしています。

――フタが飛ぶ動作はあえてつけていたんですね。どんな狙いが?

技術担当: これが市販する製品なら必要ないですが、「SMART PET BOTTLE」は市販を前提としておらず、またムービーのなかで魅力的に紹介する必要がありましたので、そのためのアクションです。

スマホアプリのUIも整えられており、タッチ操作で開ける力の調整が可能。100(フルパワー)以下での動作は、炭酸飲料のフタを開ける時に少し開栓しておき、吹きこぼれを防止するなどの用途があるという

――このデバイスの開発の目的はどこにあったのでしょうか?

広報担当: モータはいわば縁の下の力持ちで、なかなか身近に存在を感じてもらっていないように思います。そこで、普段はモータを使うことを想定していない日常的なモノやシーンにあえてモータを使ってオペレートして、モータを身近に実感してもらう目的で開発しました。

――デバイスの商品化についてご予定は?

広報担当: 今のところは予定していませんが、今後場合によってはそのようなことも視野に入れて計画していきます。ただし、動画の再生回数が1億回突破したら、すぐに商品化プロジェクトを立ち上げます!

――3月よりは4月初旬にローンチされそうなコンセプトのデバイスですが、なぜこのタイミングで発表されたのでしょうか?

広報担当: 本当はもっと早いローンチを予定していましたが、思いのほか開発に時間を要してしまったため、3月になってしまいました。特に、キャップの飛ぶ高さの検証には時間を割きました。

技術担当: なぜエイプリルフールに合わせなかったのか?というご質問かと思うのですが、「Smart Pet Bottle」はウソではなく実際に稼働するので(笑)、そこに当てる必要はなかったと思います。

――プロジェクトの今後の展望についてお教えください。

広報担当: 「Motorize」第一弾の活動は、動画コンテンツとして世の中に展開しましたが、今後、どのような活動していくのかはまだはっきり決まっていません。我々もワクワクしながら日々議論しています。ですので、今後の我々の活動には是非ご期待ください。